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こちらアイスランド(63)コロナ規制全面解除。3月下旬、住民80%感染で集団免疫を〜小倉悠加

2022年2月25日(金)アイスランドのコロナ規制が全廃された。金曜日になった夜中の12時からだ。これ以上の規制続行はメリットに乏しいという見解だ。

わ〜〜い!とりあえずはうれしい。マスク着用義務、集会の人数制限、自主隔離等、その必要性は理解しているとはいえ、心理的な閉塞感に苛まれた二年間だった。

それでも、アイスランドではロックダウンはなかったし、隔離中でも散歩程度であれば自由に出ることはできたし、ヨーロッパ諸国に比べると北欧諸国は、そしてアイスランドは、ゆるやかな規制だった。

アイスランドでは去年の暮れ頃から規制の緩和と厳格化が一進一退してきた。

私が二ヶ月間の日本滞在を終えて帰宅した1月末頃から徐々に全面的な規制解除が言われ始め、先週からは店舗内のマスク着用義務もなくなった。ちなみに日本のマスク着用は同調圧力だけで、法的な規制力はない。けれど、日本の方がマスク率が断然高く、心理的な圧力がものすごかった。アイスランドは店の外に出れば誰もマスク着用など気にしないので、その点心理的にとても楽だった。

マスクに関する圧力は義務化されていたアイスランドよりも日本の方が非常に高い。日本に帰国した際にも書いたけれど、人もまばらな田舎の裏道でもマスク着用だし、自転車に乗りながら、ジョギングをしながらのマスク姿は、私にはどうしても異常としか思えなかった。

どちらにしてもアイスランドはこれで全ての規制が解けた。たとえコロナ陽性でも、隔離する必要はない。判断は自己に委ねられるとはいえ、、普通のあらゆる病気や怪我などと同じく、症状があれば家でゆっくりした方がいいし、常識的な範囲での行動をということだ。

アイスランドのワクチン接種率は約80%。当初は人口の70%が2回ワクチン接種をすれば集団免疫が得られるとしていた専門家は摂取率が上がるにつれトーンダウンし、日本と同じで、ワクチン接種すれば重症化しないという言い方に変化していった。

そして現時点で、総人口37万人中11万人がコロナ陽性になり、推測するに同じほどの人数が既に陽性になったことがあり、3月下旬には住民の7-80%がコロナ陽性者(つまりは免疫獲得者)になっていると思われる(ソースの新聞記事)。

これまではPCR検査が広く行われていたが、それも大幅に縮小された。今後はこれまでのように、詳しい数字でどの程度の人数が感染したかが見えなくなっていく。けれど、最近の感染状況を計算すれば憶測はつくはずだ。ちなみに、大規模PCR検査最終日の感染者は、今までで最も多い4333名だった。

という訳で、感染を抑えるのではなく、医療の崩壊を招かない程度に住民の間で感染を起こさせ、集団免疫を獲得する作戦がアイスランドでは間もなく終了となる予定。

あまり詳しくは覚えていないが、たぶん半年ほど前からワクチンによる免疫ではなく、実際に陽性になっての集団免疫へ方向性をシフトしていったかと思う。アイスランドの考え方は割合とよく見えていた。その点、日本はどこを目指しているのか、未だよく分かんないんだけど・・・。

今後どうなるかは不透明であるとはいえ、とりあえずアイスランドでのコロナ規制は全廃。国内の物事だけではなく、国境(つまりは航空、港等)も同様だ。

誤解していた人が多いと思うけれど、アイスランドは観光客を以前から受け入れてきた。日本のように、外国人の入国を拒んできた訳ではない。もちろん入国に際して隔離をしたり、PCR検査での陰性証明が必要だったりと、規制はある程度かけてきた。

観光目的でのアイスランドへの入国は、ずいぶんと前から自由だった。けれど、私が「アイスランドのコロナ規制全面解除」をツイートすると、数名の方がから「これでアイスランドへ行ける!」というようなリアクションが返ってきた。

ん?それは違うんじゃないかな?

アイスランド(ヨーロッパでも北米でもどこでも)への観光が不自由なのは、訪問先の国のコロナ規制事情よりも、日本に帰国した際のことの方が大きいはず。要はアイスランド政府の対応というよりも、日本側の規制なんだよね。私もそうだったけれど、帰国の際に日数の差こそあれ、まだまだ強制隔離や自己隔離が課される。

海外旅行へ一週間出ると、同じく最長一週間が隔離期間として必要になる(私の時は二週間だった。なっが〜)。日本人で会社を二週間ポンと休める人は、ごく少数派だと思う。

なので、「アイスランドのコロナ規制解除、よかった、これで観光へ行ける!」ということではない。観光がしやすくなるかならないかは、アイスランド政府のコロナ対策ではなく、日本政府の対応にかかっているのですよ!

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら

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