政治を斬る!

オーストラリアから日本を思って(28)排除に抵抗し、より強く羽ばたく昇り龍たち~敵は怪物ミノタウロス~今滝美紀

連載第10回「欧州各国で広がる「左翼狩り」と「極右主流」 危険な予兆は日本でも」では、排除されている政治家の状況をお伝えしました。今回は、排除された人々が、抵抗し反撃している状況を、日本と2大政党の点で類似するイギリスとくらべながら、書いていきたいと思います。

左翼か右翼という混乱と分断

まず、コラムでは左翼・右翼という枠に捕らわれないようにします。庶民にも分かりにくく、私自身もどちらかの枠にはめられるのは窮屈です。レッテルを貼ることで、分断されているのではないかとさえ感じます。

今回、登場するのは、一般的に急進左派と呼ばれるジョージ・ガロウェイ(George Galloway)さんです。2月末にあったイギリスの国政補選で、圧倒的に二大政党の労働党と保守党を抑えて大差で当選しました。

ガロウェイ議員は「私は、ずっと労働者のためという社会派だが、もう左翼と呼ばれたくない。今“左翼”は自由主義の同義語になっている。“左翼”の人々はFBI、CIA、監視国家を支持している。私は労働者・庶民の側に立ち戦ってきた。それに満足している。~する人~主義とレッテルを貼られたくない」と言います。

庶民を含む”国民のための政治“ ”国民のためチーム“のスローガンと重なると思いました。(Samejima times『「左右対決」から「上下対決」へ転換せよ!「なぜ野党の支持率はあがらない?」にお答えします』参照) 

ぽてとさんは、「山本太郎 れいわを反日や左翼と言う人がいるけど、実は国政政党の中では真正保守に1番近い」と政策をまとめていました。

混乱を招いているのは、左翼・リベラルと呼ばれる人々・政府が、国民生活が脅かされる過度の大量不法移民を受け入れ、YouTube・Facebookの偏った表現規制やジャーナリストの逮捕、緊縮財政、格差拡大政策、戦争などを推進するケースがよくみられることです。

私は個人的には、日本の伝統文化を大切にしたいという保守派であり、表現の自由は守りたいというリベラルであり、庶民への冨の再分配でもっと公平になってほしい社会派であり、隣国を含める多くの国々と友好を願う平和派でもあります。

豪州では、3月、前ギリシャ財務大臣で経済学者であるヤニス・バルファキスさんが、各地で講演を行い話題となりました。彼はよくギリシャ神話の“怪物ミノタウロス”を取り上げます。人の肉を食べ大暴れする、半人半牛の化け物です。ミノス王が海神ポセイドンとの約束を破ったことで誕生した“怪物ミノタウロス”は、人々の知恵で、出ることのできない迷宮に閉じ込められ、最後は英雄テセウスに倒されます。目標は、連帯して“怪物ミノタウロス”を倒すことなのではないかと、彼は説きました。

ジョージ・ガロウェイさんとは?

69歳のガロウェイ議員はスコットランド東海岸のダンディー出身。1981年に若干26歳でスコットランド労働党委員長に就任し、労働党の新星とみなされ、スコットランド最大の都市グラスゴーで英国議会の議席を獲得し、“ゴージャス ジョージ”とも呼ばれていました。        

ガロウェイ議員は1977 年、イスラエルの攻撃で荒廃したレバノン、中東のパリと呼ばれ歴史と文化の首都ベイルートを訪れたことにあるそうです。帰国後、「自分自身の政治的将来がどうなろうと、残りの人生をパレスチナとアラブの大義に捧げると誓った」と述べました。

2002年にはパレスチナ自治区で時間を過ごし、当時のパレスチナ指導者ヤセル・アラファト氏と会談も行いました。彼は約束を守り、1980年にイスラエル占領下のパレスチナヨルダン川西岸のナブルスと故郷ダンディーの姉妹提携にも携わりました(こちら参照)。

しかし2003年、イラク戦争に反対したことで、当時の英国首相トニー・ブレア(労働党)が党や国益に反するという罪で、労働党から追放されました。彼の影響力を恐れてのことかもしれません。

イラクやパレスチナなど、西側諸国が関わる中東での戦争、それを支援・擁護する英国政府を激しく非難し続けました。以来、長い間、英国政界にとって厄介な存在で、主要メディアにも同様に扱われてきました。それでも彼の政治的野心は衰えず、主張を変えることなく議員や政治活動や続けてきました。

ジョージ・ガロウェイさんの警鐘とは?

2005年5月には、イラクの石油会社と利権関係を疑われ、米国の上院に招致されましたが、無実を晴らすスピーチが注目を集めました。

「あなたたちがイラク侵攻で大惨事を起こすのを阻止するために、私は全身全霊を捧げました。あなたたちのイラクでの戦争は嘘の塊だった。あなたたちの主張に反してイラクは大量破壊兵器を持っていなかった。イラクはアルカイダとは何の関係もなかった。イラクは残虐なアメリカ同時多発テロ事件とは何の関係もなかった。イラク国民はイギリスとアメリカによるイラク侵攻に抵抗するだろうし、バグダッド陥落は終わりの始まりではなく始まりの終わりに過ぎないと考えている。私はそう訴えてきました。それらはすべて正しかったことが判明しました。あなたたちは間違っていたのです。

10万人が命をかけて代償を払いました。そのうち1600人のアメリカ兵が嘘のせいで死に追いやられた。 15000人が負傷し、その多く永久に嘘のせいで障害を負った。もし世界が、反対派や反戦運動に耳を傾けていたら、私たちは今日のような惨状には陥っていなかったでしょう。

米国上院議員はすべての煙幕の産みの親です。あなたたちは、何十億ドルものイラクの富の盗難を支援したことから注意をそらそうとしている。あなたたちがバグダッドを管理していた14か月間に、イラクの富88億ドルが行方不明になった。ハリバートンをはじめとするアメリカ企業が、イラクの金だけでなく、アメリカ国民の税金を盗んだことを見るといい。石油を量りもせず、どこだか分からない、国外に運び出して売り、アメリカ軍司令官に配った8億ドルを見るといい。

今日の新聞報道の本当のスキャンダルを見てください。最大の制裁による破壊者は私でも、ロシアの政治家でも、フランスの政治家でもないことが、この委員会での初期の証言で明らかになりました。本当の制裁破りは、米国政府、それと共謀している自国企業なのです」

これら世界的な不正や国際法違反の戦争は、約20年前に明らかになったことですが、それは正されるどころか、勢いを増しているようです。例えば、以前にもハンガリーのリーダーが「ウクライナが米国のブラックロックに売られている」ということ記しました。(こちら参照

なぜウクライナは、自国の復興を自国と国民たちで行わず、多国籍企業に多額を与えて任せるのか? 

ウクライナの土地が荒廃するほど、復興工事は大掛かりになり、提携した外国企業は儲かるのではないか? 

米国や大統領はその企業に利益を与えるために、ロシアとの停戦の話し合いを拒否しているのか?

様々な疑いを持ってしまいます。

日本で高まっている“NTT法廃止”の批判は、電気通信事業者や地方自治体などに広がり、KDDIも反対の声明を出しています。廃止が決まれば、通信インフラや防衛に影響を与える可能性があり、多くのNTT株が、ブラックロックなど外資企業に売られることが懸念されています。

この日本の国家予算の何倍もの資産を持つ、ブラックロックのCEOと岸田首相は、2023年10月、2024年3月に面会や会食を重ねています。これも、また裏金や利権はあるのかと疑ってしまいます。

20年間続くガロウェイさんの活動

ガロウェイ議員が、労働党から除名された時のスピーチを、中東で敬意を払われ、アラブ諸国やガザ地区の状況を伝えるメディア、アルジャジーラ(イスラエルは最近アルジャジーラの放送を禁止した)が、“英国政治の様相を永久に変える可能性のあるジョージ・ガロウェイの歴史的演説”として全文掲載しました。

20年前ですが、今の英日や世界の政治状況や問題点、解決方法を指摘していることに、驚きます。当時SNSが発達していなかったことが、悔やまれます。下に主要な内容をまとめました。(全文はこちら

あらゆる形の“帝国主義”に反対する私の思いは、自分の国に対する深い愛国心から生まれている。

“帝国主義”は、イギリス以外の何百万もの人々を残酷に抑圧する結果となったが、色合いや信仰の異なる人々より先に、支配者層が自国民を抑圧することを後押しした。

中東を気遣うのは、長年にわたって、無責任で貪欲で無能な役人たちが中東に手を出してきたことに対する、英国人としての道義的責任を深く感じているからにほかならない。

“帝国主義の構築者たち”は、1945年以来、何千人、何十万人、何百万人というアジア人やアフリカ人の死に加担してきたが、支配者一族やメディア経営者、利潤追求者たちからは一言の抗議も聞かなかった。

トニー・ブレア(当時の労働党の英首相)はホワイトハウスに対する奴隷的な政治的服従で応えた。

何百万人が亡くなった中東での戦争。

反共主義の米国・西側諸国の支援を受け、イランに対する殺人戦争に参戦し、同盟国から供給された化学兵器を使用していたとき、私はイラクのサダム・フセインを非難していた。 しかし、ドナルド・ラムズフェルド(米国の国防長官)が、フセインに会ったのは、フセイン政権に銃やガスを売りつけ、敵を標的にするのに必要な地図を渡すためだった。

それで、私は何を信じますか? 

第一に、主権は国民にあり、1688 年のイギリス革命は未完であると信じている。

第二に、国家は国民の奉仕者であり、透明性と責任を負うべきである。 

第三に、領土の防衛とは、国家の防衛や外国勢力に対する特別な利益の促進ではなく、国民の防衛を意味するべきである。 

強力な防衛力を海外に費やすべきではない。イギリス人の息子は外国の海岸で死ぬべきではない。

議会制民主主義の皮をかぶった君主制の権力が、世界的介入という狂信的なビジョンを持ち、国際法に対して軽率な態度を取り、他人の息子を犠牲にすることを厭わない首相に移っただけで、道徳的羅針盤を持たない国家になり、疑いをもつこともなく他国と衝突するようになった。

今日の政治は、国家の道徳性と正当性という問題に集約される。

働く人々が集団行動によって自らの社会を創造すること。労働搾取は常に存在し、富と権力の積極的な再分配を通じて、それを是正するために地域社会の行動が必要であるということ。

私は30年以上前に労働党に身を投じた。そして労働党がそれらの理想から逸脱したことが、私の苦痛の根底にあった。私は労働党内で民主社会主義者であり続けるために負け戦を戦ったが、労働党が私を追放し、私が労働党から脱退しなかったことは記録に残っている。

政治とは、学校、病院、道路、雇用の問題であり、民主主義、権利、外交、自由貿易といった壮大な理論の問題でもある。

グローバルな舞台で自由貿易や外交を追求するあまり、労働党は国民サービスの提供という方向性を見失い、民主主義の力強い伝統を、外国のエリートが消費するための薄ピンク色の偉そうなグローバル版に変えてしまった。 要するに、外国のエリートがますます排他的な国際クラブに加わるのを助けるために、私たちは自由と権利を失う危険にさらされている。

国民の政治化は、2つのレベルでの活動が必要だ。

“第1のレベル”は、草の根の急進派による大衆的な統一運動。

一歩を踏み出し、国家を足止めし、民衆の統制下に置き、未完の急進的民主主義革命を完成させる必要がある。 このレベルでは、宗教、性別、社会主義者、自由主義者、保守主義者、労働者、庶民あらゆる違うタイプの人々を、民主的解放の1つの運動に団結させる。

“第2のレベル”は、イギリス国民のアイデアと心の戦いが繰り広げられる場所づくり。

その戦いにおいて、私はこれまで通り、労働党の伝統に基づく急進的な民主社会主義者であり続けるつもりだが、権力が一部の支配者層に握られるのではなく、国民の手に戻るまでは、第1のレベルの価値観を共有する誰とでも協力するつもりだ。 

                

なぜガロウェイさんは、二大政党から大差で勝てたのか? 

20年前のガロウェイ議員の指摘が、今も解決されず、イギリス、日本などの国々の状況に当てはまることに驚きます。“第1と第2レベル”の作戦は、日本での“救民政治” 実現のための “国民のためチーム”の作戦と重なるものがあるようです。 

何十年も長い年月をかけた地域での草の根運動、ぶれない姿勢や活動を一貫した活動を経て、69歳のガロウェイさんは国政の補選で、次点に約二倍の差で勝利しました。大手メディアに批判されてもガロウェイさんの何十年もの真摯な国民のための政治が認められたのでしょう。2大政党は、3位4位で、合わせて20%弱の投票しか得られませんでした。(選挙結果はこちら) 

ガロウェイ議員は、「大手メディアは、この勝利を伝えていない」と非難しました。しかし、代表選での公約を反故にし、イスラエルを支持する労働党(スタマ―代表)に不満を持ち、排除されたり、離党したりした議員や党員たち(連載第10回)が、ガロウェイ議員の“英国労働党”に入り、年内にあるとされる、イギリス国政選挙に、すでに約100人が出馬予定であると伝えられました。

オーストラリアで先月あった、タスマニア州の選挙では、第1党が14議席、第2党が11議席、第3+第4政党+独立系が11議席と、わかれる結果でした。ニュースでは、2大政党の独裁より「議会で話合いが行われる状況になることは、良いことだ」という声が流れました。

3月のブリスベン市議会選挙では、第3政党のグリーン党が、二大政党の一つ労働党とほぼ同じ25%の票を得て「グリーン党、人々と地球に焦点を当てた政治の再創造が グリーンズランド で再び切り開かれた。パワフル グリーンズ」と伝えられました。労働党はグリーン党の話を聴かなければならないポジションに置かれました。

イギリスで予想されるように、保守党は下野し、保守党とさほど変わらない労働党に政権が変わることは、ほぼ確実かもしれません。しかし、ガロウェイ議員が育んできた“英国労働党”が議席を伸ばせば、バランスメーカーとなり労働党政権に影響を与えることができる。イギリスの選挙運動や国政選挙にも注目したいと思います。

 “救民政治” への動き始まる?

衆議院議員補欠選挙が4月中旬に始まりますが、東京15区は候補者乱立だと伝えられています。

“救民チーム”のリーダーである泉房穂さんたちと活動を共にし、“消費税廃止”と“救民政治”を訴える須藤元気さんがいます。ここから“救民チーム”の輪が広がる可能性があり、希望が高まる選挙になってほしいと思います。

また、3月末に行われた、“反グローバリズムの集会”(反全体主義)では、経済評論家で消費税反対派の池戸万作さんが、反グローバリズム・ヤングリーダーとして活動すると訴え、“救民チーム”の若手戦力になるのでは、と感じました。他の有力メンバーの出現も楽しみにしたいと思います。

日本の場合…救民政治へのハードルは?

歴史・経緯や置かれている状況で、その国の選挙の争点は違ってきます。日本の場合は、多く指摘されるように、他国と比べて、庶民・中小企業・個人事業に厳しく、衰退を招いている“消費税+インボイス制度”でしょう。

みかんさんが、鮫島さんの講演から、救民チームのハードルを指摘していました。

安藤裕さんも「政権交代への要素は十分。立憲民主党の緊縮財政派は、自民党をアシストしている。政権交代の邪魔をするな!!」と同様の指摘をしています。

そういえば、今の立憲執行部に変わる前に、執行部交代を提案し、政調会長を辞任したのは、「消費税25%必要」を提唱した、小川淳也衆院議員でした。その後、税制調査会長につきました。

須藤元気さんが立憲民主党を離党したのも「消費税廃止というな」と党内で何度も注意されたことが原因だという訴えが、拡散していました。

政権交代だけを考えれば、野党第一党の立憲民主党が数や資金面で力になることは間違いありません。しかし、政党支持率を見れば、支持率の落ちている自民党の1/3~1/4くらい、10%弱。無党派が約50%もいます。2009年民主党が政権交代した時は、約20%は支持率があったそうです。

消費税廃止派の末松義規衆議院(立憲民主党)は先日、「野党第一党 経済政策を大いに語る会」で、党内は、消費税減税/廃止の賛成派vs反対派で割れていることを認めていました。“税は国家なり”というように、“国の在り方”を決める最も重要な政策を明らかにせず、まとまっていない、“消費税論争”から逃げているような立憲民主党に“疑心暗鬼”を抱いてしまいます。

選挙に勝つための「キーポイントは“団結”」「ハードルは “有権者の疑心暗鬼”」「必要なことは“失敗から学ぶこと”」だと言われます。

有権者として、立憲民主党(民主党下野時と同じ幹部)や議員には、①なぜ、2012年選挙で地滑り完敗したのか? ②反省は何か? ③消費税は減税/廃止するのか? これらを曖昧で終わらせず、説明責任を果たし、救民政治への参加するのか?はっきりと一人一人が、有権者へ示すことはできないのか?それなしでハードルは超えられるのか?と様々な質問が浮かびます。

また、2012年、消費税増税反対を貫いて離党をしたり、落選したりした議員の方々も、立候補するかどうかを問わず、“救民チーム”に入り、もう一度、救民政治を実現する龍となって欲しい…“怪物ミノタウロス”を倒すために。(こちら参照

冒頭の写真は、シドニー・ハーバー沿いにあるギャラリーの店先です。


今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホームステイ先のグレート オーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。

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