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麻生最側近の薗浦健太郎衆院議員が逮捕されず略式起訴にとどまったことをマスコミはなぜ追及しない?

東京地検特捜部から政治資金パーティーの収入を過少記載していた問題で任意事情聴取を受けていた自民党の薗浦健太郎衆院議員(千葉5区、当選5回)が議員を辞職した。当初は関与を否定したが、秘書の証言や物証を突きつけられて関与を認め、議員辞職に追い込まれた。

特捜部は薗浦氏を逮捕せず、政治資金規正法違反(不記載など)で略式起訴する見通しをマスコミ各社は伝えている。社会部司法クラブの記者たちが検察のリークをそのまま垂れ流している。いきなり略式起訴すれば「なぜ逮捕しないのか」という批判が噴出することを恐れ、検察当局が御用記者たちを使って徐々に世論形成を進めている。

略式起訴は、検察が本人の同意を得たうえで書面のみの審理による罰金刑を簡易裁判所に求めるもの。薗浦氏は容疑を否認し続ければ特捜部に逮捕されることを恐れて同意に転じたのだろう。この結果、罰金刑が確定すれば失職するため、その前に自ら辞職する道を選んだ格好だ。

薗浦氏は麻生派に所属し、麻生太郎副総裁の最側近の一人である。岸田首相の後見人である麻生氏にとっては打撃で、派閥抗争が激化する自民党内の政局にも影響を与えるに違いない。

しかし政局への影響以上に見逃せないのは、特捜部が薗浦氏を逮捕せず、略式起訴にとどめたことだ。

東京地検特捜部は東京五輪汚職事件でも電通出身の組織委元理事らをはじめ民間人を次々に逮捕したが、捜査線上に浮かんでいると報じられた森喜朗元首相(元組織委会長)ら政治家は誰一人逮捕されなかった。

安倍晋三元首相の権力私物化があらわになったモリカケサクラ疑惑以降、有力政治家の捜査に対する特捜部の及び腰は繰り返し指摘されてきた。

森友学園事件の証拠隠滅のため公文書改竄を指示した財務省の佐川宣寿元理財局長は公文書偽造などで告発されたが、大阪地検特捜部は不起訴処分とした。公文書改竄を命じられて自殺に追い込まれた財務省職員の赤木俊夫さんの妻雅子さんが佐川氏個人を提訴した民事訴訟でも、大阪地裁は公務員の個人責任は問われないとする判決を下した。この国の司法には「官尊民卑」の体質がはびこっている。

今回の薗浦氏の事件も、①記載漏れ額は約4000万円にのぼる、②その使途の多くも不透明、③当初は関与を否定し証拠隠滅を図った疑いもあるーーという悪質性を鑑みれば、民間人ならすぐに逮捕されるケースだ。議員辞職と引き換えに略式起訴にとどめるという「政治決着」があったとしか思えない。

検察べったりの司法クラブの社会部記者たちは、検察と政治の「裏取引」を追及せず、検察の言い分に沿って事件を報じるばかり。なぜ逮捕せずに略式起訴なのかと検察当局を厳しく追及する気配はみじんもない。

検察は国家権力に不都合な「捜査」をサボタージュしていないのか。あるいは、国家権力の批判勢力を狙い撃ちする「恣意的捜査」を行なっていないのか。不公正な捜査を監視・追及し、検察権力を公正に機能させることこそ、ジャーナリズムの基本であることを自覚してもらいたい。検察と一体化した「国策報道」はいい加減に卒業しよう。

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