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消費税をめぐる「悪夢の再演」──野田・枝野“増税同盟”が突きつける立憲分裂と政界再編〜「減税阻止」を大義名分とした大連立へ

「ミスター消費税」こと野田佳彦と、「リベラルの星」枝野幸男が手を結んだ。かつて民主党政権下で消費税増税を主導した二人が、今度は“消費税減税を阻止する”ために再びタッグを組んだのである。

背景にあるのは、トランプ米大統領の「対中関税再強化」宣言による市場の動揺、いわゆる“トランプショック”だ。このショックが日本経済への打撃を懸念させ、野党各党内に「減税論」が一気に広がる火種となった。

立憲民主党内では、食料品の消費税ゼロを掲げる江田憲司らが主導する「減税勉強会」が急拡大し、所属国会議員の3分の1を超える約70人が参加した。もともと支持率低迷に苦しむ立憲にとって、50歳以下の支持率が1~2%台という惨状は危機的だ。国民民主党やれいわ新選組に若年層支持で後れを取り、党内では「減税を公約にすべきだ」との声が日増しに強まっている。

この事態に追い詰められた野田氏を支援する形で名乗りを上げたのが、意外にも元代表の枝野幸男氏である。代表選で野田氏と対立した後、党中枢から外されていた枝野氏は、「ぶれないでください。ぶれなければ支え続けます」と野田氏を励ましたという。野田氏も「大丈夫」と応じ、両者の“再結成”が現実のものとなった。

枝野氏は立憲代表時代、共産・れいわ・社民と野党共闘し、「消費税減税」を掲げて戦っていた。ところが、代表辞任後は「消費税減税は間違いだった」と公言。減税派を「ポピュリスト」と非難し、野田氏に劣らぬ財務省寄りの緊縮財政論者に転向した。

そもそもこの二人、民主党政権下では小沢一郎氏率いる「減税派」と対峙し、財務省主導の増税路線を推進してきた戦友でもある。最終的に民主党はこの“増税vs減税”の対立で分裂し、政権は崩壊した。

いま再び、同じ構図が立憲民主党内で繰り返されようとしている。減税を訴える議員たちが党を割って国民民主党に合流することになれば、立憲は野党第一党の座を失い、参院選にも惨敗しかねない。党の存亡そのものがかかっている。

だが、野田・枝野ラインはあくまで減税には応じない構えだ。なぜここまで頑ななのか。鍵を握るのは“財務省”の存在である。

野田氏も枝野氏も、民主党政権時代から財務省と密接な関係を築き、増税路線を支えてきた。減税派である小沢氏らを排除するうえで、財務省との提携は極めて有効だった。それゆえ、今さら財務省の意向に反することはできない。むしろ、現政権の自民党主流派──石破茂総理、森山裕幹事長、林芳正官房長官らも財務省寄りの増税・緊縮派であることから、“大連立”への地ならしすら始まっている。

つまり、立憲の減税派が離党・分裂し、国民民主党やれいわ新選組と結集するならば、その対抗軸として「財政規律を守る大義名分」のもと、自民党と立憲主流派による“増税同盟”が誕生する可能性がある。

枝野氏がこのタイミングで野田氏に手を差し伸べたのは、そうした政局を見据えた「布石」と考えられる。参院選後ではなく、参院選前に政界再編が勃発するリスクも出てきた今、事態は一刻の猶予も許さない。

野田氏が「財務省への忠誠」を貫くのか。それとも「党内融和」を優先し、減税論を取り込むのか。この選択こそが、参院選の勝敗を左右するだけでなく、次なる政界地図を大きく塗り替える火種となる。

そして、立憲のコア支持層が自民党との大連立をどう受け止めるのかも、大きな分かれ道となる。13年前、民主党を崩壊に追い込んだ“消費税の亡霊”が、今また立憲民主党に蘇りつつある。政界は再び、岐路に立たされている。