簗和生農林水産相の道路予算問題が、国会の大きな焦点に浮上している。自分を選挙で応援しなかった地元自治体の道路予算を削減したと、自らの手柄のように語った簗氏。発言を撤回し、予算削減を働きかけた事実はないと釈明したが、疑惑は収まらない。
高市早苗首相は簗氏を続投させる構えだ。だが、野党各党の追及は激しさを増している。簗氏を守る高市首相に、最も厳しく迫っているのは誰なのか。各党の対応をたどると、野党再編の行方も見えてくる。
玉木雄一郎が「怒涛の攻め」
今回、ひときわ目立つのが国民民主党の玉木代表だ。
10月8日の衆院代表質問で、玉木氏は簗氏に「なぜ予算をカットしたと、自分の手柄のように語ったのでしょうか」と直撃。「本当に減額を働きかけた事実はないのですか、正直にお答えください」と迫った。
簗氏は発言が不適切だったと認めつつ、減額を求めた事実はないと説明した。
玉木氏はさらに、高市首相の任命責任を追及し、全府省を対象とする調査を要求。首相は任命責任を認めながらも、全府省調査は行わず、適切な予算配分を徹底すると答えた。
玉木氏が追及の手を緩めないのは、国土交通省が問い合わせの記録を残していないと説明していることにも理由がある。
「役人は、メモを取るのが仕事」「それを出せば、一発で真相が分かる」。玉木氏は代表質問後、こう強調した。政治家から問い合わせを受ければ、官僚は記録を残すはずだという自身の経験に基づく主張である。
背景には、国民民主党と高市政権の距離の変化もある。一時は連立入りに前のめりだった玉木氏だが、高市首相は日本維新の会との連立を維持し、国民民主党との距離は広がっている。
「対決より解決」を掲げてきた玉木氏が、政権追及に軸足を移すのか。簗問題は、その試金石でもある。
岡本三成の公明党は変わったのか
10月3日に公明党代表に就任した岡本三成氏も、政府の調査は「あまりにも不十分」と批判した。赤羽一嘉副代表も「同じ国会議員として恥ずかしい」と厳しい姿勢を示している。
中道改革連合への合流が行き詰まり、公明党は独自路線で再出発した。その新体制にとって、簗問題は政権との対決姿勢を示し、党の存在感を取り戻す機会となる。
ただし、公明党には複雑な事情もある。長年、自民党との連立政権で国土交通相のポストを担ってきたからだ。太田昭宏、石井啓一、赤羽一嘉、斉藤鉄夫、中野洋昌と、公明党出身者が相次いで国交相を務めた。
道路予算の配分をめぐって政治の介入を批判するなら、かつて国交行政を担った経験も問われる。公明党の追及は、過去の政権運営との整合性も含めて評価されることになる。
立憲民主党は「更迭」要求
立憲民主党はさらに踏み込んでいる。田名部匡代幹事長は参院代表質問で、高市首相に簗氏の続投が妥当なのかと迫った。
斎藤嘉隆国対委員長は自民党の磯崎仁彦参院国対委員長と会談し、簗氏の早期辞任を要求。説明責任を果たすか、辞任するかしなければ、参院農林水産委員会の審議に応じない考えを伝えた。
ここで注目されるのが、自民党内の力学だ。高市首相に更迭された石井準一前参院幹事長は、立憲民主党と太いパイプを持つ。簗氏の追及で立憲と参院自民党の一部が連携する展開になれば、高市政権にとって新たな火種となる。
国民民主党、公明党、立憲民主党は、簗氏の更迭を共通目標に結束できるのか。それとも、互いに別の政治的思惑を抱え、足並みが乱れるのか。
神谷宗幣と維新にも温度差
参政党の神谷宗幣代表も「情けないというか、他の国の国会議員が見たらどういうふうに日本の政治を判断するか、ということだと思う」とし、自民党に横行する「道路予算への圧力」を追及する姿勢をみせている。
しかし、10月9日の代表質問ではあえて簗問題には触れず、党是である「反グローバリズム」を前面に掲げた。国会で簗氏を追及するかどうかについては「各議員の判断に任せたい」と述べた。
独自路線を掲げる参政党が今後、疑惑追及で既成野党とどこまで協調するかは見どころだ。
一方、日本維新の会では対応が割れている。前共同代表の前原誠司氏は、簗氏について「大臣を辞めるだけでなく、議員辞職に値する」と厳しく批判した。
これに対し、藤田文武共同代表は現時点で更迭を求める考えはないとしながらも、初動の対応が良くなかったと指摘。吉村洋文代表も、簗氏の発言は明らかに不適切だと苦言を呈した。
高市政権を支える維新の内部にも温度差があるのだ。
簗問題は、単なる一閣僚の失言や予算配分の疑惑にとどまらない。高市首相が簗氏を守り続ける一方、野党各党が追及を強めれば、政権との距離をめぐって各党の思惑が交錯する。
簗氏の更迭をめぐる攻防が、野党の結束を生み、新たな政界再編の引き金となるのか。高市首相の「簗ちゃん」をめぐる国会論戦から目が離せない。