政治を斬る!

インボイスを導入しても税収増は2480億円、消費税の税収全体の1%!それでも財務省がインボイスを推進する理由は?これはフリーランスや個人事業主を支配する道具だ!

インボイス制度の導入がいよいよ10月1日に迫ってきた。

フリーランスや個人事業主に対する消費税の課税を強化するこの制度には「弱い者いじめ」との批判が強い。消費税は「事業主の売上」に課税する税のはずなのに(だから零細事業者は免税されてきたのに)、政府は「消費者から預かって納める税金」という誤った印象を流布してインボイス導入を進め、零細事業者からも消費税を取り立てようとしていることにも異論が相次いでいる。

それらの批判については、個人事業主やフリーランス、税理士らの仲間が手弁当で立ち上げた「STOP!インボイス」が詳しく解説している。すでに33万筆以上の反対署名を集めており、9月4日に財務省に提出して緊急記者会見を行う予定だ。

私もフリーのライター・編集者の小泉なつみさんにお声かけいただいて「STOP!インボイス」の活動に協力してきた。財務省への署名提出に向けて、以下のメッセージを送った。

他の方々とはやや違った視点で批判したので、ここで紹介したい。

消費税というと、財務省が財政健全化のために導入を進めているというイメージがあるが、私の見解は違う。

消費税は「社会福祉のための目的税」というのは嘘だ。国庫(税金は財務省の「財布」と考えて良い)に入れば財務省が予算編成で自由に使える。

財務省は自らの「財布」を膨らませて自由に差配できるカネを獲得し、予算配分権によって省益(政財官界への影響力拡大による天下り先の確保等)を広げる。つまり、財務省に従順な政治家や企業、役所に手厚く予算を配分し、財務省に批判的な勢力の予算は削減するという「使い分け」を通じて、財務省の要求(人事や天下り)を受け入れさせていくのだ。

身内の利権のために国民生活を痛める増税を推進しているといっても過言ではない。

インボイスを導入して零細事業者から広く消費税を吸い上げても、それで増える税収は高が知れていて、2480億円程度とみられている。消費税の税収は年間23・4兆円(今年度予算、国税分)だから、インボイス導入で増える税収は消費税の税収全体の1%程度しかない。

世論の猛反対を振り切ってインボイスを導入しても大した税収増にはつながらないのである。

それでも導入にこだわるのは、ふたつの理由があると私はみている。

ひとつは財務省の力を見せつけることだ。とりわけフリーランスには国家権力を批判するジャーナリストも多い。そこへ消費課税を強化し、税務調査で圧力をかける「カード」を握ることもできる。財務省に好意的なフリーランスは大目に見て、批判的なフリーランスは容赦無く税務調査を仕掛けるという「使い分け」を通じて批判を封じることもできるのだ。

もうひとつは、税理士利権の拡大である。零細事業者にとって複雑なインボイス制度を熟知して自力で確定申告を行うのは大変だ。これまで税理士経費を節約してきた事業者も税理士に発注するケースが増えるだろう。新たな課税、新たな税制は税理士業界を潤わせ、財務省から税理士業界への天下りも増えるのだ(そのなかでインボイス制度に反対している税理士の方々の強い信念には敬服するばかりである)。

つまり、インボイス導入は、国家財政のため云々ではなく、財務省が自らの権力と省益を増大させるための「財務省の財務省による財務省のための消費増税」なのだ。

このようなある意味「せこい利権」のために、零細事業者の暮らしが追い詰められること自体が到底許されることではないのだが、弊害はそれにとどまらない。

会社を辞めて独立し、自力で羽ばたこうと思っても、納税でこんなに面倒なことがあるのなら、やめておくかーーそういうムードが広がることがいちばん危険だ。

日本の税制や社会保障制度は会社に所属し、忠実なサラリーマンとして定年まで過ごすほうが圧倒的有利にできている。私は朝日新聞社を辞める際にいろいろ試算したが、この国は独立する人に厳しく、横並びで組織にとどまる人に優しい。個人が羽ばたくのを阻害する風潮が会社組織には根強いのだ。

財務省という組織も同じである。経済活性化とは口ばかりで、実は会社や役所の組織内で文句を言わず、学歴や年齢の序列に逆らわずに働く人々が多い管理統制型社会こそ、財務省エリートたちが望む日本像なのだ。

彼らは黒子として永田町・霞が関に暗躍し、隠然たる政治力を発揮することで大きな顔をしている。だから起業家という存在が基本的に好きではない。東大法学部卒の彼らの学歴に及ばない起業家たちが若くして高額の報酬を得る様子を苦々しく見つめてきたのである。

インボイス制度の推進には、そのような「組織重視」「個人軽視」「内向き統制」の霞が関の空気が色濃く出ている。

問題は彼らエリート官僚のルサンチマンそのものが「個人が羽ばたく時代」の到来を邪魔し、日本経済の活性化を阻んでいることだ。日本経済の30年にわたる低迷を引き起こした経済無策の最大の要因はこのあたりにあると私は感じている。

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