トヨタや日本生命ら大手スポンサーがフジテレビをついに見切り始めた。CM中止の動きが相次いでいる。
マスコミ各社もようやく報道を開始した。ところがマスコミ各社はいまだに「中居正広さんの問題」と報じている。あまりにピンボケだ。
いまや疑惑の中心は「中居さん」ではなく「フジテレビ」である。
スポンサーが批判しているのも、「中居さんの性加害疑惑」ではなく、「フジテレビの編成局幹部Aによる女子アナを使った接待疑惑」であり、さらには「港浩一社長いかの経営陣が疑惑をもみ消し、説明責任を果たそうとしない企業ガバナンスの崩壊」といっていい。
フジの港浩一社長が記者クラブ加盟社以外を排除し、さらには撮影も禁じた「密室会見」で釈明したことは、この会社のガバナンス崩壊を象徴しているといえるだろう。
テレビ局は報道機関として取材相手にカメラを突きつけているのに、自らが取材を受ける場面で撮影を禁じたのは、世の中から到底理解されないことだ。
それにもかかわらず、一連の問題をいまだに「中居さんの問題」と位置付けているマスコミ各社の報道は周回遅れである。ニュースの核心をあえてずらしているのは、オールドメディアの同業者として、フジテレビを守っているとしか思えない。
私の古巣である朝日新聞デジタル(1月18日)の報道を例に解説してみよう。
タイトルは『トヨタや日生、フジテレビのCM当面見合わせ 中居さん問題受け』。「トヨタ、日本生命、明治安田生命、アフラック生命がフジテレビで放映するCMを見合わせることを決めた」という内容だ。
まずはタイトルが不的確である。スポンサーは「中居さん問題」を批判しているのではなく、「フジテレビの性接待疑惑」に疑念を抱いており、さらにはそれをもみ消したことを問題視しているのだ。
私が担当デスクとしてほぼ同じ文字数でタイトルをつけるのなら『トヨタや日本生命、フジテレビCM見合わせ相次ぐ 性接待疑惑で』とする。このほうが、問題の核心が「中居さんの性加害疑惑」ではなく「フジテレビによる性接待疑惑」にあることが的確に伝わるだろう。
次の記事の中身について。朝日新聞デジタルは「中居さんが起こした女性とのトラブルにフジテレビ幹部社員の関与があったと報じられた問題を受けて」スポンサーがCM見合わせに動いたと報じている。
これも前述の通り、ミスリードだ。スポンサーがいちばん批判しているのは港社長以下のフジテレビのガバナンスの崩壊である。
私がデスクなら「フジテレビ社員が中居さんから受けた性被害を港浩一社長ら経営陣がもみ消したと報じられた問題を受けて」とする。このほうが、疑惑の中心は「中居さん」でも「編成局幹部A」でもなく、「港社長ら経営陣」にあることが明確になる。
マスコミ各社がそれでもなお「中居問題」に矮小化している理由は、それぞれの記者のニュース感覚が鈍いことに加え、中居さんを切り捨ててフジテレビ本来を守るという港社長らの戦略に同調しているからだ。
この点、マスコミ各社の報道より、フジテレビの宮司愛海アナウンサーが同局の番組内で声をあげた内容のほうが的確というほかない(こちら参照)。
宮司アナの発言は次のとおりである。
①「一連の問題の根本に何があったのか、第三者の目で調べてもらう、会社が生まれ変わる一歩にすべきだと感じています」
宮司アナのほうがマスコミ各社よりも「中居問題」ではなく「フジ問題」として捉えている。
②「意図しない目を向けられて傷ついている仲間が多くいます。とてもつらくて、自分たちで説明もできない。もどかしい状況に置かれています」
「意図しない目」とは、「女子アナはみんな性接待をさせられている」ということだろう。この疑惑を解消できるのはフジテレビ自身しかない。編成局幹部Aの過去の性接待の全容、さらにはフジ社内で性接待が常態化していた現状をすべて公開しない限り、女子アナ全員に「意図しない目」が向けられる状況を解消することはできない。
③「今回の会見は社員を含め、全面的に公開されなませんでしたが、会社に対しては、社員に対する説明もしっかり行って、それを真摯に公表してほしい」
これはまさにそのとおりという発言だ。隠蔽は疑念を膨らませる。港社長の記者会見は最悪だった。いまいちど会見をやりなおすことが不可欠だ。