フジテレビが女子アナを使った性接待を繰り返してきた疑惑の影響が、テレビ業界全体に広がってきた。
トヨタや日本生命、セブン・アイ、花王といった大手スポンサー50社超がフジテレビのCM差し替えを公表。SNSではフジ以外のテレビ各社でも女子アナ接待が広がっているとの批判が相次ぎ、テレビ業界全体に疑惑の目が向けられ始めたのだ。
こうしたなか、TBSが芸能関係者と社員の関係について社内調査を始めると発表した。先手を打って社内調査を打ち出すことで、批判の矛先がTBSに向かうことを避ける狙いがあるのだろう。
日本テレビやテレビ朝日などの他局も早晩、何らかの対応を迫られるのではないか。
元SMAPの中居正広さんによる性加害疑惑は、フジテレビをはじめとするテレビ業界全体の女子アナ上納接待疑惑へ、完全にフェーズが変わった。
テレビ業界の闇といわれた女子アナ接待。その相手は芸能人にとどまらず、政治家や経営者、スポーツ選手にまで広がるとみられている。ついにパンドラの箱が開こうとしている。
スポンサー各社はフジテレビのスポンサーから完全に撤退したわけではない。大半は現時点では企業イメージの悪化を避けるために自社CMを公共広告機構のCMに差し替えただけで、広告料はなお支払っているとみられる。
だが、社長会見の撮影を禁じるといったフジテレビの閉鎖的対応が続けば、さらに対応を強化し、スポンサーからの完全撤退もありえるだろう。そうなるとフジの経営は大打撃を受け、解体的危機に陥る。
テレビ各社も他人事ではない。自社の女子アナの接待疑惑が浮上した途端に、フジと同じ道をたどるからだ。
TBSが他社に先駆けて社内調査を打ち出したのも、そのような危機感からだろう。
TBSの看板アナウンサーとして役員待遇に昇格した安住紳一郎アナウンサーは1月18日の番組で、三谷幸喜さんから「これはフジテレビだけのことなのか」と突っ込まれ、「どうなんでしょうね」と言葉を濁した。安住氏は視聴者の立場で包み隠さず語る親近感で人気を得てきたが、女子アナ上納疑惑については歯切れが悪い対応をみせたことで、SNSではTBSも同様の問題を抱えているとの疑念が一気に広がった。
安住アナは1月20日の番組でさっそく軌道修正した。「フジテレビだけなのか、という声は届いています」「私たちも実際そう思っています」「これはきっちり、他の放送局も調べて、スポンサーや視聴者に説明すべきだと思います」と語ったのだ。
やはりテレビ画面に顔を出して視聴者の共感を得なければならない看板アナウンサーは、テレビ画面の前に立つことのない経営者が組織防衛のための「隠蔽」を続けることを支持するわけにはいかないのだ。
TBSも同じ日、「芸能関係者とテレビ局員の関係をめぐる一連の報道を踏まえ、実態を把握するための社内調査を始めている」と公表。アナウンサーを含む社員を対象に弁護士の助言を得ながら調査を進めていく。
女子アナを使った政治家や経営者、スポーツ選挙の接待へ世論の関心が高まり、女子アナはみんな上納接待させられているとの疑念が広がる以上、それを打ち消すにはテレビ各社がしっかり調査して公表するしかない。
これは女子アナに限らず、政治記者と政治家など取材現場の接待問題に発展する可能性もある。TBSの調査体操が芸能界にとどまるのか、政界などにも広がるのか、今後の重要な焦点となる。