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フランス「動物党」にみる二大政党政治の凋落〜有権者は少しでも意味のある投票先を求めている!

フランスでは18日に成立した動物愛護法によって、2024年1月からペットショップでの犬と猫の販売が禁じられるという。24日の朝日新聞デジタル記事は、法律成立の背景として、アニマルウェルフェア(動物福祉)に対する社会の意識の高まりがあると伝えている。

私がこの記事に注目したのは、フランスで動物愛護団体の活動が盛んとなるなかで、2019年欧州議会選に「動物党」が名乗りをあげ、選挙ポスターに犬の写真をあしらい、フランス共産党(2.5%)に匹敵する2.2%の得票率を得たという部分だった。

動物党は「支持者はいまの政治システムに嫌気が差し、少しでも意味のある投票先を求めている」とし、来年のフランス大統領選にも候補者を立てる方針というのである。

フランス政界は長らく社会党(中道左派)と共和党(中道右派)の二大政党政治が続いた。これに嫌気をさした有権者が大統領に選んだのが、新党を立ち上げたマクロン氏だった。その後も二大政党離れは止まらない。

動物愛護に強い関心のある有権者は、さまざまな社会問題に幅広く取り組んでマジョリティの支持を得ようとする二大政党を支持したところで、動物愛護の優先順位を低く扱われることを知っている。動物愛護を最優先テーマに掲げる「動物党」に投票するのが、自らの強い思いを政治に反映させる手っ取り早い選択だと考えているのだ。

デジタル時代が本格化し、有権者の価値観は多様化・細分化するばかり。地球温暖化問題を最優先にする人は緑の党へ、移民排斥を訴える人は極右政党へ。人々は自らの志向を最も反映させる中小政党を選択する傾向を強めている。その裏返しとして中道政策を掲げる二大政党は埋没する一方だ。

9月のドイツ総選挙でも、高齢者の多くは中道右派のキリスト教民主・社会同盟と中道左派の社会民主党の二大政党を選択したが、若い世代が選んだ第一党は地球環境問題を最優先とする緑の党、第二党は競争重視の自由民主党で、若い世代の二大政党離れが如実に現れた。

選挙制度が二大政党に有利でも、多くの人々の政治意識の多様化はさらに加速し、重点テーマを絞った中小政党が支持を拡大していく。「年金党」「子育て党」「介護党」「障碍者の人権党」「貧困党」「ジェンダー党」「脱原発党」「非正規労働者党」…といったワンイシューを鮮明に掲げる中小政党が乱立し、それらの政党間協議や選挙協力を通して政策が形成されていく「多党制時代」へ移行していくのが、世界的な潮流であろう。

フランスの「動物党」の出現は、そんな近未来を予感させる出来事であると私は思ったのである。

このような多党制時代で埋没していくのは、政策が似通い存在意義がぼやけてくる二大政党である。日本でいえば、自民党と立憲民主党だ。

自民党は政権与党である限り「利権」という求心力に支えられ、衰退のペースは緩やかであろう。一方で「利権」という求心力のない立憲民主党は、急速に存在価値を失って有権者から見放されていく恐れがある。

立憲民主党は先の衆院選で、「選択的夫婦別姓」を重点公約に掲げた。しかし、例えばである。来年夏の参院選に「選択的夫婦別姓を実現させる党」が登場し、その党首にジェンダー問題に取り組む著名人が就任したら、この政策を支持する多くの人々の支持は一挙にそちらへ流れていくだろう。

あらゆる政策を網羅的に掲げる二大政党は、つねにワンイシュー政党の挑戦を受ける立場にある。二大政党に有利な選挙制度が彼らをそれなりに守ってくれるが、選挙制度に守られて勢力を維持するほど二大政党のイメージはさらに劣化し、守旧派の印象がこびりついて有権者はさらに離れていく。「価値観の多様化」という世界的な潮流に対して二大政党びいきの選挙制度は太刀打ちできなくなっていくと私はみている。

来年夏の参院選はそのような「多党制時代」の本格的な幕開けを感じさせる結果となるのではないか。自民党と立憲民主党は議席を大きく減らし、第三極の日本維新の会とれいわ新選組がさらに躍進する。老舗の組織政党である公明党と共産党はそれなりの勢力を維持する。

そのうえ、「動物党」なのか「選択的夫婦別姓を実現させる党」なのかはさておき、ワンイシューを掲げる新党が相次いで参戦する可能性もあろう。比例区重視の参院選は今回の衆院選以上に「多党制の時代」を後押しする可能性を秘めている。

そこで、立憲民主党の代表選である。

民主党→民進党→立憲民主党という野党第一党の最大の求心力は二大政党政治だった。そこで当選を重ねてきた議員の多くは「自民党に対抗する野党第一党」として「小選挙区制度」のもとで「二者択一の消去法」によって選ばれてきたのだ。二大政党政治の崩壊は、彼らの生存基盤を大きく揺るがす。

価値観が多様化する時代の流れに逆らって二大政党政治を前提とした党運営を続ければ、立憲民主党はますます有権者の意識と乖離していくだろう。有権者が「自民党ではない」というだけの消極的な理由でわざわざ投票所へ足を運び、野党第一党に一票を投じてくれるという幻想は一刻も早く捨てたほうが良い。

このやり方を続けているうちは政治への関心は一向に高まらず、立憲民主党は低投票率に沈み、組織票を固めた自公政権に敗れ続けるだろう。

有権者は自分が強く関心のあるテーマについて政治を動かしてくれる政党を探し、少しでも意味のある投票先を求めている。二者択一の消去法の政治はもう懲り懲りなのだ。二者択一では投票先が見つからないのだ。

立憲民主党は二大政党制時代から多党制時代への変遷を受け入れ、共産党やれいわ新選組など価値観が重なる政党との選挙協力や政策協定を通じて政治を動かす新しい政党のあり方を模索すべきである。まずは新しいリーダーが「二大政党政治」の限界を認め、「多党制時代」を生き抜いていくビジョンを鮮明に表明しなければならない。自らの政党のことばかりを議論する内向きの代表選を続けていては、どんどん埋没していく一方だ。

以上、私なりの問題提起をしたうえで、本日も「野党第一党のリーダーにふさわしいのは誰?」アンケートを続行することにしよう。

立憲民主党代表選に出馬した4氏のうち、野党第一党のリーダーにふさわしいのは誰だと思いますか?

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