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国会の役割は何?〜投票アンケートの中間集計から見えること

国会の最も重要な役割は何ですか?

SAMEJIMA TIMES(サメタイ)が呼びかけている国会アンケート。選択肢に掲げた項目はいずれも国会の重要な役割ですが、あえてひとつだけ選んでもらうことにしたところ、多くの方が悩んだ末に投票してくれているようです。

現時点のトップは「内閣を監視・追及すること」。ただし、投票先は分散しています。現在進行中の投票結果は以下からご覧になれます。今からでも投票できます。ぜひご参加ください。

 
鮫島
どなたでも投票できますよ!
国会の最も重要な役割は何だと思いますか?ひとつだけ選んでください。

私は「内閣を監視・追及すること」に投票しました。国政選挙に6連勝し憲政史上最長となった安倍内閣のもとで、日本社会は権力集中の恐怖をまざまざと見せつけられました。首相官邸が解釈改憲を堂々と進めても、首相が権力を私物化するスキャンダルが次から次へと発覚しても、誰も止められない。中央省庁のキャリア官僚たちもテレビ新聞の記者たちも官邸の意向を忖度してすり寄るばかり。そうした中で「桜を見る会」などの疑惑追及に一定の役割を果たしたのは、野党による国会質疑でした。

しかし、野党は国会の少数派です。国会運営は最終的には多数決で決めるため、多数派の与党が審議日程を決めることができます。疑惑解明まであと一歩に迫っているところで、与党が審議を打ち切るという光景を何度も見てきました。

日本国憲法は、国民が最高権力者を直接選ぶ「大統領制」ではなく、国民による選挙を通じて選ばれた国会議員たちが総理大臣を決める「議院内閣制」を採用しています。自分たちのリーダーを総理大臣に担いだ与党が内閣を支えるのは当然です。

一方で、国会には「内閣を監視・追及」する役割もあります。日本国憲法は国会、内閣、裁判所の三権がお互いを牽制しあうことで、内閣に権力が集中して「独裁」になることを防いでいます。

この「三権分立」は、数々の独裁政権が市民の人権を蹂躙した人類の苦難の歴史を反省して、権力の集中を避けるために導き出された国家統治の仕組みです。与党の国会議員にも「内閣を支える」役割だけではなく「内閣を監視する」役割もあるのです。

とくに政治とカネのスキャンダルなど政治への信頼を傷つける「政治腐敗」には、与党の政治家としても厳しく向き合わなければなりません。ところが現実の政治では、野党が総理大臣ら内閣を追及していても与党がそれを数の力で抑え込むというシーンが繰り返されます。安倍内閣時代は自民党に対する首相官邸の力が格段に強くなったため、とくにそのような傾向が強まりました。

与党の国会議員たちに「内閣を監視・追及する」という国会の役割を再確認してほしい。私がこれを選んだのは、そんな思いからです。

現時点での二位は「唯一の立法機関として法律をつくること」です。これは国会の基本的な役割です。学校でも「唯一の立法機関」という言葉は繰り返し習います。多くの方がいちばん聞き覚えのある役割といえるでしょう。

実際にほとんどの法律案を作成するのは中央省庁の官僚たちです。与党は法律案が国会に提出される前の「事前審査」として官僚たちにあれこれ注文をつけます。法律案は与党が了承してはじめて国会に提出されます。ですから、与党の国会議員たちは国会の場で厳しく追及することはめったにありません。

与党による「事前審査」の仕組みは、国会審議を迅速に円滑に進めるという「メリット」がある半面、公開の場で行われる国会審議を形骸化し、内閣と与党の間の議論が国民から見えにくなるという「デメリット」もあります。「唯一の立法機関」としての国会の役割がぼやけている原因ともいえるでしょう。

今回の投票アンケートのさなかに、最高裁判所が夫婦別姓を定めた民法を「合憲」とする判断を示しました。世論調査では選択的夫婦別姓への賛成が大多数を占めるなかで、最高裁の判断に失望が広がりました。

最高裁は「この種の制度のあり方は国会で判断されるべきだ」との考えを示しました。「選択的夫婦別姓を実現したいのなら、国会で民法を改正したらいい」と言っているわけです。しかし、安倍前首相ら自民党右派が強く抵抗しており、国会での議論は停滞しています。まさに「唯一の立法機関」としての役割がクローズアップされたニュースでした(この最高裁決定に対する私の見解をプレジデントオンライン『「国民の多くは夫婦別姓に賛成なのに」最高裁が”ずるい判決”を出した本当の理由』に寄稿しました。ぜひご覧ください)。

続いて三位につけているのは「与野党が政策を論争すること」です。この「与野党のよる政策論争」という視点は、自民党は万年与党(社会党は万年野党)といわれた「自社体制(55年体制)」の時代はほとんど注目されないものでした。

自社体制時代は、ひとつの選挙区に複数の議席が割り当てられる中選挙区制度でした。この仕組みのもとでは、自民党議員が同じ選挙区から複数立候補し、ぶつかり合います。それが自民党内に「派閥」が生まれる大きな理由でした。自民党議員は野党議員と戦うばかりではなく自民党内の他派閥の議員とも戦っていたわけです。

一方、野党第一党の社会党は中選挙区制度のもとで、現職議員の確実な当選を優先して、ひとつの選挙区に擁立する候補者の数を絞り込みました。例えば、定数3の選挙区に自民党は3人擁立しているのに社会党は1人しか擁立しないということが起きたのです。

この結果、社会党は候補者全員が当選しても全体では過半数に達しないということになりました。つまり、社会党が過半数を獲得して政権を奪う可能性は投票の前からゼロだったのです。

社会党は選挙で政権交代を目指すことを放棄していた政党でした。そのため「万年野党」と言われたのです。

社会党はその代わり、国会で内閣の追及に全力をあげました。まずは重要法案の国会審議に強く抵抗したうえで、土壇場で法案成立を容認することと引き換えに公務員の賃上げなど社会党が主張する政策を実現させる「裏取引」を与党から引き出す。こうした与野党の「国会対策政治」が幅を利かせた時代だったのです。

1990年代に小沢一郎氏が自民党を飛び出して主導した政治改革の主眼は、中選挙区制度を小選挙区制度に改めることで「自社体制」や「自民党の派閥政治」を打破し、与党第一党と野党第一党が選挙で政権を真正面から争う二大政党政治を実現させることでした。その結果、社会党は崩壊し、野党は離合集散を繰り返しながらひとつの政党に再編されていきました。そうして社会党に代わって野党第一党の地位を確立したのが民主党です。民主党は2009年総選挙でついに過半数を大きく上回る議席を獲得し、自民党から政権を奪いました。これは二大政党政治の「成果」が現れた瞬間でした。

自民党と民主党による二大政党政治の誕生で、国会のあり方は大きく変わりました。「野党・社会党は追及し、与党・自民党は守る」という対決構図は一変したのです。党首討論が導入され、国会は「内閣を監視・追及する場」から「与野党が政策論争する場」へ姿を変えていきました。マスコミが野党に求めるものも「監視・追及」から「提案・合意」へ比重を移していきました。

与野党が伯仲する政治状況なら、それでよかったでしょう。例えば米国の共和党と民主党の二大政党政治は、双方がしのぎを削り、政権交代を繰り返すことで緊張感を維持し、政治腐敗を防いでいます。日本でも自民党と民主党の力が均衡し、政権交代を繰り返していくのなら、二大政党政治は機能していると評価できるでしょう。

実際の政治はそうはなりませんでした。民主党政権はわずか3年余で崩壊し、国民は大きく失望しました。安倍氏が率いる自民党があっけなく政権復帰し、その後は国政選挙に6連勝して、与野党の議席の差や支持率の差は大きく開いたままです。

ところが、与野党の国会議員やマスコミ各社には「与野党の政策論争」を重視する気分が定着しました。与野党が伯仲していたらそれでよいのですが、与野党の実力差が大きく開いているなかで、「強力な与党」と「弱小の野党」が真正面から「政策論争」をしても、議席数・情報力・資金力・発信力などすべてに勝る与党が勝ち続けるだけでしょう。今の国会はそのような隘路に迷い込んでいます。

野党が弱くて損をするのは野党支持者だけではありません。政界全体の緊張感が失われて与党が腐敗し、横暴になり、ひいては社会全体が損をするということを再確認する必要があります。

さいごの「総理大臣を選ぶこと」に投票してくれたのは、ほんの数人でした。実は私は最後の最後まで「内閣を監視・追及すること」にするか、この「総理大臣を選ぶこと」にするか、迷いました。

現実政治において、この国の最高権力者は内閣総理大臣です。しかし、日本国憲法は国会を「唯一の立法機関」とするとともに「国権の最高機関」と定めています。これは主権者である国民が直接選んだ国会議員たちが集う「国会」を、内閣総理大臣が率いる「内閣」よりも上位に置くことを明確にするための規定でしょう。

つまり「国会」は「内閣」よりも偉いのです。それを明確に示すのは「国会が内閣総理大臣を選挙で選んで指名する」という制度です。

国会議員たちは国民に代わって、この国の最高権力者である内閣総理大臣を選びます。さらには内閣不信任案を可決することで内閣総辞職か衆院解散かを迫ることができます。私はこの国会の権限と責任は非常に大きいと思います。この「総理大臣を選ぶ」(または総理大臣に辞職を迫る)という国会の役割が世の中にもうすこし強く意識されていいと思っています。

私がそれを強調するのは、秋の総選挙が迫っているからです。与党は菅義偉・自民党総裁を、野党は枝野幸男・立憲民主党代表を「内閣総理大臣候補」に掲げて総選挙を戦います。与党が過半数を制すれば菅氏が、野党が過半数を制すれば枝野氏が総理大臣になるという戦いなのです。それが二大政党政治というものです。この点を有権者に今一度確認していただきたいという思いもありました。

以上、4つの選択肢について改めて解説させていただきました。それをふまえ、いまいちど投票を呼びかけましょう。まだ投票されていない方はぜひ投票に参加してみてください。すでに投票された方も「再投票」ボタンからやり直すことができます。

国会の最も重要な役割は何だと思いますか?ひとつだけ選んでください。

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鮫島
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