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石破おろしのキーマン3人、高市早苗、萩生田光一、麻生太郎のそれぞれの戦略を検証〜選択的夫婦別姓、対中国外交、日米首脳会談…石破包囲網強まる

自公少数与党が新年度予算案を成立させるため、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党のどの野党の賛成を取りつけるのかが、今国会の当面の焦点である。だがその裏側で、自民党内では予算成立を機に石破おろしを仕掛ける動きが進行してている。

石破おろしの鍵を握るのは、高市早苗、萩生田光一、麻生太郎の3氏だ。

高市氏は選択的夫婦別姓への反対を掲げ、通称使用拡大を法制化を進めることを主張している。主要野党に加えて公明党も選択的夫婦別姓には賛成の立場で、自民党は孤立している。

他方、自民党支持層には選択的夫婦別姓への反発が強い。昨年9月の総裁選で選択的夫婦別姓法案の早期提出を公約に掲げた小泉進次郎氏が失速して党員投票で惨敗したのは記憶に新しい。

石破首相はそもそも選択的夫婦別姓には前向きだったが、党内の空気を踏まえて煮え切らない姿勢を示してきた。だが、少数与党国会で予算案を成立させるためには、主要野党や公明党の意向は無視できず、選択的夫婦別姓論議をいつまでも棚上げしにくい状況だ。

高市氏はそれを逆手に取って反対論を強めている。石破首相が法案提出の方針を打ち出すことを想定し、強硬に反対することが確実な党内右派を引き寄せようと目論んでいるわけだ。

だが、右派・保守派も選択的夫婦別姓では結束できても、経済財政政策では一枚岩ではない。

昨年の総裁選で健闘した小林鷹之氏は自民党税調のインナーに加わり、高市氏ら積極財政派とは一線を画すのではないかと憶測を呼んでいる。

昨年の総裁選で高市氏支持に回った麻生太郎元首相も次はどうでてくるか見通せない。麻生氏と歩調をあわせる茂木敏充前幹事長もポスト石破に意欲を示しており、麻生氏は「誰が勝てるか」を慎重に見極めるだろう。

萩生田氏は昨年の総選挙で非公認とされ、無所属で国会に戻ってきた。石破首相や森山幹事長ら執行部が総選挙終盤に支給した「裏公認料」に激しく反発し、非主流派の立場を鮮明にしている。

安倍派は大量落選し、森喜朗元首相の影響力も低下したものの、萩生田氏は安倍派5人衆では相対的に存在感を維持している。その萩生田氏が反転攻勢の柱に位置付けているのが、石破政権の対中国外交だ。

石破側近の岩屋毅外相は中国人のビザ緩和を表明し、自民党内右派は反発を強めている。萩生田氏らは自民党外交部会に岩屋外相を招聘して追及する構えを見せている。

高市氏が選択的夫婦別姓で右派を束ねることを目指すのに対し、萩生田氏は親中政策への批判で結束を固める狙いと言えるだろう。

麻生氏は石破政権で非主流派に転落した後も「自民党に残った唯一の派閥・麻生派」を基盤に巻き返しを狙っている。民主党から自民党へ移り、二階派に所属していた山口壮元環境相が麻生派入会を表明。派閥解消の動きに逆らって派閥拡大を目指す姿勢だ。

昨年の総裁選で麻生氏は土壇場で派閥内に高市支持を指令したものの、決選投票で石破氏に敗れ、派閥の弱体化を露呈した。とはいえ、再び総裁選になれば麻生派の数の力は無視できず、麻生氏は総裁レースの主導権を握って復権を画策している。

麻生氏は米国のトランプ大統領が就任前に唯一面会した日本の国会議員でもある。石破首相とトランプ大統領の就任前会談が実現しないなか、麻生氏は石破氏にあてつけるかのように安倍昭恵氏とトランプ氏の面会を側面支援して実現させた。2月に予定される日米首脳会談も難航が予想されるなか、その結果を踏まえて石破おろしをいよいよ仕掛けるとの見方がもっぱらだ。

麻生氏は国民民主党の榛葉幹事長とも気脈を通じている。石破首相が103万円の壁の引き上げで国民民主党と決裂すれば、麻生氏は国民民主党を巻き込むかたちで石破おろしを展開する可能性もあるだろう。

国会で繰り広げられる与野党の政策協議の裏側で、石破おろしを画策するこの3人の動きから目が離せない。

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