高市早苗首相が一転して簗和生農水相を更迭した。これまで「働いて仕事で返せ」と続投を支えてきたが、10月13日の衆院予算委員会では、道路予算カット発言を「ダサい」と切り捨て、進退について「しっかりと考えさせていただく」と表明。さらに、新たに浮上したシャトルバス問題についても「違法なら躊躇しない」と踏み込んだ。
簗大臣は14日夜に辞表を提出した。事実上の更迭である。いったい何が高市首相を変えたのか。
「守る」から「切る」へ
高市首相は当初、道路予算カット発言をめぐって追及される簗氏を擁護してきた。「もう少し説明責任を果たさせてやってください」と、辞任論を抑える構えだった。
ところが、13日の予算委員会で態度が一変した。簗氏の発言を「ダサい」と評し、進退の再検討に言及。夜には簗氏と電話で話し、14日には予算委員会後に面会する意向を示した。
高市首相は、道路予算カット発言をめぐる疑惑について、これまでの擁護姿勢を維持できないと判断したのではないか。
新たなシャトルバス問題が浮上したタイミングも重要だ。私は、高市首相が簗氏を切るための「出口」を見つけた可能性があるとみている。道路予算問題で自らの判断が誤っていたと認めるのではなく、新たな問題を理由に更迭へ踏み切る。そんな政治的な撤退戦が始まったのではないか。
シャトルバスは更迭の決定打か
週刊文春の第二弾報道で浮上したのは、2月の衆院選で、出陣式に参加する支援者をシャトルバスで無料送迎した問題だ。選挙運動費用収支報告書には、バス代23万5400円が計上されていたという。公職選挙法が禁じる有権者への利益供与に当たるのではないか、との疑いが指摘されている。
13日の予算委員会で簗氏は、出陣式会場と臨時駐車場の間の送迎にバスを使用し、スタッフが県選挙管理委員会に事前確認したうえで、会場費の一部として計上したと説明した。会場運営に不可欠であり、利益供与には当たらないとの主張だ。
しかし、県選管側は簗陣営からの問い合わせ記録はないと説明している。事前確認があったのか、仮に問い合わせがあったとしても、それが無料送迎自体を認める回答だったのか。ここは区別して検証する必要がある。
もちろん、現時点で公選法違反が確定したわけではない。シャトルバス問題だけで、ただちに大臣の首が飛ぶとも限らない。
それでも、高市首相は「違法なら躊躇しない」と述べた。道路予算問題で追い詰められた簗氏を更迭するうえで、新たな疑惑が政治的な口実になる可能性はある。シャトルバス問題そのものの重大性だけでなく、高市首相がこれをどう利用するかが政局の焦点だ。
農水省の「お支えチーム」にも批判
簗氏をめぐっては、農水省内に大臣を支えるための「お支えチーム」が内々に作られたとの指摘も出ている。
簗氏は、国会対応や大臣の職務に関係して職員が対応していると説明し、関係者に負担をかけていることを申し訳なく思うと述べた。
大臣の疑惑への対応に省内の職員が動員され、本来の業務に影響が出ているとすれば、問題はさらに広がる。熊本出張時に記者へ「クソみたいな質問をしてくる」と発言したとされる問題でも、簗氏は明確には覚えていないとの説明にとどまっている。
疑惑が次々と浮上するなか、政権が簗氏をかばい続ける政治的コストは高まってきた。
野党の問責、自民党内の更迭論
参院では、立憲民主党、国民民主党、公明党、参政党、日本共産党、いのちの党の野党6党が、簗氏に対する問責決議案の提出を検討することで一致した。問責決議に法的な辞任強制力はないが、参院で与党が過半数を割るなか、政権への圧力となる。
さらに、自民党内からも厳しい声が上がっている。萩生田光一氏は13日、簗氏に国民の懸念を払拭する努力を求めた。オフレコでは「安倍さんや菅さんならもう更迭している」と語ったとされる。
党内にも更迭論が広がっているのなら、高市首相が簗氏を守り続けるのは容易ではない。
簗更迭の先に何があるのか
簗氏が更迭されれば、一連の疑惑は収束するのか。それとも、政権の防波堤が崩れ、ほかの閣僚への追及に波及するのか。
野党側は、閣僚の疑惑追及を足がかりに、定数削減をめぐる日本維新の会との対立や、参院での法案審議でも攻勢を強める可能性がある。公明党と国民民主党の接近が進めば、自民党内の非主流派との連携も政局の新たな変数となる。
高市首相にとって、簗氏を切れば、これまでの擁護姿勢との矛盾を問われる。守り続ければ、疑惑と国会運営の負担が膨らむ。どちらを選んでも傷を負う局面に追い込まれていた。
簗更迭が今後の政局にどんな影響を与えるのか、要注目だ。