自民党、日本維新の会、国民民主党の三党が、衆院議員定数削減で合意した。高市政権は国民民主党が訴えてきたガソリン補助金の段階的縮小にも動き出し、三党連立に向けた動きが加速しているように見える。
ところが、早くも不協和音が表面化した。維新の吉村洋文代表が、国民民主党の玉木雄一郎代表を「信用できない」と痛烈に批判したのだ。
三党が政策面で接近する一方、政局の舞台裏では何が起きているのか。
吉村が玉木を「信用できない」と批判
吉村氏は10月30日、静岡朝日テレビの番組で、玉木氏について「言うことが変わりやすい」「正直あんまり信用できない」と発言した。
議員定数削減をめぐり、玉木氏が以前は賛成の姿勢を示していたのに、実際の対応が違ったことを批判した。一方、榛葉賀津也幹事長については「僕は信頼してます」と評価した。
玉木氏には厳しい言葉を浴びせながら、榛葉氏には好意的な姿勢を示す。この対照は興味深い。国民民主党内の分断を図ったのであろう。
吉村氏はなぜ、このタイミングで玉木氏を名指しで批判したのか。
維新は衆院定数削減で45議席の削減を求めてきたが、三党合意では31議席の削減となった。維新にとっては看板政策で一定の成果を得たものの、要求を全面的に実現したわけではない。
しかも、国民民主党が要求した「統一名簿方式」や「中国・四国ブロックの統合」は採用された。国民民主党の存在感は高まるばかりだ。
高市政権が国民民主党との政策協議を深めれば、維新の政権内での存在感が相対的に低下する可能性がある。吉村氏の玉木批判には、こうした状況への警戒感がにじんでいるのではないか。
大阪で自民党が維新に宣戦布告
維新にとって、さらに気がかりなのが自民党の動きだ。
10月31日、自民党大阪府連の会合に出席した西村康稔選対委員長は、来春の統一地方選について「相手は維新ですが、関係ないですからね」「遠慮することはない」と発言した。
大阪は維新の最大の政治基盤である。そこに自民党が対決姿勢を鮮明にしたのだ。
国政では連立を組みながら、地方選挙では議席を奪い合う。自民党は維新に遠慮して勢力拡大を諦めるつもりはない。
さらに、自民党大阪府連は副首都構想でも独自色を打ち出している。維新の政策に相乗りするのではなく、自民党独自の構想として大阪の発展を訴える構えだ。
維新にとっては、自民党との連立によって政策を実現できる一方、地元では自民党が競争相手になるというジレンマがある。
高市の地元・奈良でも維新と対決へ
対立は大阪だけではない。高市総理の地元・奈良でも、自民党と維新の競合が浮上している。
2023年の奈良県知事選では、自民党内の候補者調整がまとまらず、保守分裂選挙となった。高市氏が推した総務省出身の平木省氏と現職の荒井正吾氏が争うなかで、維新公認の山下真氏が「漁夫の利」で当選した。
当時、自民党奈良県連会長だった高市氏にとって、この結果は大きな政治的痛手だった。自民党の分裂によって維新に知事の座を奪われたことは、地元の政治力学を考えるうえで重要な経験となった。
2027年の知事選に向け、維新は山下知事の再選を目指す一方、自民党奈良県連も独自候補の擁立を進めている。
高市氏にとって、奈良は単なる地元ではない。前回の敗北をどう乗り越えるかという政治的な課題も残っている。
高市は維新以外の選択肢を広げるのか
今回の動きをつなぐと、三党連立をめぐる力関係の変化が見えてくる。
高市政権は維新との連立を維持しながら、国民民主党との政策協議も進めている。定数削減では三党が合意し、ガソリン補助金の見直しでも国民民主党の主張と重なる政策が動き始めた。
来年秋の自民党総裁選で再選を目指す高市総理にとって、維新よりも自民党内の声が今や重要だ。その自民党内には維新よりも国民民主党との連携を求める声が強まっている。これは無視できない。
一方、維新は自民党との連立を続けても、大阪や奈良で自民党と議席を争わなければならない。国政でも国民民主党が存在感を増せば、維新の立場は相対的に難しくなる。
吉村氏の玉木批判は、こうした力関係の変化を背景にした牽制と見ることができる。
三党連立は、まだ実現したわけではない。政策合意が進む一方で、各党は次の選挙と政権内での主導権をめぐって、すでに駆け引きを始めている。
高市総理は維新との関係を維持するのか。それとも国民民主党との接近によって、連立の選択肢を広げていくのか。吉村氏の苛立ちは、三党の力関係が変わり始めた兆候だ。