政治とマスコミを斬る
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「ロシア追放」に賛成したのは国連加盟国の48%!台頭する第三世界は「欧米=国際社会」へ静かに抵抗している

岸田文雄首相は4月8日に記者会見し、ロシアからの石炭輸入の禁止など経済制裁を強化することに加えて、在日ロシア大使館の外交官8人を国外追放すると発表した。

欧米に追従してロシアとの全面対決に突き進むものだが、日本と隣り合わせにある軍事大国・ロシアをそこまで鮮明に「敵国扱い」して本当に大丈夫なのだろうか。私たちが「欧米vsロシア」の戦争に巻き込まれることはないのだろうか。

エネルギー価格や資材価格のさらなる上昇など日本経済に与える打撃は大丈夫なのか。貧富の格差が拡大する中で物価高による生活苦に直面する弱い立場の人々への支援は十分に用意されているのか。

外交官を追放して外交による話し合いの道を自ら閉ざすのか。それが平和憲法を持つ日本の役割なのか。

岸田政権の米国追従外交が日本の国益にかなうとは思えない。米国に付き従っていけばよいという思考停止そのものだ。

米国が開戦を決意したら日本も宣戦布告しそうな気配である。

国民総動員令を出してロシアとの戦争を遂行するゼレンスキー大統領の国会演説を称賛した立憲民主党や共産党は、ロシア外交官を国外追放する岸田政権の強硬外交を支持するのだろうか。

日本のマスコミは「欧米=国際社会」と喧伝し、即時停戦よりも経済制裁強化でプーチン政権を追い込む米国主導の「ロシア包囲網」を強く支持し、岸田政権の対ロシア強硬外交を全面的に支持している。テレビに登場するのは「米国からの視点」でウクライナ戦争を解説する専門家や記者ばかりである。

政官財マスコミ界あげて「ロシアとの戦い」の旗を振っている。大日本帝国下の開戦目前のような様相だ。

しかし、米国主導の「ロシア包囲網」は必ずしも国際社会の支持を得られていない。国際社会は欧米がもくろむ「ロシアの孤立」というよりは、むしろ「ロシア追放を推し進める欧米vsロシアと関係を維持して欧米と一線を画す第三世界」に二分されつつある現実を、私たちは直視すべきである。

国連総会(193カ国)は4月7日、ロシアによるウクライナ侵攻を巡る緊急特別会合で、ロシアの国連人権理事会メンバーの資格を停止する決議案を採択した。日本は欧米に同調して賛成した。

日本のマスコミは「国連人権理からロシア追放」(共同通信)などのタイトルで、ロシアが国際社会から締め出されたというトーンで報じている。欧米メディアに同調して「ロシア=悪、ウクライナ=正義」の善悪二元論を強調してきた従来の報道姿勢に沿ったものだ。

私はこのニュースをまったく違う感覚で受け止めた。採決結果をみると、賛成したのは日米英など93カ国にとどまっている。

中国、サウジアラビア、イランなど24カ国は「事態をエスカレートさせる」「人権問題の政治化だ」などとして反対し、インド、ブラジル、タイ、メキシコなど58カ国は残虐行為の疑惑に対する独立した調査結果を見極めるなどとして棄権した。残る18カ国は無投票である。計100カ国は賛成しなかったのだ。

つまり、国連人権理事会からの「ロシア追放」に賛成したのは、国連加盟国の48%にとどまっているのである。まさに世界の世論が二分するなかで採決が強行されたというのが実態に即した分析だ。

欧米メディアには「国連、ロシアの人権理事国資格を停止ーー賛成多数も反対・危険も82カ国」(ブルームバーグ)として、むしろ欧米が期待したほど賛成が伸びなかったというトーンの報道も少なくない。むしろ米国主導の「ロシア包囲網」の脆弱さをさらけ出してしまったのだ。

日本のマスコミを席巻する「ロシア=悪、ウクライナ=正義」の善悪二元論は、世界の趨勢ではない。国際社会はもっと冷静・慎重にこの戦争を突き放して眺めている。「欧米=国際社会」という構図をつくろうとしている欧米諸国に対し、第三世界には静かな抵抗が広がっている。

たしかに戦争に巻き込まれたウクライナの人々はかわいそうだが、米国やロシアなど大国が介入したアフガニスタン、イラク、シリア、イエメン、パレスチナ、ミャンマーなどで続く内戦・紛争・迫害などに対する欧米の冷淡な対応と、今回のウクライナに対する熱烈な肩入れぶりはあまりにかけ離れているーー。第三世界はその背景に「欧米より軽視される第三世界」「白人社会より軽視される第三世界」という匂いを嗅ぎ取っている。

ロシアの軍事侵攻は決して許されないが、米国のアフガンやイラクへの軍事侵攻はどうだったのかという疑問にも欧米諸国は答えられていない。

第三世界には経済制裁を強化して戦争を長引かせることで潤うのは、米国の軍需産業やエネルギー産業ばかりで、それによる世界経済の混乱で苦しむのは経済力が弱い第三世界であるという不満もある。中国やインドの民衆の間で「プーチン支持」が広がっているのも、ウクライナ戦争を欧米の視点だけでみることへの強烈な反発だろう。

ゼレンスキー政権が白人至上主義を掲げる極右民兵(ネオナチ)と連携していること、欧州の白人社会のなかでもロシアなどスラブ系への差別意識は根強いこと、ロシアの侵攻前から内戦が続くウクライナ東部でウクライナ政府の後押しを受ける極右民兵(ネオナチ)がロシア系住民に蛮行を重ねてきたこと、多くのウクライナ国民が日常的に使うロシア語の使用に制限を加えていること、そして野党の活動を停止させたこと。

プーチン政権を敵視するあまり、ゼレンスキー政権のネガティブな側面に目を塞いで礼賛するばかりの欧米諸国の姿は、第三世界からは人権重視を掲げる欧米の身勝手なダブルスタンダードにしかみえない。

当初はバイデン政権やゼレンスキー政権の「戦争プロパガンダ」を垂れ流していた欧米メディアも少しずつ冷静さを取り戻しつつある。日本のマスコミもそろそろ善悪二元論から決別する時だ。

私たちは第三世界の台頭をもっと直視し、リアルに国際政治を見つめなければならない。日本のマスコミも専門家も米国視線に偏りすぎている。「米国一強」の時代はとっくに終わっている。

ロシアが欧米主導の経済制裁に参加したとして「非友好国リスト」にあげたのは48カ国。米国、英国、EU加盟国、日本、韓国、豪州などである。

2021年の世界人口は78億7500万人。このうちロシアの「非友好国リスト」の48カ国の人口は計10億9680万人で、全体の13.9%でしかない。

ロシアを敵視する欧米と一線を画す中国とインドだけで世界人口の36%を占める現実は見逃せない。さらに人口減社会に突入した日本や人口が伸び悩む欧州と違って、アフリカ、中東、南アジア、東南アジア、中南米などの第三世界はこれからも人口が増え続け、急速な経済成長を遂げていくのである。

日本マスコミがふりまく「欧米=国際社会」は、人口からみると、とんでもない印象操作といえる。もはや第三世界の意向を無視して国際社会を語ることこそ非現実的なのだ。

世界中に展開する食料チェーンや衣料量販店などは真の意味での「国際世論」に敏感だ。ウクライナ戦争でどちらか一方に加担すれば第三世界で不買運動の急拡大を招くリスクがある。少なくとも第三世界ではどちらとも一線を画して静観するのはビジネスとして当然の振る舞いであろう。

人口規模で圧倒的に劣っている欧米が、それでも世界を「支配」している基盤は、軍事力と経済力である。

このうち軍事力の究極は核兵器だ。

しかし今回のウクライナ戦争では、欧米は「軍事力の優位」による抑止力でロシアのウクライナ侵攻を防ぐことができなかった。ウクライナ侵攻を許した後も核大国であるロシアを相手に第三次世界大戦が勃発することを恐れ、欧米は参戦できないのである。欧米の「軍事力の優位」の限界を露呈したといえるだろう。「軍事力」は圧倒的に優位でない限り役に立たないのだ。

残るのは「経済力の優位」だけだ。欧米はだからこそ、ロシアへの経済制裁を強化して「経済戦争」で勝利しようとしているのである。

ロシアの「非友好国リスト」48カ国のGDP合計額(概算で52,851,006百万USドル)は世界全体(概算で91,320,167百万USドル)の6割弱である。この「経済力の優位」でロシアを追いつめるのが、欧米による世界支配を継続する唯一の手段といっていい。

この「経済戦争」はたしかにロシアに大きな打撃を与えるだろう。

一方で、ロシアが経済制裁に参加していない第三世界(GDP割合でいえば4割強)と連携を維持する限り、国家が崩壊するところまで追い込まれるかは怪しい。4割の経済圏が結束し、6割の欧米中心の経済圏と別ブロックを形成すれば、東西冷戦のように世界は二分され、一方が壊滅するということにはならない。

北朝鮮やイランのように経済制裁が長引いても持ち堪える国は少なくない。欧米など人権意識の高い社会では経済制裁への耐久力は弱いかもしれないが、ロシア国民はルーブル暴落に慣れている。欧米の感覚で経済制裁の効果を予測すると見誤るのではないか。

ロシア経済はいったん凋落しても、欧米(米ドル経済圏)と一線を画した第三世界を中心とする新しい経済圏ができあがれば、V字回復する可能性は十分にある。何しろ第三世界は人口も経済も右肩上がりなのだ。

米国と覇権を争っている中国がロシアを切り捨て欧米(米ドル経済圏)に従うとは思えない。むしろ欧米vsロシアの経済戦争に乗じて米ドル支配を突き崩し、中国元の存在感を高めようとするだろう。

もうひとつの人口大国であるインドは中国以上に欧米と一線を画す姿勢を鮮明にしている。中国やインドは欧米主導の国際秩序を揺さぶる好機とみているのだろう。ブラジルや南アフリカなどの地域大国も同じである。世界の多極化は急速に進んでいるのだ。

欧米が経済制裁をはじめた当初、ルーブルは暴落したものの、ほどなく回復している。3月7日には一時1ドル=150ルーブル超をつけ、年初に比べ約半値に下落したが、その後上昇し、4月7日には一時1ドル=74ルーブル台をつけ、侵攻前の水準を回復した。(朝日新聞デジタル「制裁強化でも倒れないロシア経済 ルーブルも株価も回復するわけ」参照)。ロシアの株価も同様に回復基調にある。

日本のマスコミにはロシア経済は早晩持たないという欧米のプロパガンダを垂れ流してきたが、ロシア経済は今のところ持ち堪えているのが現実だ。中国やインドをはじめ第三世界の多くが経済制裁に追随してロシア経済を一気に破綻させるという欧米のシナリオこそ崩壊しつつあるのではないか。

ロシアを欧米主導の世界経済から排除する経済制裁の動きはむしろ、世界の基軸通貨ドルに依存しない新しい通貨圏の誕生(その中心は中国元だろう)を誘発し、長期的には米ドルの支配力を弱め、「欧米の経済力優位」を徐々に蝕んでいく可能性があると私はみている。

最近、そのような記事が世界各地で出始めている(日本のマスコミにはそのような報道はほとんどない)。ヤフーに紹介された韓国メディア・ハンギョレの「IMF、ドルの地位の弱化を予想、ルーブルは回復…対ロシア制裁に異常信号か」を抜粋してみよう。

 国際通貨基金(IMF)の筆頭副専務理事が、ロシアに対する制裁により米国ドルの支配力が弱まると予想した。一方、暴落したロシアの通貨ルーブルの価値は明らかな回復傾向を示し、制裁をめぐる米国とロシアの貨幣の地位や価値について、やや逆説的な状況が生じている。

 IMFのギータ・ゴピナート筆頭副専務理事は、3月31日付の「フィナンシャル・タイムズ」のインタビューで対ロシア制裁に言及し、「ドルは主要なグローバル通貨として残るだろう」としながらも、「小さな水準での分裂は確かにありうる」と述べた。

 ゴピナート筆頭副専務理事は、このような予想の根拠として、対ロシア制裁を見守っていた一部の国々が、貿易代金を他の通貨で受け取ろうと再交渉に乗り出しているという点を挙げた。米国などが国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの金融機関を排除し、外国に預けられていたロシアの外貨準備高を凍結したことをみて、ドル偏重から脱しようとする動きが強化されているということだ。

 似たような動機により、デジタル貨幣の使用が促進されているのも、最も強力な基軸通貨であるドルの地位を揺さぶりうる要因として議論されている。貿易取引でドルの使用が減れば、各国の外貨準備高に占めるドルの割合も減る可能性が高い。中国の経済的浮上など他の理由によっても、ドルの相対的地位はすでに低くなっていた。IMFは最近の報告書で「世界の中央銀行の外貨準備高に占めるドルの割合は、1999年の71%から2021年には59%に減少した」と明らかにした。

世界経済の動向をよむのは簡単ではない。しかし「経済制裁すればロシアは崩壊する」と信じ込むのは少なくとも非現実的である。米ドルは世界中どこでも使えるから世界の基軸通貨だったのだ。経済制裁によって世界の一部で使えないことになれば「ロシア制裁は米ドルの支配力を弱める」という見方がIMFからも出るのは当然だろう。

そのような現実に目を塞いで「ロシア=悪」の立場から「ロシアは追い詰められている」と一方的に報じるばかりの日本マスコミの壊れ方は尋常ではない。欧米が「ロシアは孤立している」「ロシアは負け組だ」と振り撒いて自国民を鼓舞しているプロパガンダにのっかった報道としかいいようがない。

「ロシアが悪い」という主張と「ロシアがどうなるか」という現実は別だ。善悪二元論に取り憑かれ、したたかにロシアの出方や国際社会の動向を見極めることを怠ると、日本外交は大きく道を誤り、そのしっぺ返しは「インフレで生活が苦しくなる」「日本も戦争に巻き込まれて徴兵される」という形で日本国民が受けることになる。

日本は欧米に同調して経済制裁を強化していく姿勢だが、円の暴落はルーブルの比ではない。円の凋落ぶりをみると、日本は世界の通貨競争で一人負けの状態である。伸び悩む欧米に追従して第三世界から見放されれば、あっという間に追い抜かれていくだろう。

私たちの国は「世界第二位の経済大国」と驕っていた時代と打って変わり、もはや人口が減り続けていく衰退国家なのだ。この20〜30年、無為無策の政治を続けてきた結果、経済力でも軍事力でも対抗できないほど国力は落ち込んだのだ。まずはそれを自覚しなければならない。残念ながら、それが現実だ。しかも日本の経済界は内向きなリストラに躍起で、新たなイノベーションを切り開く活力はほとんど感じられない。超円安で一息つくのは輸出関連の大企業だけで、国民生活は急激なインフレでますます困窮を極めていくだろう。

ムードで欧米に追従するのではなく、安全保障でも、経済政策でも、もっと自国の国益を現実的に判断してウクライナ戦争に対処しないと、勇ましいポーズばかり取り続けていたら、とんでもないツケが国民生活に回るのではなかろうか。その時、権力者たちは何の責任も取らないのだ。