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こちらアイスランド(140)絶景に気を取られてナンバープレートを紛失!F899号線の姉妹道F839〜小倉悠加

今週も「だれも知らない」シリーズの秘境アイスランドです。日本語でのアイスランド旅行のブログや情報は増えているけれど、日本人でここまでアイスランドを隈無く渡り歩いているのは私しかいないらしい。

先日そのことにハタと気づいた。

旅行でアイスランドを細かくまわるためには、膨大な予算と時間がかかる。現地に来る前の下調べも必要だし、アイスランド到着後の天候によっては、行けない場所も出てくるだろう。

ヨーロッパの、ドイツやデンマークあたりからはキャンピングカーを毎年フェリーに積み、アイスランドで数ヶ月を過ごす人がいるようだ。そういう強者を確かにハイランドで見かける。彼らは平均的なアイスランド人よりもアイスランドの地理や隠れた名所をよく知っている。

我々もその強者の仲間入りをし始めているようだ。目的地の僻地化が凄まじい(苦笑)。

ましてや日本人だ。アイスランドに住む邦人は150名程度だと記憶していた。が、統計局の調べを見れば、最新の統計(去年)は115名であるという。男女比は1:3で、女性の方が断然多い。総人口38万7千人の小国なので、大勢の日本人がいるとは思っていないけれど、記憶よりもかなり少なかった。

その中でドライブ好きがどれほどいるのだろうか。まして私のようにマメに書きつけて公にする人は皆無だ。それを考えると、「こちらアイスランド」はかなり貴重な資料ではと思い始めている。

そして本当に「貴重な資料」にしたいのであれば、私感にとどまらず、正確な情報をもっと盛り込む必要がある。ということで、心がけま〜す。

アイスランドのレンタカーは地元の会社で

夏休みの前半、6月の下旬に一週間ほど北部に滞在した。その時に最も印象に残った道路がF899号線で、それは以前「こちらアイスランド」でご紹介した。

8月初旬に北部を再度訪れた際、姉妹道であるF839号線(Leirdalsheiðarvegur))を走ってきた。北部再訪の目的は、彼が3年前から走りたがっていたF26号線(Sprengisandur)を使うことで、F839号線はあくまでもオマケだった。けれど、そのオマケが私には一番印象深かった。

まずはなぜF899 (Flateyjardalsvegur)とF839(Leirdalsheiðarvegur)が姉妹かといえば、とても単純な理由だ。前述の「こちらアイスランド(134)」の地図と以下の地図を見比べれば、すぐにわかる。この二本の道は同じ半島内にあり、山脈を介して平行に走っている。二本の道の間には1000メートル級の山脈があり、山脈を越えての直接の行き来を阻む。かつては山脈の尾根に牧場が点在していたため、こういった道が作られ、使われていた。

お隣のF899号線はまだ現役の牧場がポツリとあるけれど、今回走ったF829号沿いに点在していた牧場は、すべて70年前には破棄・閉鎖されている。以下に資料を拾ってきた。

アルナエイリ(Arnareyri)1934年閉鎖
ブレッカ(Brekka) 1924年閉鎖
ギル(Gil)1899年閉鎖
カダルスタディル(Kaðalstaðir)1933年閉鎖
クスングススタディル(Kussungsstaðir)1904年閉鎖
ティンドリザスタディル(Tindriðastaðir)1944年閉鎖
スベラアゥ(Þverá) 1913年閉鎖

最後の牧場は半世紀前に姿を消している。その割にはこの道は廃止にならず、毎年道路交通局により整備され、開通される。それはなぜなか?ひとつは、どうやらこの道沿いに流れる川で釣りができるため、釣り場としての需要があるらしい。ブルーベリーも大量に生るので、時期になればブルーベリー摘みでも使うことができる。

とはいえ、このような僻地にそれほど多くの人が訪れるとは思えない。必要性が高くはないけれど、せっかく開墾した場所でもあるので、荒廃しない程度に物事を整えているのだと私は解釈した。とにかくありがたく走ることにした。

入り口から間もなく坂を上がり、順調に高度を上げていった。見晴らしがよくなり、このままエイヤフョルヅルの湾岸を見渡していけるのかと思いきや、途中から低木に視界を阻まれた。「だから木がある道って嫌いなんだよね〜」という事態に。

木に視界を阻まれるドライブは日本では日常茶飯事なので、アイスランドらしい気分を味わいたい私は、木を目の敵にしている。

これみよがしの大木化する類の植林は大嫌いだが、ここで見た低木は、許せる範囲だった。すると、1ヶ所いい感じの沢に出た。水のある風景は生命感と流動性があり美しい。大きな水たまり程度の沢なので、楽しく渡った。

この沢を過ぎたあたりから、目の前がササっとひらけがぜん私が好きな風景に切り替わった。やはり視界は大きい方がいい。

かつて牧場が何軒もあっただけあり、現在でもいい感じの牧草地になりそうな場所が散見された。のんびりと草を食む羊の姿もあり、なるほど、羊が放牧されているということは、羊を集めるための道路も必要になる。

ここら辺から、私は「あぁ、きれいだ」を連発する、語彙力がゼロの人モードになっていく。だって本当に、おとぎ話の挿絵みたい!(写真は拡大して見ることができます)

道は当然、半島の先端へと続く。全長27キロ、往復で50キロ強のそれほど長い道ではないため、のらりくらりと気に入った風景を見つけては車を止めた。

実はブルーベリーも既に結実していて、食べられる大きさにはなっていたので、少しばかり摘んできた。何度かヨーグルトのお供にするくらい摘めたのは、大きな収穫だった。

そして到着したのが半島の先端、クヴァルヴァッツフョルヅル(Hvalvatnsfjörður)だ。わーい、姉妹F道を制覇できた!

ーーーと喜んだのも束の間、あれ?あれ?あれれぇえ?ナンバープレートがない!!

我が家のかわいいジムニー君。あの道もこの道も、悪路でも舗装道でもしっかりこなしてくれる頼りになる車の、ナンバープレートがない!

「どこで落としたんだろう?そんなに大きな川ってなかったよね?!」

元々、この車のナンバープレートは少し傾いていて、なんかやだなぁとは思っていた。今まであちこちに停車し、景観の写真をとったり、ベリーまで摘んだのに、ナンバープレートの紛失は全く気づかなかった。これでは怪しい車でしかない。

よく見れば、ネジだけは残っている。プレートが入っているプラケース側のねじ止め部分がベリっと折れたらしい。

ただ、これは「アイスランドのハイランド・ドライブあるある」でしかない。彼に言わせれば、「とうとう来たか」のようだった。

渡るか渡らないかを迷うような大きな川はなかったが、1ヶ所だけ心当たりはあった。思ったよりも深く、水の抵抗も大きかった場所があった。

最初からナンバープレートの取り付けが甘かったので、それが緩み、川ではない道中のどこかでポロンと落ちたという可能性もなくはない。けれど、どうもそんな気はしない。とにかく、道に落ちているものに注意しながら帰ろうということになった。

同じ場所を引き返すだけなのに、帰路は帰路でまた違った光景が目に入り美しい。

大きな川でなくても、水を横切るたびに車から降りて、ナンバープレートがないかを確かめた。道中ずっと、ナンバープレート、ナンバープレートと心の中でブツブツ言いながら進んだ。

見つからん!

最後に望みを託したのが本命の場所で、やっぱりそこに落ちていた。川の中だ。

あ”〜〜、やっぱりねぇ。たいした川じゃないと思い、珍しく(というか初めて)橋を使わず川を横切った。思ったよりも深くて水の流れも多かった。遅かれ早かれこのナンバープレートはどこかで脱落したものと思う。これが濁流の氷河の川でなくてよかった。濁流だと見つかる可能性がガタンと落ちる。

橋を使わなかったのは、ガードレールがないため、歩行者専用なのかと思ったからだ。「歩行者専用」だとか「4トン車まで」等の但し書きがなかったので、どのような車でも大丈夫なのだろうとは思えたけれど、遠目から見ていたし、川もそれほど深くないだろうと油断した。

油断したとはいえ、事故った訳でもなんでもなく、緩んでいたかの拍子でナンバープレートが脱落しただけに過ぎない。当たりどころが悪ければ、豆腐の角に頭をぶつけても痛い(違う?!)。そんな感じだったかと。

ナンバープレートは川の中で待っていた。ずっと待ってたんだよね、冷たいよね、ごめんね〜。

ハイキングシューズ、水着、ウォーターシューズ、長靴、ハイキング・ポールはいつも車の中にある。そんなこんなの装備を駆使して無事にナンバープレートは回収した。はぁ、これで一段落&一安心。よかった。

なんでも高いお国柄なので、ナンバープレートを新調するとなるといくらかかるやら・・・。費用もさることながら、日数もかかりそうで憂鬱だった。

ナンバープレートを紛失した際は、応急処置として見やすい場所(フロントガラス越し)に書いておくことらしい。確かに、ナンバープレートがなく、手書きのナンバーを出している車は実際に見たことがある。これは彼が言うことなので、道交法上正しいのかは調べていない。

事故的に紛失したその現場から走行禁止となると、特に冬などは死に直結する。それでは「安全」の本末転倒だ。新しいナンバープレートが到着するまでの仮ナンバー制度があるのかは知らないが、とりあえず手書きナンバー提示は何度も見たことがあるので、それで社会は普通に回っていると見た。

そんな訳で北部アクレイリからレイキャビクへの道中は、ナンバープレート無しの車を走らせた。もちろん、わかりやすい場所にナンバーは書いて出した。プレートがないことに少し気が引けはしたけれど、「しっかりと冒険しています」と宣言しているようで、少しだけ誇らしくも思った。

小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。

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