大好評いただいている新刊『朝日新聞政治部』(講談社)。発売日5月27日まであと1日となりました。都内の一部書店では本日26日から並ぶところもあるようです。電子書籍は本日から販売が始まりました。
講談社の担当編集者さんによると、朝日新聞社内は「鮫島が暴露本を出版するらしい」「俺のことも書いてあるのか?」などと戦々恐々とか。
周囲の目を意識して単行本を持ち歩くわけにいかず、さりとて自分が登場しているのか否かを誰かに尋ねることも躊躇われ、真っ先に電子書籍を購入してこっそり読むつもりの朝日新聞社員も多いとか。
大胆な社員からは私のところへダイレクトに「自分は出てくるのか」という問い合わせも寄せられています。
たしかに大勢の朝日新聞社員が実名で登場しています。とくに政治部の方々。つづいて社会部や経済部の方々。そして経営陣の皆様(元職を含む)。
でも、勧善懲悪や善悪二元論とは一線を画し、それぞれの記者(あるいは経営者)の実像を人間味あふれる姿で描き上げました(つもりです)。完全な人間などこの世に存在しません。朝日新聞社内で堂々と単行本を広げて読んでいただければうれしい限りです!
本書は、27年間の数奇な朝日新聞記者人生を送った私の実体験を赤裸々に明かすことで政治論やジャーナリズム論を提起することに主眼を置いていますが、同時に、権謀術数が渦巻く新聞社で社内闘争にあけくれる企業戦士たちの人間模様をリアルに描いた本でもあります。
現在の朝日新聞はジャーナリズム精神を大きく失い、新聞の責務を放棄していると私は感じていますが、それでも朝日新聞記者には個性派がけっこう存在します。私以外の登場人物にシンパシーを感じる読者も多いのではないかと想像しています。
政治やジャーナリズムに関心のない方も企業小説感覚でお読みいただけると思いますので、ぜひお手にとってみてください!
さて、『朝日新聞政治部』先行公開の第4弾は、第四章より「内閣官房長官の絶大な権力」です。
官房長官というと、安倍内閣の菅義偉官房長官を思い浮かべる方が多いでしょう。安倍内閣は戦後最長政権でしたが、菅官房長官の在任期間も歴代最長でした。菅氏はそこで力を蓄え、そのまま総理の座へ上り詰めたのです。
自民党の総理といえば、2001年に就任した小泉純一郎氏の後、安倍晋三→福田康夫→麻生太郎→安倍晋三と世襲政治家が続きました。現在の岸田文雄首相も世襲政治家です。そのなかで、秋田県の農家から上京して政治家秘書→横浜市議という叩き上げコースを歩み、国政デビューが遅く、党内基盤も弱い菅氏が、総理への階段を駆け上ることができたのは、官房長官時代の強大な権限をフルに活用して、政界へ、財界へ、マスコミ界へ政治基盤を拡張させたからでした。
一方で、東京新聞社会部の望月衣塑子記者の質問を妨害するなど、菅官房長官の政治姿勢には疑問符がついています。さらに菅氏を取り巻く報道各社政治部の官房長官番記者が望月記者を擁護せず、菅氏の「望月記者外し」を黙認・加担したことも批判を浴びました。菅官房長官の取り巻きである「官房長官番」たちの姿は、政治報道を担う政治部の閉鎖性を広く世の中に知らしめることになったのです。
はたして官房長官とはどのような日々を送っているのか、そして政治部の官房長官番記者とはどのような人々なのか。それを包み隠さずに明かしたのが今回の「内閣官房長官の絶大な権力」です。
私は第一次安倍内閣の与謝野馨官房長官と福田康夫内閣の町村信孝官房長官の番記者を務めました。ふたつの内閣で官房長官番を務めた政治部記者はそう多くはないと思います。その経験から「官房長官」と「官房長官番記者」の実像をありのまま描いています。ぜひご覧ください。
この稿だけではなく、『朝日新聞政治部』には私が番記者を務めた菅直人、竹中平蔵、古賀誠ら大物政治家の素顔が克明に描かれています。政治家と政治部記者とはどのような関係なのか、その実像をありのまま伝えています。記者クラブや番記者制度を軸とする旧来型の政治報道の功罪(「罪」のほうが大きいかな)を照らし出し、新たな時代に通用する政治ジャーナリズムを再構築しなければならないという思いからです。
明日はいよいよ発売日。次回から先行公開はあと3回続ける予定です。
この先は本書のクライマックスである「吉田調書事件」のネタバレ要素が出てきます。もちろん書籍購入前にお読みいただいても全体のスリリングさは維持されるという判断に基づいて先行公開しますが、真っ白な頭で読み進めたいと思う方は次回からは読まずに先に単行本を開いていただく方がよいかもしれません。
発売前重版も決まりました。ひとりでも多くの方に読んでいただき、政治のこと、新聞のこと、ジャーナリズムのこと、そして会社員人生のこと、豊かに生きるということ、さまざまなことを考えるきっかけにしていただければこの上ない喜びです。
いよいよ明日、発売です!