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被害者救済法案の与野党協議から外されたれいわ新選組の提案が見事!これぞ自公立維国5党の談合政治との対立軸だ

統一教会の被害者救済法案は実効性の乏しい「骨抜き」のまま自民、公明、立憲、維新、国民の与野党5党の圧倒的多数の賛成で成立した。

統一教会との歪んだ関係を続けてきた自民党、創価学会への波及を恐れる公明党はもともと同法案に及び腰だった。立憲は自民にすり寄る維新と国民を追いかけるように賛成に転じた。その結果、実に国会の9割以上の賛成で骨抜き法案が成立してしまったのである(『立憲民主党はここまで堕ちた!日本維新の会や国民民主党と「自公の補完勢力」の座を争う醜態』参照)。

主要政党で反対したのは共産党とれいわ新選組だった。

マスコミは自民と立憲の修正協議ばかり報じていたが、そこでクローズアップされた論点はごく一部でしかない。

れいわが「旧統一教会などの被害者救済法案に反対する理由」と題して公表した声明の内容が実に説得力があった。マスコミはまったく報道しないので、SAMEJIMA TIMESで紹介したい。

声明は最初に「私たちは、旧統一教会による被害者を一刻も早く救済することを求めています」という立場を鮮明にしたうえで、法案には「名前と実態が全くあわない致命的な問題があります」と指摘し、以下の3点を挙げている。

(1)すでに生じた被害は、救済できない。
与野党協議では主要争点から外れていた重要な視点である。救済されるのは法律が施行された後の被害に限られ、過去の被害は対象外というのだ。これではたして「被害者救済」と呼べるのか、甚だ疑問である。

(2)これから生じる被害についても、救済はあまりにも限定的。
政府案は当初から「救われる人がほとんどいない法案」と批判されてきた。与野党協議でも主要争点となった部分だ。寄付勧誘の際に自由な意思を抑圧しないことへの「配慮義務」を盛り込んでいるものの「禁止行為」にはしていない。立憲は修正協議で「十分に配慮」という文言が加わったことを評価して賛成に転じたのだが、それでも救済範囲は極めて限定されている。

(3)「法人等」として、あまりにも幅広い対象に「寄附の勧誘」の網(あみ)をかけている。
マスコミではほとんど論じられなかった視点である。法案は規制対象を旧統一教会に限定したものでも、宗教法人に限定したものでもない。NPO、学校法人、企業、政治団体、政党、労働組合など、法人格がなくとも、ほとんど全ての団体が対象となるのだ。
れいわの声明は「あなたが、統一教会と無関係であっても、何らかの組織活動でカンパや寄附を受けた場合、この新法の網の目がかかるということです」と注意喚起している。統一教会問題を機に、まったく関係のないNPO法人なども同様の損害賠償リスクを抱えることになった。この懸念はもっと議論されるべきだっただろう。

れいわの声明は、以上の理由から法案を「中途半端でひどいものになってしまいました」と批判し、「岸田政権に「救済」はできないと言わざるを得ません」と指摘している。そのうえで「では「救済」はいかにしてなされるべきでしょうか」とし、救済策を具体的に提案しているのだ。

れいわの提案内容をみてみよう。

(1)すでに生じた被害の賠償のために、最大の原因者である統一教会と自民党が拠出して、基金等の枠組みを作る。

この提案は説得力がある。声明は「自民党政権は、旧統一教会に対して、2015年に名称変更を許すなど組織延命の便宜を図った疑いがあり、また、組織支援と選挙協力などの相互依存関係も明るみになりました。歴代自民党政権の責任は、重大です」とし、「すでに生じた被害については、国が責任をもって償うべきです。原資は、最大の原因者である統一教会と自民党の拠出金です」と明記。過去の被害は統一教会と自民党の資金負担で賠償することを提案しているのだ。声明は「これは、何も突飛なことではなく、公害や薬害に対して、原因者に拠出させて被害者救済を行う枠組みがあるのと同様に、実現は可能です」とも指摘している。

(2)被害者救済の最前線である「消費生活センター」の体制強化を直ちに行う。

声明によると、悪徳商法や紛争から消費者を助ける消費生活センターは、全国市区町村の約3割以上で設置されておらず、予算は10年前から15%も減少しているという。相談員の8割は非常勤職員だ。被害者救済法の実効性を高めるには最前線の消費生活センターの体制強化が不可欠であるという指摘はもっともだ。法律をつくっても機能しなければ意味がない。

(3)加害の根絶のため、国会に特別委員会を設置し、政治家と旧統一教会との癒着を徹底調査する。

自民党は被害者救済法成立をもって統一教会問題を幕引きしようとしている。立憲民主党は今後も統一協会問題に取り組むとしているが、自民党にすり寄って「骨抜き法案」に賛成した立場で、はたして統一教会と自民党の闇を厳しく追及し続けることができるのか。私は甚だ疑問だ。追及を手控える傾向がじわりと広がり、結果として幕引きに手を貸すことになるのではないか。声明は「癒着の真相は、まだまだ明るみになっていません。その膿を出し切ることが必要です」とし、れいわは被害者や支援者とともに被害の補償と加害の根絶に取り組むと宣言している。骨抜き法案に反対して自民党との対決姿勢を鮮明にしたからこそ、この宣言には説得力があるといえるだろう。

自民党と「骨抜き法案」で手を打った立憲民主党には、以上の提案は絶対にできないと私は思う。

れいわはこれまで国会での法案・議案の採決について、このような声明を発表してその理由を丁寧に説明してきた。ウクライナ戦争でロシアを一方的に非難してウクライナに加担する国会決議に与野党で唯一反対して世論の批判を浴びた時も声明を発表したが、私はその内容もとても説得力があると思った。

れいわはポピュリズムと批判されることもある。しかし、れいわが発表する声明文の数々からは、世論に迎合せず、与野党の馴れ合いに加わらず、国会での法案・議案の賛否について「正しい答え」を誠実に追求する姿勢がひしひしと伝わってくる。ここは高く評価されるべきだろう。世論を見ながら右往左往する自民党や立憲民主党のほうがよほどポピュリズムだ。

山本太郎代表がひとりでれいわを旗揚げしてから3年。国会議員8人の勢力に拡大したが、過去3回の国政選挙の得票は横ばいである。

政党の理念はしっかりしているし、「あるべき政策」を誠実に追求する姿勢もぶれていない。一方で、資金面でも人材面でも政党の体制は脆弱で、党運営も未熟である。組織の支援を受けない手づくりの政党なので止むを得ない面はあるが、公明、維新、国民、共産に肩を並べる中規模政党へ飛躍するには一人前の政党としての体制づくりが不可欠だ。

折りしもれいわ初の代表選がはじまった。民間人から作家の古谷経衡氏が出馬したり、国会議員の大石あきこ氏と櫛渕万里氏がタッグで出馬したり、政党の党首選としては前代未聞の展開をたどっている。

自民党総裁選や民主党代表選をめぐる熾烈な権力闘争を永田町で何度も取材してきた私のような旧来型政治記者には目を剥くことの連続だが、新しい政党のあり方を探る試行錯誤として注目していきたい。

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