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米国に遠慮して国連総会の「休戦決議」に棄権した日本政府にガザ攻撃を止める外交力はない〜誰も注目しない上川外相のイスラエル訪問

イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘を受けて、上川陽子外相は11月2日、イスラエルへ向けて羽田空港を飛び立った。報道によると、パレスチナ自治区を訪問するほか、イスラエルのコーヘン外相やパレスチナ自治政府のマリキ外相らと会談し、人道目的の一時的な戦闘休止を働きかけるという。

上川外相は出発に先立ち記者団に「罪のない人々が被害にあっていることに大変心を痛めている」「関係国と意思疎通し、事態の沈静化に向けて外交努力を積極的に続ける」と述べた。

私は上川外相の発言とそれを垂れ流すマスコミ報道にかなり違和感を抱いた。休戦を実現させる本気度がまったく伝わってこないからだ。

国連総会は「休戦決議」を120カ国の賛成で採択している。179カ国の3分の2が賛成したこの決議に、日本政府は棄権した。

その理由は明確である。イスラエルを全面支持する米国が「休戦決議」に反対したからだ。

上川外相は欧米社会との連帯を強調するが、国連総会の現状はイスラエルを支持する欧米のほうが少数派といっていい。

日本は米国の外交方針から逸脱することは絶対にしないーー今や国際政治における常識である。これでは日本が休戦協議を主導する役割を担えるはずがない。

日本はアラブ諸国に原油輸入の9割以上を依存しており、イスラエルとアラブ諸国の紛争に対し、伝統的に中立外交を基本としてきた。今回のハマスの奇襲とイスラエルの大規模な報復攻撃に際しても、岸田首相は当初、ハマスの奇襲を「テロ」とは呼ばず、双方に自制を求めるコメントを発していた。

しかし、米国のバイデン政権がハマスの奇襲をテロと断じてイスラエル全面支持を表明すると、松野博一官房長官も「テロ」と非難して軌道修正し、イスラエル寄りの姿勢をにじませたのである。

世界からみれば日本が米国に逆らえず、対米追従外交を展開しているのは明らかだ。上川外相がイスラエルを訪問したところで米国の外交方針を逸脱することはあり得ず、ほとんど注目されないだろう。

本当に休戦合意に向けて動くつもりなら、国連総会の休戦決議に賛成しているはずだ。ウクライナ戦争同様、日本は米国に同調して当事者の一方に加担し、一方を敵視する国になった。平和外交の看板はすっかり色褪せてしまったのである。

ガザ地区ではイスラエルの空爆が激しさを増し、欧米社会でも批判が広がっている。

ロシア軍がウクライナに侵攻した時、欧米社会には「ウクライナ=正義、ロシア=悪」の善悪二元論が席巻したが、今回はハマスの奇襲を受けたイスラエルの激しい報復攻撃に対して厳しい視線が広がっている。圧倒的な軍事力を持ち、国連決議に反してパレスチナ占領政策を強行してきたイスラエルに対し、欧米社会の世論は決して甘くはない。

日本政府にとってはイスラエルとアラブ諸国の中立的な立場から外交力を発揮して存在感を高める機会となるはずだったが、対米追従を重ねる岸田政権には休戦協議を主導する能力も意思もない。とにかく米国と歩調をあわせることだけが日本外交の基軸となっていることを、今回の上川外相のイスラエル訪問は如実に映し出すのではないだろうか。

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