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記録的猛暑に追い打ちをかける都市再開発や樹木伐採〜格差社会に襲いかかる上級国民たちの身勝手な政策

日本列島はここ数日、猛暑に襲われている。

3連休最終日の7月16日は、愛知県豊田市で39・1度を観測したのを筆頭に、山梨県勝沼市で38・8度、岐阜県多治見市で38・7度を記録。関東でも埼玉県越谷市で37・7度、東京都心で36・2度となり、今年最多の全国195地点で猛暑日となった。連休明けの17日も猛暑は続いた。

日本ばかりではない。世界各地から猛暑のニュースが相次いでいる。中国北西部・新疆ウイグル自治区の観光地に設置された地表の温度を測る巨大な温度計は16日に80度を記録。気温は52・2度まで上昇し、国内最高記録を更新したという。中国全土で気温が40度以上の「超高温」日が続いているそうだ。

私が東京暮らしをはじめた1999年の7月の都心の天気を調べると、最高気温が35度を超えた日は1日もない。地球温暖化は着実に進み、私たちの夏はますます暮らしにくくなっているのだろう。

SNSからはエネルギー価格の高騰で電気代を節約するために冷房を我慢しているという声が飛び込んでくる。冷房なしには命が危険にさらされる状況だ。猛暑はいまや災害と考えた方がいい。それに無為無策の政治が許されるはずがない。

地球規模の気候変動に加えて、猛暑を助長しているのは、経済優先の都市開発である。

東京の臨海地域にはタワマンが並び立ち、海からの風を遮っている。都心には金融緩和マネーが流れ込んで大規模開発があちこちで続いており、重機がうなりを挙げてビルを解体し、クレーン車が次々に鉄柱を立てている。街中ほこりだらけで、アスファルトからこみ上げる熱気が不快感に拍車をかける。とても朗らかな表情で歩いてはいられない。

さらに公園や街路の樹木が次々に伐採され、灼熱の太陽が頭上から直接照りつけてくる。まるで東京砂漠だ。

明治神宮外苑の再開発事業で、都民の歴史的財産である樹木が大量伐採されることに世論の反対が盛り上がっているが、猛暑対策という視点でも「樹木伐採の罪」は問われるべきであろう。

辛うじて残された街路樹たちは、枝先にほんのわずかに葉が残るほどに剪定されていることも少なくない。なぜそんなに刈り込むのかと行政関係者に尋ねたことがあるが、「落ちた葉をかき集める清掃代を抑制するため、あらかじめ多めに刈り込むことにしている」という回答だった。要するに経費削減だ。

いったい何のための街路樹なのか。都市再開発には惜しげもなく公金を投じるのに、街路樹の維持経費は削ることばかり考える今の行政の矛盾がここに凝縮されていると思った。

富裕層は冷房の効いたタワマンの室内から灼熱の東京砂漠を見下ろし、優雅に暮らしている。貧困層は冷房代を節約し、暑さでもうろうとしながら耐え忍んでいる。

私は高松市の貧しい母子家庭に育ち、冷房のない部屋で受験勉強したし、猛暑で知られる京都で過ごした大学時代の下宿にも冷房はなく、貧富の格差を恨んだものだが、当時と今の暑さは比較にならない。どの家庭に生まれたかによって、スタートラインがまるで違うのだ。これでは這い上がる気力さえ生まれてこない。

私が東京暮らしを始めた1999年以上、温暖化とともに着実に進んだのは、貧富の格差である。とりわけ2001年に誕生した小泉政権下で労働分野などの規制緩和が急速に進み、「勝ち組」と「負け組」の色分けがはっきりし始めた。

ビジネス競争にしろ、受験競争にしろ、これほど生活環境に違いがあるなかで、フェアな競争など机上の空論だ。格差が新たな格差を再生産する不条理の連鎖をどこかで断ち切らなければならない。

ところが、現実政治は富裕層にも貧困層にも「同じルール」を適用し、あたかも公平な政治のように振る舞っている。政治家も官僚も裕福な家庭で生まれ育ち、恵まれた環境で受験競争に勝ち、安定した地位で高収入を得てきたエリートたちが大半だ。

彼らは上級国民たちの閉鎖空間における出世競争に明け暮れ、豊かなものがより豊かになるための都市再開発に巨額の公費を注ぎ込み、冷房代を節約して暑さに耐え忍ぶことに精一杯で新たな一歩を踏み出す気力さえわいてこない人々のことなど、これっぽちも想像できないだろう。

まずは国会や首相官邸、東京都庁の知事室の冷房を切ったらどうか。私は本気でそう思う。

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