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れいわ新選組の「消費税廃止」と立憲民主党の「時限的減税」の違いが野党再編の芽となる

岸田文雄首相が衆院予算委でれいわ新選組の櫛渕万里衆院議員の質問に対し「消費税減税は考えていない」と明言した。

岸田政権は財務省色が強い。キングメーカーの麻生太郎副総裁は安倍・菅政権で財務相を9年近く務め、今や財務省の用心棒だ。安倍・菅政権の首相官邸は財務省の影響力が弱まっていたが、岸田政権の首相官邸は財務官僚が大手を振って歩いている。財務省支配が久しぶりに復活したといっていい。

今夏の参院選は自民圧勝の様相である。その先は2025年まで衆参の国政選挙は予定されていない。この「空白の3年間」に岸田政権が財務省悲願の消費税増税を仕掛けてくる可能性はかなり高いだろう。

これに対し、立憲民主党は今夏の参院選公約に「消費税率を5%へ時限的に減税する」ことを掲げた。

消費税10%への引き上げは民主党政権時代、自民、公明、民主の3党合意で決定したものだ。民主党政権で最初に消費税増税を打ち上げたのは菅直人元首相。3党合意を決断したのは野田佳彦元首相。このふたつの内閣で官房長官などの要職を務めたのが、立憲民主党を旗揚げした枝野幸男前代表。彼ら立憲民主党の重鎮たちは本質的に消費税増税派なのである。

彼らが自らの過去を否定することになる消費税減税を容認したのは、山本太郎氏が消費税廃止を掲げて2019年参院選で旗揚げしたれいわ新選組が台頭してきたからだ。れいわ旋風を前に、このまま消費税増税に固執していたら野党の屋台骨を奪われかねないと危機感を強め、消費税減税を受け入れたのである。

しかし本音はやはり消費税増税派であることに変わりはない。立憲民主党の若手には消費税廃止を訴える山本太郎氏に共感を寄せる議員も少なくないが、立憲重鎮たちは若手が山本代表へ接近することを極度に嫌っている。立憲に影響力を持つ連合が経済界に歩調をあわせて消費税増税に前向きで、岸田政権に接近していることも消費税廃止論への抵抗感を強くしている要因だ。

このような党内事情から、立憲は「消費税廃止」には踏み込めず、「時限的減税」にとどまっている。

だが、この二つの立場は基本的に相入れない。廃止派はそもそも消費税は強者をたすけ弱者をくじいて景気を冷え込ませる「悪税」と考えているのに対し、時限的減税派は消費税は財源確保として不可欠な税制だが今は景気が冷え込んでいるので一時的に減税するのはやむを得ないという立場である。消費税という税制そのものへの基本的なスタンスが真逆なのだ。

政権選択の衆院選を前に、廃止派と時限的減税派が大同団結して「政権を奪取した暁には衆院任期の4年間は消費税を減税しよう」と呉越同舟の合意を結んで衆院選を戦うのは、それなりに理にかなっている。

しかし、いま目前にあるのは参院選だ。政権選択の衆院選と違って、各党が目指す社会ビジョンを掲げ、それぞれが党勢拡大を目指して戦う参院選である。そこで消費税という基幹税に対する考え方の違いを棚上げにして選挙協力をすること自体にそもそも限界があるのではないか。

しかも参院選は自民圧勝の様相である。そのなかで支持率低迷にあえぐ立憲と、弱小勢力のれいわが、消費税に対する違いに蓋をして選挙協力をしたところで、お互いの主張を打ち消し合うだけで、議席数を増やすメリットがさほどあるとは思えない。

れいわが6月4日に東京・池袋で開催した「総決起しまくり大会」では参院選候補者が相次いで登壇した。山本太郎代表は昨年の衆院選から立憲民主党批判を極力控え、野党共闘の枠組みを崩壊させないように配慮しているが、それとは対照的に、れいわの各候補者たちが消費税廃止を強く訴え、5%への一時減税という中途半端な政策しか打ち出せない立憲民主党との違いを強調する姿が印象的だった。党首は穏健に、各候補者は先鋭的にという、したたかな選挙戦術なのだろう。

参院選が山場を迎えるにつれて、廃止派と一時減税派の立ち位置の違いはより照らし出されてくるに違いない。今回の参院選でどちらがより強い支持を受けることができるのか。それは参院選後の野党再編の行方を左右するだろう。

その視点から以下のふたつのYouTube解説を配信したのでご覧いただければ幸いだ。

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