高市政権が発足してまだ1年。来年秋の自民党総裁選までには時間があるが、早くも党内から高市総裁の再選を支持する声が相次いでいる。対抗馬と目される林芳正氏は出馬を明言せず、無投票再選という展開も視野に入ってきた。
注目すべきは、再選支持の動きが麻生太郎副総裁の足元からも出ていることだ。高市再選が既定路線になれば、党内の権力構造はどう変わるのか。無投票再選は、麻生支配の終わりにつながるのか。
萩生田光一幹事長代行は9月20日の記者会見で、「一国の首相が頻繁に代わるのは望ましくない」と述べ、高市氏が再選を目指して出馬すれば「旧安倍派はたぶん行動を共にできる」と語った。これは高市再選支持の口火を切る発言といえる。
小林鷹之政調会長も翌21日、高市政権を引き続き支えていく考えを明らかにした。小林氏は麻生執行部に加わっており、党内での立場を固めながら、将来の主要閣僚入りを狙う可能性もある。
安倍政権で幹事長を務めた二階俊博氏は「安倍晋三の次は安倍晋三」と唱え、安倍氏の総裁3選に道を開いて政権中枢に踏みとどまった。現職総裁が総裁選で敗れた例は、1978年の福田赳夫氏までさかのぼる。現職総裁の再選は党内の大勢を決める大きな力を持つ。
高市氏はこの流れを利用し、党内基盤を強化しようとしているのではないか。
一方、林氏は10月18日のBS番組で、来年の総裁選への出馬について「今あれこれ言うのは時期尚早だ」と述べるにとどめた。林氏には二つの選択肢がある。負けを覚悟して出馬し、ポスト高市の有力候補として存在感を確保するか。あるいは土壇場で出馬を見送り、高市氏の無投票再選を「後押し」するかである。
後者になれば、高市氏は総裁選で麻生氏の支援を必要としなくなる。麻生氏にとって高市再選は望ましいはずだが、再選後の高市氏が麻生氏の意向に従い続けるとは限らない。総裁選を経ずに再選が決まれば、党内の力関係を組み替える余地も生まれる。
その際、鍵を握るのが幹事長人事だ。萩生田氏、武田良太氏、小泉進次郎氏、木原稔官房長官らの名前が浮かぶ。誰を幹事長に据えるかは、高市氏が麻生氏との関係をどう設計するかを映すことになるだろう。
武田氏は林氏を担いで高市氏に対抗する道もあるが、総裁選で敗れれば勢力を失いかねない。石破茂氏も高市・麻生両氏に対抗する立場を強める可能性がある。林氏がどちらと組むのかによって、党内の構図は大きく変わる。
維新との関係も見逃せない。高市氏の再選が固まり、自民党内の基盤が強まれば、維新への依存度は低下する可能性がある。木原氏は、維新が求める連立合意の更新について、高市氏が再選され、維新が連立に引き続き加わる約束ができた段階で行うとの考えを示している。再選後の高市氏が維新との関係をどう扱うかも、政権運営の焦点となる。
高市再選支持の広がりは、単なる人気の反映ではない。党内各勢力が、次の総裁選とその後の人事をにらみながら動き始めた兆候でもある。
無投票再選が実現すれば、高市氏は麻生氏の支援を受けて再選するのではなく、再選そのものを足場に麻生氏から自立する道を探るかもしれない。
高市再選の先に待つのは、安定した長期政権なのか。それとも、麻生支配をめぐる新たな権力闘争なのか。来年の総裁選は、すでに始まっている。