れいわ新選組が9月11日投開票の沖縄県宜野湾市議選(定数26)に公認した「プリティ宮城ちえ氏」(63)が、2位の得票数で初当選した。れいわ4人目の地方議員となった。
山本太郎代表は宜野湾市議選について「公認決定から約1ヶ月の短期間で議席獲得となったのは、沖縄のボランティアを始め、全国の支持者が一丸となって支えてくださったこと、プリティちえの本気を受け止めてくださった宜野湾市民の方々の思いに尽きる」と表明。 来春の統一地方選で「多くの地方自治体議員を生み出すべく全力で取り組む」と意欲を示した。
宜野湾市議選のプリティ宮城ちえ氏の当選を受けて、れいわの動きは早かった。9月16日には兵庫県姫路市議選に「やはたオカン」氏の擁立を発表したのだ。
やはたオカン氏は、れいわが今夏の参院選大阪選挙区に大阪で擁立したやはた愛氏の母親である。「やはたオカン」のニックネームで娘の選挙を支え、SNSにも登場して人気を集めた。
私もサメジマタイムス『小川淳也の「妻です」はアウトで、八幡愛の「おかん」はセーフ!? あなたはどう思う?「政治家の家族のタスキ」』で紹介したことがある。娘も演説は上手だが、母も負けてはいない存在感だ。
本名は八幡さゆりさん。姫路で生まれ育った。すでに通称での出馬について姫路市選管とは話し合い済みだという。プリティ宮城ちえ氏に続く注目候補として全国の支援を集めそうだ。
れいわは今夏の参院選で3議席を獲得したが、全国比例票は旗揚げした2019年参院選、2021年衆院選と比べてほぼ横ばいだった。党勢拡大をめざして来春の統一地方選で100人擁立を目標に掲げ、各地での足場固めを進めたい考えだ。
れいわは衆院選や首長選などひとりしか当選できない「小選挙区」で勝利した経験がなく、過半数の支持を得る力は備わっていない。一方で、全国各地に熱心なボランティアチームが出来つつあり、当選枠の多い地方自治体の議員選挙は「熱烈な支持層」を固めるだけで議席確保が有力である。統一地方選挙は党勢拡大の好機だ。
れいわは統一地方選に擁立する候補者を求めて、全国で「れいわ政治塾」を開催している。今夏の参院選に出馬して積極財政の旗振り役となった長谷川ういこ氏を塾長に据え、選挙活動のノウハウやれいわの基本政策を伝える講義を展開してきた。
少数政党ではNHK党が先立って自治体の議員選挙に公認候補を相次いで擁立し、各地で議席を獲得している。統一地方選は全国に薄く支持層が広がる少数政党にとって、党勢拡大の有力なツールといっていい。各地に地方議員が誕生すれば、地元住民との日常的な接点となり、党勢拡大の重要な起点になるだろう。
各地域で「れいわの顔」を託せるような候補者をどれだけそろえて擁立できるか。それがれいわ躍進を左右する大きなポイントである。
私は9月16日夜、東京都調布市でれいわボランティアチームに招待されて講演し、東京22区(調布市・三鷹市など)を地盤とするれいわの櫛渕万里衆院議員とも対談した。
そこで司会役を務めたのが、来春の調布市議選にれいわ公認で出馬することを表明した鈴木ほの香さんだ。れいわが9月5日に発表した、来春の統一地方選挙で東京都内で擁立する4人のうちのひとりである。
鈴木さんは保育士として働き、子育てに不寛容な社会のありように疑問を感じてきた。政治にはまったく無関心だったが、2019年参院選で山本太郎代表の熱意あふれる演説をSNSで知り、「この生きづらい社会は政治で変えることができる」と気づいて、櫛渕氏のもとでボランティア活動をしてきた。「次は私が議会に行く」という決意で出馬を決めたという。
この日出馬会見した4人のうち3人は女性。台東区議会選に挑むふうさわ純子氏は看護師暦30年。足立区議会選に挑む髙橋まゆみ氏は子ども食堂の運営に参加してきた。
れいわが「誰一人置き去りにしない」という政治信条を掲げて舩後靖彦氏や木村英子氏、天畠大輔氏を国政へ送り込んできたことへの共感が、保育士や看護師ら社会福祉に携わる女性たちに広がっていることがうかがえる。ここはれいわの強力な支持基盤に育っていく可能性があるだろう。
自民党や民主党(現立憲民主党)の「女性登用」はキャリア官僚や学者、マスコミ記者ら高学歴のエリート層が目立つ。れいわから出馬する女性たちは生活に根ざしたところから現れてくる。
政治をエリートたちの手から生活者の手へ取り戻す。「無名の当事者」を擁立するれいわの選挙戦略は、この国の政治文化を変えていく可能性を秘めている。