政治を斬る!

簗農相の「一転謝罪」が映し出す、自民党の予算と人事のリアル

簗和生農林水産相が一転して謝罪した。

発端は、5月に栃木県内の自民党支部会合で語った道路予算をめぐる発言である。簗氏は那須烏山市の道路予算を前年度比64%減、那珂川町を54%減にしたと説明し、「自民議員に頼らないのであれば、私が取ってきた予算をなぜ受注するのか」といった趣旨の発言までしていた。

国土交通省は、簗氏の働きかけによって予算が削減されたとの事実関係を否定している。しかしこれは明らかな建前だろう。長年、自民党政治を取材してきた者として、「予算配分」と「選挙結果」には密接な関係がある。この問題を単なる「失言」で片付けるのは違和感がある。

道路や公共事業の予算配分が、地元政治家の選挙地盤づくりと無縁だった時代などない。政治家が中央省庁に働きかけ、地元の道路や河川、農業基盤などの整備を要望し、それを「実績」として選挙で訴える。予算を取ってくることが国会議員の重要な仕事だった。

もちろん、行政の予算配分には政策上の優先順位や客観的な基準がある。だが、自民党政治の現場では、予算と選挙地盤が複雑に絡み合ってきた。その「表では語りにくい政治の現実」を、簗氏は地元の身内の会合で、あまりにも率直に語ってしまったのである。

しかも栃木3区は保守分裂の激戦区だ。2024年衆院選では簗氏がわずか178票差で渡辺真太朗氏を破った。2026年衆院選では逆に渡辺氏に敗れ、比例復活した。今回の発言が飛び出した背景には、こうした地元の熾烈な政治事情もある。

問題は、ここからである。

10月2日午前の閣議後会見で、簗氏は大臣就任前の一議員としての活動について「回答を控えたい」と繰り返した。ところが午後になると、一転して会見を開き、「表現ぶりが一部、誤解を招くものだった」と釈明。国土交通省に予算の箇所付けを問い合わせ、その結果を地元会合で報告したことは認めた一方、自身の働きかけによって予算が減ったわけではないと説明した。

なぜ、わずか半日で対応が変わったのか。ここに今回の政局の核心がある。

高市早苗首相は今回の内閣改造で、簗氏を初入閣させた。旧安倍派に属し、当選6回、47歳。派閥の大物をそのまま登用するのではなく、各派閥から次世代の議員を「一本釣り」する高市氏の人事を象徴する存在ともいえる。

だからこそ、簗氏の問題は簗氏個人だけの問題では終わらない。高市氏が抜擢した新人閣僚が、就任早々、地元での予算をめぐる発言で炎上したのである。

一方、自民党内では麻生太郎副総裁、萩生田光一幹事長代行ら、今回の人事でも大きな影響力を残したベテランがいる。政権幹部が簗氏に説明と謝罪を促したとされるが、その背後に誰の意向があったのかは明らかになっていない。

もし麻生氏や萩生田氏の意向が働いていたとすれば、単なる火消しではなく、高市氏の「一本釣り人事」をめぐる自民党内の力学として見る必要がある。

10月5日から臨時国会が始まる。簗氏が何を説明し、高市首相から抜擢された村井英樹国対委員長がどう対応するのか。そして高市首相は簗氏を庇い通すのか。

簗氏の「一転謝罪」は、道路予算をめぐる政治のリアルだけでなく、高市政権の人事と自民党内の権力関係まで映し出す騒動になりつつある。