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河野太郎「脱原発」を封印してでも総裁選出馬を目指す戦略の行方〜マイナンバーカードやワクチン接種で国民人気は凋落、派閥にもとどまり「改革者」から「守旧派」へ

自民党総裁選への出馬に意欲を見せる河野太郎デジタル担当相が7月31日に東海第二原発を視察し、原発再稼働を当面容認する考えを示した。「再生エネルギーだけでは間に合わない」とも述べ、持論の脱原発を封印した格好だ。

河野氏は菅義偉前首相に担がれて前回総裁選に出馬したものの、麻生太郎副総裁が担いだ岸田文雄首相に国会議員票で大きく負け、敗北した。河野氏の独断専行の政治姿勢が党内で嫌われたことに加え、脱原発の持論への警戒感が広がったことが理由と指摘された。

河野氏自身も脱原発の持論が総裁選勝利への足を引っ張っていると認識しているのだろう。脱原発の持論を封印することで河野アレルギーを弱める狙いがあるとみられる。

しかも河野最側近として再生エネルギー政策を主導してきた自民党の秋本真利衆院議員が再生エネ業者からの収賄容疑で逮捕され、脱原発・再生エネルギー推進派は大きく傷ついた。河野氏の軌道修正を後押ししたに違いない。

河野氏は前回総裁選の時は世論調査で国民人気トップだった。それでも党内人気が弱く、総裁選に敗北したのだが、今回はマイナンバーカードやワクチン接種を推進したことへの批判が高まり、国民人気も凋落。石破茂氏や小泉進次郎氏に大きく水をあけられている。

しかも派閥解消の流れの中で、河野氏は麻生派にとどまったため、菅氏は落胆。今回の総裁選は河野氏では勝てないとみて、早々に選択肢から除外している模様だ。

しかし、河野氏は何としても出馬したい意向で、前回総裁選で敵対した派閥親分の麻生氏に接近。とはいえ麻生氏も河野氏を担ぐつもりはないとみられ、出馬にこぎつけられるかどうか不透明なのが現状だ。

河野氏と同様、自民党の異端児とされた小泉純一郎元首相は、持論の郵政民営化の旗を掲げ続けた。2001年総裁選では郵政民営化への反対勢力を「抵抗勢力」と呼び、「自民党をぶっ壊す」と絶叫して世論の支持を引き寄せて圧勝。首相就任後に郵政民営化法案が否決されると、解散総選挙を断行して造反組を除名して刺客を送り、この郵政選挙に圧勝して、こののちの「清和会(安倍派)支配」を確立した。

これに比べ、河野氏は総裁選出馬のために持論の脱原発を封印。派閥からの離脱にも尻込みし、逆に派閥会長の麻生氏にすがって出馬する「古臭い政治家」の姿勢をみせている。その姿は、改革者を演出しつづけた小泉元首相と対照的だ。

小泉元首相が真正の異端児とすれば、河野氏は擬製の異端児といえるかもしれない。

しかしそれでは世論の支持を回復することは不可能であろう。党内の大勢に擦り寄り、脱原発の旗印を引っ込めたことは、政治家・河野太郎の致命傷になるのではないかと私はみている。

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