政治を斬る!

簗問題で問う選挙制度改革〜定数削減より先に「比例復活廃止」を!

 選挙区で敗れた候補が、なぜ国会議員になり、さらには大臣にまでなれるのか。

 道路予算をめぐる問題で批判を浴びる簗和夫農水相は、2026年2月の衆院選で栃木3区の小選挙区に敗れた。しかし、比例代表で復活当選し、高市早苗首相に一本釣りされて初入閣を果たした。

 2024年の衆院選では、無所属の渡辺真太朗氏に178票差で辛勝した簗氏。ところが今回は、渡辺氏に4508票差をつけられて敗北した。それでも国会議員の地位を維持し、大臣に抜擢されたのである。

 簗氏への批判が強い背景には、裏金問題だけでなく、比例復活という制度への世論の不満もある。

 高市首相は「私の大事な簗ちゃん」と特別扱いする。しかし、選挙区で有権者の審判を受けた候補が、比例で救済されて大臣になる。この仕組みに違和感を覚える人は少なくないだろう。

 ならば、簗問題を個人攻撃で終わらせず、選挙制度改革につなげるべきではないか。

 まずは比例復活を廃止せよ!

 そもそも比例復活には、歴史的な役割があった。

 かつての中選挙区制では、自民党の候補同士が同じ選挙区で争う「保守分裂」が当たり前だった。一方、野党第一党の社会党は候補者を絞り、現職優先で選挙を戦った。政権交代を目指す二大政党政治とは異なる構造だったのである。

 1990年代に小選挙区制が導入されると、自民党と新進党、民主党などが政権を争う時代が到来した。しかし、当初は野党が弱く、小選挙区で自民党に勝つのは容易ではなかった。そこで比例復活は、前原誠司氏や枝野幸男氏ら野党の若手人材を育てる仕組みとして機能した。

 小選挙区で敗れても、比例で議席を確保する。野党の若手が政治経験を積み、政権交代を目指すための制度だった。

 だが、政治状況は大きく変わった。民主党政権は崩壊し、維新や国民民主党が台頭。公明党の連立離脱などもあり、多党化と連立の時代に突入した。

 かつてのように二大政党政治を育てるという比例復活の歴史的役割は、終わりつつあるのではないか。いまや比例復活は、落選した候補を救済する制度としての側面が目立っている。

 その一方、高市・維新連立政権が掲げる比例定数削減は、臨時国会でも成立の見通しが立たない。

 衆院の定数465のうち、比例代表は176。与党案は比例を45削減し、定数を420にするというものだ。しかし、議席への打撃が大きい野党の反発は強く、自民党内にも積極的に推進する機運が乏しい。

 維新にとっては、連立合意に定数削減を残すこと自体に政局的な意味があるのかもしれない。法案が成立しなくても、国民民主党の連立参加を阻む材料になるからだ。

 しかし、そんな駆け引きに政治改革を委ねていてよいのか。

 定数削減よりも、まず比例復活廃止を!

 簗問題が浮上したいまこそ、各党に決断を迫るべきだ。自民党は比例復活廃止を打ち出せるのか。維新は定数削減だけでなく、比例復活にも切り込むのか。国民民主党や公明党、共産党はどうするのか。

 とりわけ問われるのは、立憲民主党を中心とする旧民主党系の勢力である。比例復活は、かつて野党の人材を育てた制度でもある。だからこそ、その役割が終わったと認め、改革に踏み出す覚悟があるのかが問われる。

 もちろん、比例復活の廃止は各党の議席や候補者戦略を大きく変える。簡単に合意できる話ではない。

 だからこそ、面白いのだ。

 簗問題をめぐって批判を繰り返すだけでは、何も変わらない。世論の怒りを制度改正につなげるチャンスである。

 選挙で負けた簗氏が、なぜ大臣になれるのか。その疑問に政治家たちはどう答えるのか。

 比例復活を廃止するのか、しないのか。各党は逃げずに立場を明らかにせよ。