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高市一人勝ちの真因──最新世論調査が示す政局の地殻変動

高市内閣の支持率が驚異的な安定感を見せている。日中対立の激化、円安の深刻化、財政悪化の懸念――どれを取っても政権が揺らいでおかしくない材料ばかりだ。それでも高市人気は落ちる気配がない。11月23日に報じられた読売新聞と毎日新聞の世論調査では、読売が72%、毎日が65%。いずれも前月比で高市内閣の勢いは持続している。

とりわけ特徴的なのは、若者・現役世代の圧倒的支持だ。毎日の年代別データでは18〜40代が軒並み7割超という高さを示し、50代以降を上回っている。石破政権が若年層から完全にそっぽを向かれ、衆参で連敗したのとは対照的だ。

緊縮財政から積極財政への転換、維新を連立に迎えたスピード感、そして何より、石破氏の“ネチネチ”と評された答弁から、高市氏のストレートな語り口へ――この「変化」こそが若年層の期待を一気に引き寄せたとみられる。

高市政権を取り巻く最大の火種は日中関係だ。台湾有事をめぐる高市答弁が波紋を広げたが、毎日の調査では「問題があった」は25%にとどまり、「問題があったとは思わない」が50%。野党やリベラル派が批判を強める一方で、世論はむしろ高市氏の対中強硬姿勢を評価している。読売調査でも中国への対応を「評価する」が56%を占めた。外交の中身よりも、強い姿勢そのものが支持されている構図だ。

しかし、日中対立が長期化すれば経済への悪影響は避けられない。中国はすでに渡航自粛と水産物輸入停止を実施し、さらなる経済圧力の可能性が指摘される。G20で中国側との接触が実現しなかったことも象徴的だ。強硬姿勢は支持を生む一方、経済の実害が表面化すれば政権のアキレス腱になり得る。それを見越し、経済悪化が顕在化する前に解散に踏み切るシナリオも現実味を帯びてくる。

経済対策への評価も興味深い。総額21兆円の大型経済対策を掲げた「責任ある積極財政」は読売調査で74%が評価。石破政権の緊縮路線を否定したことが高市政権のロケットスタートにつながった形だ。ここでも若者・現役世代の支持が厚く、高齢世代は財政規律を重視する傾向がみられ、年代間の温度差が鮮明になっている。

ただし、各論に入ると評価は割れる。象徴的なのが「お米券」だ。「評価する」は28%にとどまり、「評価しない」が53%に達した。米価維持のため生産抑制に戻した高市政権と、その反発を抑えるための「お米券」。コメ政策に限れば石破政権の増産路線に軍配を上げる世論が多数派だ。

さらに、子ども1人あたり2万円給付も賛否が割れ、「評価する」40%に対し「評価しない」42%。石破政権が高齢者と子育て世帯に偏った給付で反発を招いた流れを高市政権は断ち切るはずだったが、今回も給付対象を絞り込んだことでネットでは落胆の声が増えている。現金一律給付を求める期待の強さが伺える。

政党支持率を見ると、驚異的な高市支持とは裏腹に、自民党の回復力は限定的だ。自民党は読売で32%、毎日で25%。野党側も伸び悩んでおり、国民・参政も勢いが鈍化、維新も連立参加後にやや支持を落としている。結果として「自民一強」状況は再び形成されつつあるが、最大勢力はむしろ無党派層だ。読売で40%と大幅増を示しており、政局は依然として不確実性が高い。

結局、高市内閣は「高市個人の圧倒的人気」に依存している構図が鮮明だ。対中強硬、積極財政、明快なメッセージ――この三要素が若者世代を中心に支持を押し上げている。だが、日中対立と経済への影響、各論の不満、政党支持率の伸び悩みという潜在的リスクも抱える。

高市総理が1月解散の誘惑に駆られるのは自然だが、政権の“持続力”が本物かどうかはここからの数カ月で決まる。世論が求めているのは「石破否定」ではなく、「高市が何を示すか」だ。最新調査は、そんな政局の地殻変動を浮き彫りにしている。