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ウクライナへの防弾装備品提供で日本は「対ロシア戦争」に加わった!〜国会決議「ウクライナと共にある」の帰結

日本政府はロシア軍と交戦中のウクライナ政府に対し、防弾チョッキなどの防衛装備品を提供することを決めた。ウクライナ政府に武器を提供して軍事支援する欧米諸国に追従するものだ。

ウクライナ政府は日本政府に防衛装備品の提供を要請していた。欧米と歩調をあわせて軍事的にもウクライナ側に立つ国を増やす国際世論形成の狙いがあろう。これに対し、岸信夫防衛大臣は防衛省内の会議で「郷土を守るために勇敢に立ち向かうウクライナの方々の一助になることを願う」と応じ、ロシアと戦うウクライナに加担する姿勢を鮮明にした。

日本からウクライナへの防衛装備品提供については、まず「防衛装備移転3原則」に照らして適切か否かという論点がある。

日本はかつて「武器輸出3原則」を掲げて武器輸出を事実上禁じてきたが、安倍政権下の2014年、新たに「防衛装備移転3原則」を閣議決定し、武器輸出へ道を開いた。①平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する②日本の安全保障に資する③相手国の厳格な管理などを条件とするーーという基準だ。

日本政府は今回、「ウクライナは国連安保理措置の対象外で、紛争当事国にはあたらない」と解釈し、防衛装備移転3原則の適用範囲内と判断したと報じられている。はたしてこの判断が法令上適切なのか、徹底した論議が求められるだろう。

きょうはこの3原則との兼ね合いはひとまず脇に置き、外交・安全保障政策上、ウクライナへの防衛装備品の提供がいかなる意味をもつのかを掘り下げて考えてみたい。

最初に指摘しておきたいのは、交戦中のウクライナに対する防弾チョッキなど防衛装備品の提供は、欧米が提供しているミサイルや機関銃ほど露骨でないにせよ、明らかな「軍事支援」であるという事実だ。

これは「ロシア軍のウクライナ侵攻を非難して即時撤収を求める」という政治的メッセージの表明や、日本政府がこれまで行ってきた財政支援や避難民受け入れとは根本的に違う次元の話であり、軍事的にはロシアを敵に回してウクライナに加担する意味を持つことを私たちは認識しなければならない。日本は軍事的に「中立」ではなくなったのである。

ドイツが当初、軍用ヘルメットに限った支援を表明したが、激しい批判を受けて地対空ミサイルや対戦車ミサイルの提供を追加発表した事実は重いだろう。戦争が泥沼化すれば、日本の軍事支援もエスカレートする可能性は否定できない。

米国がかつて主導したアフガニスタン戦争やイラク戦争で日本は国内法制を改正して米軍を後方支援してきたが、相手国からするとこれは明らかな「軍事支援」であり、当然として反撃の対象となる。

ウクライナへの軍事支援がアフガン戦争やイラク戦争と決定的に違うのは、ウクライナが闘っている相手が国連安保理の常任理事国であり核兵器を保有する超軍事大国のロシアであることだ。しかもロシアは日本と海を隔てて接しており、さらに北方領土問題を抱え、いまなお平和条約を締結していない、いわば「対立国家」なのである。

そのロシアと戦うウクライナへ軍事支援するということは、ロシアから「敵国」認定されるリスクは極めて高い。それでも仕方がない、ロシアはウクライナに軍事侵攻したのだから「悪」なのだ、「正義」はウクライナにある、私たち日本は「正義」の側に立って戦うのは当たり前だ、軍事支援するのは当然だーーという政治判断もありうるかもしれない。だが、その前提として不可欠なのは「ロシアと軍事衝突する覚悟」である。

ドイツをはじめ欧州各国はロシアのウクライナ侵攻を放置すれば、次はさらに西方への軍事侵攻を許し、ついには自国にも攻め込まれる恐れがあるという軍事的脅威を切実に痛感している。だからこそ「ウクライナを守る」という正義という以上に、「ウクライナを盾にしてロシアの西方拡大を食い止める」という極めて冷徹で利己的な安全保障上の判断に基づいて武器を提供しているのだ。「何が何でもロシアの軍事侵攻をウクライナで食い止める」という強い決意があるのである。

一方、日本政府はロシア軍のウクライナ侵攻に対してそこまでの覚悟を持っているだろうか。「遠い国のウクライナでの戦争」は対岸の火事であり、安全地帯にいると思い込んで、「欧米と歩調をあわせてウクライナへ軍事支援したほうがいい」というくらいの認識ではないか。

ロシアのプーチン大統領は核兵器使用までちらつかせて欧米主導の経済制裁に反発している。ウクライナを主戦場とした「欧米vsロシア」の対立には長い歴史があり、双方にとってウクライナは譲れない土地なのだ。

日本政府が「欧米vsロシア」の軍事衝突に巻き込まれることを覚悟したうえでロシアを敵に回しウクライナに防衛装備品を支援したとは思えない。あくまでも国際平和を希求する立場から①ロシアの軍事侵攻を非難し即時撤収を求める②ウクライナの避難民を積極的に受け入れる③ウクライナの避難民を支援するNGOに資金援助するーーという立場にとどめることが戦争に巻き込まれない懸命な外交姿勢であり、ウクライナに軍事支援してロシアを軍事的に敵に回すことは日本の外交安全保障政策上、極めてリスクが高いと私は思う。

ここで確認しておきたいのは、日本の安全保障上極めてリスクの高い今回の決定が、岸田内閣の独断で進められたわけではないという事実だ。なぜなら、日本の国会は、れいわ新選組をのぞく与野党の圧倒的多数の賛成で「ウクライナ及びウクライナ国民と共にあることを表明する」というロシア非難決議を採択したからである。

この決議は「ロシア軍による侵略を最も強い言葉で批判する。そして、ロシアに対し、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう強く求める」としている。ここまでに異論はない。問題はその後だ。「ウクライナ及びウクライナ国民と共にあることを表明する」と宣言しているのだ。

この国会決議は、「国際平和」や「ウクライナの人々の生命」を守ることに全力を尽くすという立場を越えて、ロシアと交戦状態にあるウクライナ政府と「共にある」=「共に戦う」と宣言している。

いや、別に軍事的に共に戦うと言っているわけじゃないよ…そんな甘い言い訳は国際政治の世界では通用しない。この決議をみてウクライナは日本を「味方」と思うだろうし、ロシアは「敵国」と受け止めるだろう。戦争とはそういうものだ。国権の最高機関である国会で少数政党のれいわを除く「全会一致」で採択されたのだから、岸田内閣としてはウクライナと「共にある」ことを示すために最大限の支援(軍事支援を含む)に踏み切るのは当然ということになる。逆に軍事支援に及び腰ならば「国会の大多数の意思を無視するのか」と批判されるだろう。

私が紛争当事国の一方に全面的に肩入れする国会決議に慎重だったのは、そうした理由による。戦前の日本をアジア侵略に駆り立て破滅に導いたのも国会が大政翼賛政治になり、全体主義に染まって、外交の失敗を軌道修正する柔軟さを欠いたからだ。国会決議はせめて「ウクライナに暮らす人々と共にある」にとどめるべきだった。国家権力であるウクライナ政府とウクライナに暮らす人々は別である。

現に国会決議に賛成した立憲民主党や共産党は日本政府の「ウクライナへの防衛装備品の支援」に真正面から反対できるだろうか。「3原則」を持ち出して法的論争を仕掛けることはできても、より本質的な外交安全保障上の問題ーーウクライナ政府に加担してロシア政府を軍事的に敵に回すが安全保障上のリスクーーを国会で追及することができるだろうか。私は甚だ疑問だ。

れいわが今回の国会決議に反対したことに批判が殺到しているが、ウクライナのゼレンスキー大統領を批判しただけで「ロシアに味方するのか」というバッシングを浴びる全体主義的な風潮が強まり、与野党がこぞって「ロシアは悪、ウクライナは正義」に染まるなかで、国会の多様性が衆院3人・参院2人の弱小新興勢力によってかろうじて保たれたことに、私は救われた思いがしている。

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