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政界再編の布石か!?れいわ新選組の高井幹事長が始めた「たかしの部屋」に立憲民主党の後輩が登場!

れいわ新選組の高井たかし幹事長がホスト役をつとめるユーチューブ番組「たかしの部屋」がほのぼのしていていい。スタジオ設定もバックミュージックも長寿番組「徹子の部屋」にならったもので、高井氏がゲストとトークする内容だ。

維新キラーとして売り出し中の大石あきこ氏ら「ややこしい人たち」がひしめくれいわ新選組の中で、お堅いイメージが際立つキャリア官僚出身の高井氏の安定感はかえって新鮮に映る。れいわはひとりひとりの個性を引き出すのがうまいと思う。

高井氏は東大を卒業して旧郵政省に入り、通信行政に携わってきた。2009年衆院選の岡山1区に民主党公認で出馬し、比例中国ブロックで復活当選。紆余曲折を経て、2017年衆院選前に枝野幸男氏が旗揚げした立憲民主党に参加したが、2020年の緊急事態宣言中に東京・歌舞伎町で遊興していたことが報じられ、除籍された。

野党第一党から追い出されて挫折したエリートの高井氏を拾ったのが、れいわ新選組の山本太郎代表だった。昨年の衆院選滋賀3区にれいわ公認で擁立したのである。

私は高井氏に手を差し伸べた山本代表の決断は「誰一人見捨てない」という政治信条にぴったり当てはまるだけではなく、れいわは貴重な即戦力を手に入れたと思った。当時、以下のような記事を執筆している。

立憲民主党を「新宿夜遊び」で除籍された高井崇志議員をれいわ公認で擁立する山本太郎の「物語」創出力〜自公逃げ切りの流れを一変させるゲームチェインジャーは彼しかいない

高井氏は落選したものの、衆院選後に非議員のまま幹事長に起用された。そして「山本太郎さんを総理にしたい」と訴えつつ、それまで山本代表が一手に引き受けてきた党運営(選挙対策、他党との調整、資金管理、ボランティアのネットワークづくり等)を任されたのだ。

新興勢力のれいわ新選組には存在しなかったタイプが党運営の要に腰を据えたのである。高井氏は今夏の参院選でれいわの選挙戦を陣頭指揮しつつ、自らも比例区から出馬して国会への返り咲きを目指す。

人間万事塞翁が馬。高井氏にとっては立憲民主党に居続けるよりも政界で飛躍する好機が訪れたのではないか。

高井氏がはじめて山本代表と接したのは2019年8月、立憲民主党に所属していた時だった。消費税を廃止したマレーシアを訪れ政府高官らと意見交換する立憲民主党有志の視察旅行に、山本代表が飛び入り参加したのだ。

山本代表はこの直前の参院選でれいわ新選組を旗揚げし、消費税廃止を訴えて重度障害者の二人を特定枠で当選させたものの、自らは比例候補で断トツトップの99万票を獲得しながら落選していた。

非議員の山本代表をマレーシア視察に誘うことを提案したのは、立憲民主党内でこの視察旅行を企画し、高井氏を慕っていた若手の中谷一馬衆院議員だった。

高井氏は「たかしの部屋」のゲストに初回から山本代表を呼んでいたが、他党からは初めてとなる出演者として中谷議員を5月4日配信の番組のゲストに招待したのである。

立憲民主党とれいわ新選組の関係がぎくしゃくし、参院選でもいくつかの選挙区で激突することが避けられない情勢のなか、中谷議員は「たかしの部屋」へ堂々と出演したのだった。

この番組が面白かった。以下に埋め込むのでぜひご覧いただきたい。

中谷議員は中学卒業後、苦労を重ねて回り道して国会議員になった点において、高学歴のエリートがひしめく立憲民主党では異色の存在であり、高校を中退して芸能界へ飛び込んだ山本太郎代表に強いシンパシーを抱いていることが伝わってくる。

この番組で中谷議員が明かしているように、立憲民主党には「隠れ山本太郎ファン」が意外に多い。中谷議員は横浜市を地盤とするが、首都圏の若手議員にとくに多いようだ。

新聞記者から政界へ転身し、昨年の衆院選東京9区で当選した山岸一生氏もその一人だ。れいわ新選組の「顔」の一人だった渡辺てる子氏を立憲にスカウトして今年4月の練馬区議補選に擁立し当選させた立役者の一人である。補選には山本代表も応援にかけつけ、三人で街頭に立ち「共闘」を演出した。

山岸氏は朝日新聞政治部の後輩でよく知っている。練馬区議補選の後に話す機会があったが、東京で政治活動をしていると、れいわ支持者たちの活動量の多さを痛感することが多く、れいわと手を握らなければ衆院選で勝ち上がることは難しいと話していた。

立憲民主党には連合に依存して選挙活動を行う議員が少なくない。しかし東京では連合の組織力はさほど強くはなく、むしろれいわ支持者を無視はできないというわけだ。

中谷議員にしろ、山岸議員にしろ、立憲民主党の若手には「れいわ派」が着実に浸透している。民主党政権時代に消費税増税を決定した野田佳彦元首相や枝野幸男元官房長官ら党重鎮には消費税廃止を訴えるれいわへの警戒感は根強いが、民主党政権時代に縛られない若手にはれいわへの抵抗感はほとんどない。

立憲民主党の支持率は低迷し、今夏の参院選で惨敗する可能性が指摘されている。次の衆院選に立憲民主党がいまのかたちのまま突入する可能性はむしろ低いだろう。このままでは次の衆院選は勝てないという危機感が衆院議員たちに広がれば、参院選後に野党再編につながることが予想される。

新自由主義を掲げて野党第一党を狙う日本維新の会へ合流する者、連合と一心同体で新たな政党を結成するもの、「誰一人見捨てない」れいわに合流する者ーー主にこの3つに分裂していくのではないだろうか。

その時、立憲民主党でキャリアを重ねて中谷議員ら若手と気脈を通じているれいわの高井幹事長の存在感が一挙に高まるだろう。これから「たかしの部屋」にどのようなゲストが招かれるのか、注目したい。

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