高市内閣の支持率は高い。しかし、その足元では不穏な動きが起きている。東京・千代田区の都議補選、北海道のジャガイモ輸入問題、衆院比例定数削減に伴う中国・四国ブロックの統合。いずれも、自民党を長年支えてきた支持基盤に関わる問題だ。
高市政権の最大の敵は野党ではない。自民党を支えてきた人々の反発なのかもしれない。
千代田区補選、自民党の公認より地元の結束
11月1日に投開票された東京都議補選の千代田区選挙区。勝利したのは、5360票を獲得した自民系無所属の林則行氏だった。
林氏は元区議で、与謝野馨元官房長官の秘書を務めた経歴を持つ。2025年の都議選では自民党公認候補として出馬したものの、3位で落選。今回は地元の自民党区議らの支援を受けて再挑戦し、当選を果たした。
注目すべきは、自民党東京都連が林氏の公認を見送ったことだ。千代田支部は公認を申請したが、都連はこれを認めなかった。それでも林氏は、地域に根を張った活動と地元保守層の結束で勝利した。
党組織の判断よりも、地域のつながりが勝ったのである。
一方、都民ファーストの会は小池百合子都知事らが前面に立って支援したが、候補者の永戸考氏は4612票で敗れた。参政党も神谷宗幣代表が連日応援したものの、3117票にとどまった。
自民党の公認を得られなかった候補が勝ち、党組織や小池氏の支援を受けた候補が敗れる。この結果は、既存の政治組織の力だけでは選挙を制せなくなっていることを示している。
北海道を揺さぶるジャガイモ輸入問題
次の火種は北海道だ。
トランプ米政権は、日本に生ジャガイモの輸入解禁を迫っている。現在、輸入が認められているのは加工用に限られる。生ジャガイモの解禁は国内農家に打撃を与えるだけでなく、病害虫が侵入し、種イモ生産に影響する懸念もある。
北海道は、日本の農業を支える重要な地域だ。自民党も長年、農業関係者を支持基盤の一つとしてきた。
10月21日にはJA北海道中央会の樽井会長が、輸入解禁を「断じて容認しない」と表明。武部新農水相に阻止を強く求めた。翌22日には国民民主党、立憲民主党なども武部氏に厳格な検討を要請した。
高市政権にとって難しいのは、対米関係と国内農業の利害が正面からぶつかることだ。米国の要求を受け入れれば、北海道の農業関係者の反発を招く。拒めば、米国との交渉が難しくなる。
高市政権は、誰の利益を優先するのか。武部農水相の対応は、政権と農業関係者の関係を左右する試金石となる。
比例定数削減、中国・四国は狙い撃ちか
さらに、自民、日本維新の会、国民民主党の3党が合意した比例定数削減も、党内政治の火種になりそうだ。
焦点の一つが、中国・四国両ブロックの統合である。現在の定数は中国10、四国6の計16。統合後は13となる。
この地域には、石破茂氏、岸田文雄氏、林芳正氏ら、自民党内で高市政権と距離がある政治家の地盤が集中している。
国民民主党の玉木雄一郎代表がブロック統合を求め、自民党が土壇場で受け入れた背景には、選挙制度改革だけでなく、党内の勢力争いもあるのではないか。
もう一つ見逃せないのが、参院の合区問題との矛盾だ。自民党は憲法改正の論点に合区解消を掲げてきた。鳥取・島根、徳島・高知の合区には、地域の代表を確保できないとの強い反発がある。
参院では地域の声を守るために合区解消を主張しながら、衆院では中国・四国を統合する。地方の事情を軽視していると受け止められれば、地域の反発を招きかねない。
高市は自民党を変えるのか、壊すのか
3つの問題に共通するのは、自民党を支えてきた人々や地域との摩擦だ。
千代田区では地元保守層と党組織が対立し、北海道では農業関係者と対米政策が衝突する。そして中国・四国では、選挙制度改革が地域の代表性と党内の勢力争いに波及する。
さらに、高市氏が保守層の期待をどこまで満たしているのかという問題もある。靖国神社参拝の見送りや保守派の人事をめぐって、不満を抱く支持者がいても不思議ではない。
高市人気が高いからといって、自民党の伝統的な支持基盤まで盤石とは限らない。政権の人気と、党を支えてきた地域や組織の利害は別物だからだ。
高市氏が既存の支持基盤との摩擦を恐れず、自民党の構造を変えるのか。それとも、長年党を支えてきた人々の離反を招くのか。
高市政権の最大の敵は野党なのか。それとも、自民党を支えてきた人々の反発なのか。
その答えを探るうえで、足元で起きている3つの動きは見逃せない。