政治を斬る!

連合の自民接近を主導した芳野友子会長の続投で野党再編は遠のく〜不満を募らせる傘下の労組はなぜ連合を離脱しないのか?

連合は今年10月に任期満了となる執行部人事で、芳野友子会長を続投させる方向で調整に入ったとマスコミ各社が一斉に報じている。

芳野氏は2021年10月に「女性初の会長」として就任した。当初はトヨタ労組出身者の会長就任が有力視されていたが、トヨタが国内政治と一線を画したのに歩調をあわせてトヨタ労組も連合活動と距離を置く方針に転じため、芳野氏に白羽の矢が立った経緯がある。

芳野氏は当初こそ「女性初」ということで脚光を集めたが、就任後は自民党の麻生太郎副総裁らと会食や会合を繰り返し、与党に急接近。国民民主党の玉木雄一郎代表とも連携して「連合の与党化」を推進した。

21年衆院選と22年参院選でも野党(立憲・国民)支持の大原則を見直して選挙区や候補者によって個別に判断する姿勢に転換。連合の姿勢が「野党分裂」を加速させたといえ、与党圧勝・野党惨敗に大きく「寄与」する形となった。

連合会長の任期は2年、2期4年以上務めることが慣例となっているが、自民党にすり寄る芳野体制の続投には旧社会党系の官公労系労組を中心に不満がくすぶっている。

とはいえ、連合では近年、旧民社党系の大企業系労組が執行部を牛耳り、官公労系の影響力は低下している。立憲民主党も芳野体制の継続に反対しておらず、むしろ芳野体制に国民民主党との仲立ちを期待している。芳野体制の継続は揺らがないだろう。

芳野体制がもう一期続けば、その間に衆参選挙が再び行われる。衆院は芳野体制が任期切れとなる25年秋に任期満了を迎えるし、次の参院選は25年夏である。連合が与党に接近して「野党分裂」状態のまま衆参選挙がもう一度ずつ実施されれば、「自民一強」の政界構図はさらに強固になろう。

その意味で、芳野体制の継続は、大きな政治ニュースである。

連合傘下の労組に加盟している労働者は、日本全体の労働者の1〜2割に過ぎない。多くは大企業の正社員だ。連合の主張は大企業の正社員の賃上げや雇用維持、労働条件の改善に偏っており、より弱い立場にある非正規労働者の処遇は二の次にされがちだ。

それでも連合は「全労働者の代表」を名乗り、政府も連合幹部を審議会のメンバーに入れて「労働者の声を聞いた」というアリバイ作りに利用している。大企業の正社員以外の「労働者の声」は、政権中枢に届いていないのだ。ここに、連合の大きな罪があると私は思う。

連合執行部が大企業系労組に支配されている限り、「与党接近・大企業重視」の姿勢が変わることはない。最大の問題は、各労組が連合傘下にとどまり、連合を「労組のリーダー」として容認し、結果として「与党接近・大企業重視」の路線に加担してしまっていることにある。

背景には、多くの組合員の組合費で支えられている労組の現状を維持することに甘んじている各労組幹部の既得権がある。連合から離脱して独自の活動を始めれば、労働界における現在の地位も資金力も不安定化することは避けられない。だからこそ、与党接近・大企業重視の芳野体制に不満を抱きつつも、離脱に踏み切れず、文句をいいながら追従しているのである。

これではいつまで立っても労組は変わらない。その結果、労組に依存して選挙活動をしている立憲や国民も現状維持が続く。ここに野党の閉塞感の最大の要因がある。

連合の解体は、野党再編を進める起爆剤となりうる。芳野体制に不満を抱く各労組がまずは連合を飛び出すことを私は期待している。だが、その望みはなかなか薄いだろう。

むしろ「連合は大企業と自民党の味方」であると再認識し、「連合傘下の労組もそれを容認している」とあきらめ、既存の労組とは一線を画するところから、新たな野党再編のうねりが湧き起こるほうが現実的だ。

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