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フジテレビ前代未聞「10時間半の記者会見」怒号が飛び交う紛糾会見をあえて演出した狡猾な狙い〜最先端の企業防衛策を徹底検証

フジテレビが1月27日に開いた「やりなおし記者会見」が終了したのは翌日の午前2時半。10時間以上に及ぶ前代未聞の記者会見となった。

記者会見の様子は10分遅れで配信が認められたが、最初から最後まで視聴した人はほどんどいないだろう。マスコミ各社の記事をみても、論点がどこにあったのか、よくわからない。

記者クラブ加盟社に参加を絞り、映像の撮影も禁じて猛批判を浴びた最初の記者会見から一転、フジテレビが二度目の記者会見を質問が途切れるまで延々と開いた狙いは、ここにある。

記者から怒号が飛び交う収拾不能の記者会見をあえて演出し、わけをわからなくして世論を白けさせる。

この狡猾な企業防衛策に対抗する最も有効な手段は、記者会見の論点を簡潔に整理してお伝えすることだ。

私なりに「フジテレビの企業防衛策」という視点で論点を5つに絞ってみた。

①やりなおし記者会見の狙い

②編成局幹部Aの関与

③港社長のもみ消し疑惑

④フジの女子アナ接待文化

⑤最高権力者・日枝相談役の去就

①やりなおし記者会見の狙い

私が注目したのは、フジテレビの司会者が「女性のプライバシー保護」を理由に個人の特定につながる質問を避けるように要請しつつ、それでも踏み込んだ質問をしたり、怒号をぶつけたりすることが予想されるユーチューブなどの記者たちを冒頭からあえて積極的に指名したことだ。

質問が途切れるまで会見を開く方針だったとすれば、冒頭からこのような記者を指名する必要はなかった。延々と続く記者会見の後半、注目度が下がってから指名すればよかったのである。

なぜ、いきなりこのような記者を立て続けに指名したのか。

これは単なる「ガス抜き」ではなかろう。もちろんフジテレビが真実を包み隠さず明かしたいと改心したわけでもない。

ここに最先端の危機管理ノウハウがある。

全国注目の記者会見をあえて紛糾させ、追及するほうも追及されるほうも「どっちもどっち」という白けムードを醸成することこそ、論点を分散させて世論の批判をかわす最も有効な手立てなのだ。

その意味では、記者側も延々と質問したり、自分の意見を縷々述べたりして、自らをアピールするかのような質問の仕方を改善していかなければ、相手の思う壺ではないかと私は思った。

②編成局幹部Aの関与

フジテレビの女子アナが中居正広さんから性被害を受けたとされる「中居さんの自宅での飲み会」。これをセッティングしたのが、大物プロデューサーで編成局幹部のA氏だったと週刊文春などは報じている。

これが最初の論点だ。

フジテレビは昨年末、早々に「社員の関与はなかった」と全面否定するコメントを公式サイトに発表した。

今回の記者会見でも A氏のLINEやショートメッセージの記録を調べたうえ、改めてこの飲み会へ直接的関与はなかったと否定した。

一方、この飲み会の前にあった中居さんの自宅でのバーベキューパーティーにA氏が被害女性を誘ったことは認め、性加害がこのバーベキューパーティーの延長線に発生したのかどうかは第三者委員会の調査に委ねるとの立場を示した。

A氏が仮に性加害のあった飲み会に直接関与していなかったとしても、中居さんが被害女性を自宅に呼び込む環境をお膳立てしたことは間違いなかろう。

文春が疑惑を報じた昨年末の時点で、フジテレビが中居さんと被害女性をつないだA氏の行動を伏せ、関与を全面否定したことは、隠蔽そのものであったというほかない。

③港社長のもみ消し疑惑

港社長は記者会見で、性被害の報告が自らのもとにあがってきたのは2ヶ月後の2023年8月だったと明らかにした。

港社長に報告をあげた当時の大多専務(現関西テレビ社長)は性被害の報告を受けたその日に港社長に報告をあげたと証言している。これが事実とすると、性被害の訴えは、被害女性から報告を受けたアナウンス室やそこから報告を受けた編成制作局長の手元で2ヶ月も放置されていたことになる。

まずはこの2ヶ月の実態解明が不可欠だ。

さらに港社長は報告を受けた後、「女性のプライバシー保護を最優先に」「女性が誰にも知られず仕事に復帰したいという思いを重視し」、中居氏への聞き取り調査などを行わず、番組も継続したと説明しました。

これは「女性を盾にして自分たちのもみ消しを正当化した」というほかない。

女性を守りつつ、中居さんを番組から外す方法はいくらでもあったはずだ。

松本人志さんが同じく性加害疑惑で降板した後も、何事もなかったように中居氏の番組を継続してきた社長以下の責任はどう考えても免れない。港社長が辞任を回避できなかった最大の理由はここにある。

第三者委員会の調査もここに重点が置かれることになろう。

裏を返せば、中居さんと港社長を切り捨て、フジテレビと日枝氏を守る。フジテレビの防衛ラインはそこにあるといっていい。

④フジテレビの女子アナ接待文化

フジテレビが女子アナを接待の道具に使うことが常態化していたことも明らかになった。社外の相手を接待するだけではなく、社内の宴会でも女子アナを使っていたのである。

港社長は自らの誕生会に女子アナが招かれていたことを認め、「今となっては、気が進まなかった人もいたと思う」と反省の弁を述べた。

他方、会見に同席した他の取締役は女子アナを接待に使ったことを否定した。

港社長はとんねるずを担当したバラエティー出身で、編成局幹部Aはバラエティー部門の子飼いだった。バラエテイー部門が女子アナを接待要員として私物化していた実態が浮かんでくる。

スポニチは、編成局幹部が他局の女子アナを中居氏の接待要員に使っていたと報じた。

フジテレビ上層部は「性接待」「上納接待」と「単なる接待」を分け、「単なる接待」は問題なかったと結論づける姿勢をみせていますが、はたしてそうだろうか。女子アナを接待要員として扱う企業体質そのものが問われているのではないか。

ここを抜本的に改善しない限り、信頼回復は進まない。女子アナ接待文化を根絶するためには、港社長の過去の行状が明らかにされ、厳しく断罪されることが不可欠だ。

⑤最高権力者・日枝相談役の去就

フジテレビの記者会見の最大の焦点は、「フジの天皇」と呼ばれ最高権力者である日枝久相談役の進退問題だった。この最大の論点については次回の記事で詳細に解説したい。

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