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アンケート1位は小川淳也氏!…でも「立憲民主党はなぜ惨敗したのか」が総括されなかった代表選

立憲民主党の代表選がきょう、いよいよ投開票されます。党関係者の話を総合すると、国会議員票では泉健太氏がリードし、小川淳也氏が後を追っているようです。しかし、逢坂誠二氏と西村智奈美氏をふくめて「どんぐりの背比べ」であることに変わりはなく、決選投票にもつれ込む可能性が非常に高いとみられます。投票箱をあけてみないとわからないというスリリングな展開となるでしょう。

SAMEJIMA TIMESが実施してきた「野党第一党のリーダーにふさわしいのは誰?」アンケートには1600人を超える方々が参加してくれました。新聞社の世論調査の調査数に匹敵する人数です。ありがとうございます。

投開票前日の29日時点で、①小川淳也氏(得票率30%)②適任者なし(27%)③西村智奈美氏(23%)④逢坂誠二氏(14%)⑤泉健太氏(7%)となっています。

アンケート調査なので世論をそのまま反映するものではありませんが、大きな傾向としては、国会議員票でトップを走る泉氏がアンケートでは最下位というあたりに「立憲民主党の内外ギャップ」が映し出されていると思います。党支持率が低迷している一因はこのあたりにあるのかもしれません。

立憲民主党代表選に出馬した4氏のうち、野党第一党のリーダーにふさわしいのは誰だと思いますか?

私はこの間、香川県立高松高校の同級生である小川氏をはじめ、代表候補4氏や立憲民主党そのものに対して厳しい指摘を重ねてきました。これに対して「批判ばかりでうんざりだ」「批判するなら自公与党を」「なぜ立憲民主党の代表選を盛り上げる記事を書かないのか」というご意見を多数いただきました。

日本の政治を健全化するため、野党第一党の役割は非常に重要であり、立憲民主党の再建は日本の政治にとって重要であると私は考えています。野党が低迷して「政権交代のリアリズム」が消失していることが、自公与党から危機感を失わせて腐敗政治を長引かせている最大の原因です。私は今回の代表選に多くを期待していました。

立憲民主党に期待することと、立憲民主党を応援して代表選を盛り上げる記事を書くことは、まったく別だと思います。立憲民主党の役割が重要であるからこそ、そのリーダーはさまざまな視点からの批判を経たうえで選ばれなければなりません。

私は政治ジャーナリストであり、立憲民主党の党員でも支援者でもありません。今回の代表選に際してジャーナリストとしての責務は、代表候補4氏が野党第一党のリーダーにふさわしいか否かを徹底的に厳しい目でチェックし、さまざまな争点や疑問点を世論に提起し、4氏に回答を迫っていくことであると考えます。

今回の代表選は、立憲民主党が世論から「NO」を突きつけられ、再建を目指すための第一歩です。立憲民主党をサポートする視点だけでは、せっかくの代表選は「内輪のお祭り」で終わってしまうでしょう。「立憲民主党が直面する課題」をシビアに指摘し、野党第一党としての自覚と責任を迫り、立憲民主党の再生策を問題提起し、それを通じて政界全体に緊張感を取り戻すことこそ、政治ジャーナリズムの本来的責務だと思います。

実際、今回の代表選は幅広い人々を巻き込む盛り上がりに欠けました。野党に関心のない人々、政治そのものに関心のない人々を引き寄せ、政治変革へのうねりを起こす大きな機会を立憲民主党は逃したと思います。

これはマスコミ報道にも原因はあるでしょう。しかし、当事者である立憲民主党の政治家たちがマスコミのせいにばかりしていては、事態はまったく前にすすみません。マスコミの体たらくを織り込んだうえで、世論を引き寄せて巻き込んでいく大胆な仕掛けが代表選にみられなかったのはとても残念でした。

私はこの代表選で最も欠けていたのは「なぜ衆院選で惨敗したのか」を直視することだったと思います。

党首のカリスマ性や各議員の日常活動不足、マスコミの偏向報道など、さまざまな理由はあるでしょう。しかし最大の理由は「非自民勢力が理念や政策の違いを超えてひとつにまとまる二大政党政治下の野党第一党のあり方」そのものが、価値観が多様化する現代の有権者たちから拒絶されたのだと私は思います。

野党第一党のめざすべき道が迷走していることは、枝野幸男代表の姿勢に顕著に現れました。

小選挙区制を中心とする衆院選では、野党候補が一本化しなければ自公与党に勝利することは困難です。小選挙区での野党共闘は理屈抜きで不可欠なのです。

ところが、枝野代表は野党第一党の党首として、あるいは、野党共闘の首相候補として、野党共闘を主導し、野党全体の勝利(野党の過半数獲得による政権交代)に責任を追うという姿勢をまったくみせず、市民連合が主導する「野党共闘」に一政党として加わるという中途半端な態度に終始しました。共産党との共闘に反発する連合への配慮があったのでしょう。

枝野氏は一方で、衆院選が「政権選択の選挙」であることを踏まえ、「野党連立(連合)政権」を目指すのではなく、「立憲民主党の単独政権」を目指すと表明したのです。小選挙区では共産党やれいわ新選組の多くの候補に撤退してもらいながら「単独政権」を目指すと表明するのは、相当矛盾しています。しかも、立憲民主党には単独で過半数を取る実力がないことは誰の目にも明らかでした。

さらに枝野氏は野党共闘の首相候補でありながら「野党全体で過半数獲得」や「政権交代の実現」を勝敗ラインに掲げず、あくまでも「立憲民主党の議席増」をめざす姿勢をみせていました。「何が何でも首相になるぞ」という不退転の決意はまったく伝わって来なかったのです。

このような枝野代表の姿勢は「野党共闘」の姿も「野党への政権交代」の現実味もぼやかしてしまい、「野党共闘」は極めて中途半端に終わり、衆院選は「政権選択の選挙」になり得ませんでした。「政権選択」のリアリズムを欠く衆院選が盛り上がるはずがありません。戦後三番目に低い投票率はその帰結でした。組織票を固めて低投票率で逃げ切る自公与党の選挙戦略は今回も的中してしまったのです。

二大政党政治において野党第一党は政権交代をめざすからこそ存在意義があるのに、野党第一党が自らその目標を隠しているようでは、二大政党政治は実質的に終焉したといえるでしょう。私は「今回の衆院選は立憲民主党の不戦敗だった」と位置付けています。

今回の代表選では「立憲民主党がなぜ惨敗したのか」はほとんど総括されませんでした。

私は、有権者の価値観が多様化する現代社会において、「自民か非自民か」の二者択一の消去法による選択を有権者に迫る二大政党政治のあり方そのものが拒絶されていると考えます。「自民党に代わる政権の受け皿」という一点において理念や政策を超えて結集する野党第一党(新進党→民主党→民政党→希望の党→立憲民主党)の存在自体が有権者から受け入れられなくなっている。立憲民主党はまずは単独政権を担う実力がない現実を率直に受け入れ、共産党やれいわ新選組などとの連携による政権交代を目指す「多党制時代」への移行を鮮明に掲げる必要があると思います。

このような政権戦略を明確に描かない限り、いくら「立憲民主党の再生」を掲げたところで、「この党はいったい何のために存在しているのか」という根本的な疑問は解消されません。

単独政権を担う実力に大きく欠けるなかで「政権交代をめざして野党各党のチームをまとめる野党第一党」の役割を追求しないのなら、この党の存在意義はどこにあるのでしょうか。二大政党に有利な選挙制度に安住し「万年野党第一党」に安住する政党を誰が支持するでしょうか。二大政党に有利な選挙制度のなかで「野党全体の勝利」を目指す方策を模索することこそ、野党第一党の役割でしょう。

きょう選出される新代表は、立憲民主党の代表であるだけでなく、自公政権に対抗する野党全体のリーダーであり、次期衆院選を真の意味での「政権選択の選挙」にする責務を負う「野党全体の首相候補」です。そのゴールを見据えて来年夏の参院選の戦い方を模索しなければなりません。

その先頭に立つ強烈な指導力とカリスマ性を備えたリーダーが誕生することを願ってやみません。

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