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維新は、敵か、味方か。立憲民主党の泉代表は自らの考えを表明すべし!

野党第一党の立憲民主党が2月14日、共産党とれいわ新選組を外し、日本維新の会と国民民主党と国会対策について協議した。この枠組みの会談を定例化していくとも報じられた。

共産党は維新を「自公の補完勢力」と位置付けており、「共産を外し、維新を野党として扱う形になれば、野党の立場が根本から問われる」(小池晃書記局長)と猛反発。これまで共産と決別を迫る連合に追従する立憲に辛抱強く連携を呼びかけてきたが、今回の露骨な「共産外し」には堪忍袋の緒が切れて当然だろう。

れいわの大石あきこ政審会長も「”ペテン師”の維新に国民民主がつき、その国民民主に立憲民主がつき…」と述べた昨年末の自らのインタビュー記事を改めてツイート。「誰一人見捨てない政治」を掲げるれいわは、弱肉強食の新自由主義を掲げる維新を「自民よりひどい」と批判して反維新の立場を鮮明にしており、維新と連携する立憲とは手を切るほかない。

野党共闘の支持層からは立憲の「維新すり寄り」に失望が広がった。ツイッター上では「#立憲民主党は維新と組むな」「#維新と組むなら立民は金輪際応援しません」というハッシュタグに乗って立憲批判が拡散した。

立憲の泉健太代表は当初静観していたが、2月15日午後、野党支持層からの鳴り止まない批判に背中を押されるように「我が党の国会対応に問題があった」「今朝、幹事長と国対委員長に是正を指示した」とツイッターで発表。立憲民主党は国会で野党各党を代表して与党と交渉する立場にあるとし、「共産党を除外することも、維新と組むことも、考えておりません」と強調して火消しに躍起になっている。

しかし、泉代表は連合や国民民主党の意向に従い、昨年秋の衆院選で合意した共産との「野党共闘」を終了させる考えを表明している。立憲の菅直人元首相が維新や橋下徹氏について「ヒットラーを思い起こす」と批判して維新から抗議を受けた際も「個人的な発言」として菅氏と一線を画し、維新への配慮をみせた。こうした経緯から、泉代表はそもそも野党共闘支持層から疑念の目を向けられており、このツイートだけでは不信感を払拭できそうにない。

そもそも今回の混乱を招いた根本原因は、野党第一党の座を奪う姿勢を鮮明にしている維新を「自公与党と対抗する野党の仲間」と考えて共闘するのか、「自公の補完勢力」と考えて敵対していくのか、立憲の「維新観」が定まっていないことである。

立憲の政党支持率が維新に追い抜かれ、野党第一党としての求心力が大きく低下するなか、立憲には維新にすり寄る「維新派」と、連合べったりの「連合派」と、共産やれいわとの共闘を重視する「野党共闘派」が混在している。今回の「立憲、維新、国民民主」の枠組みを主導した馬淵澄夫国対委員長は維新との連携に前向きだ。泉代表が今回の国会対応を誤りと認めて撤回する一方、引き続き馬淵氏を国対委員長に据えるならば、「泉代表も維新との連携に前向きなのでは?」との疑念は残るだろう。

野党第一党の立憲が低迷するなかで、永田町では野党再編を画策する動きが始まっている。連合に近い国民民主党は維新や小池百合子東京都知事へ接近し「小池知事+連合+維新」を軸とした「旧希望の党」型の野党再選に期待する声がある。公明党が自民党との相互推薦を見送ることを受け、公明党を巻き込んだ「旧新進党」型の野党再編を目論む者もいる。そのような立場からすれば、「立憲・共産・社民・れいわ」の野党共闘の枠組みは障害物にすぎず、一刻も早く解消しておきたい。

この文脈で泉代表のツイートを読み込むと、「国会対応に問題があった」ことは認めながらも、立憲が野党第一党としてどのような政党の枠組みで自民党政権と対抗していこうとしているのか、参院選でどの政党と共闘していくのか、相変わらずあいまいにしていることがわかる。あくまでも「国会対応」について「共産党を除外」することも「維新と組む」ことも考えていないと言っているだけであって、「維新を自公補完勢力と考えて闘うのか、野党の仲間として手を組むのか」や「共産党との共闘を参院選で続けるのか」については、何も語っていない。これでは混乱の根本原因は決して取り除けない。

私が今回の混乱で失望したのは、2月14日の「立憲・維新・国民」の国会対応をめぐる会談が報じられた後、ネット上で「維新との連携」や「共産外し」に批判が噴出したにもかかわらず、泉代表や西村智奈美幹事長、逢坂誠二代表代行、小川淳也政調会長の執行部が一切の発信をせず、静観したことである。その様子は菅氏の「ヒットラー発言」に対して維新が抗議してきたのに対して立憲執行部が静観を続けたのと瓜二つだった。この対応は維新が敵か味方かを決めきれずに彷徨う立憲の現状を映し出しているといっていい。

さらに驚いたことは、政治的に未熟な泉・西村体制の下で「共産外し・維新すり寄り」という政党戦略の大転換がなし崩し的に進行していることに対し、党内からほとんど異論が出てこないことである。

立憲民主創設者の枝野幸男氏は衆院選惨敗で引責辞任に追い込まれ、身動きがとれない状態だ。枝野最側近の福山哲郎幹事長はインターネットメディアCLPに対する不透明な資金提供問題で批判され、今夏の参院選(京都選挙区)で勝ち残ることで頭が一杯。立憲当初メンバーの辻元清美氏は衆院選で落選し、参院選比例区からの出馬でそれどころではない。共産との共闘を主導した安住淳・前国対委員長は枝野氏らとともに執行部を離れた後は沈黙状態だ。

共産やれいわとのパイプを持つ小沢一郎氏や、党内で影響力を高めつつあったベテランの中村喜四郎氏は、小選挙区で落選し、存在感が薄れた。野田佳彦元首相や岡田克也元外相ら党重鎮の動きも鈍く、「連合追従・共産外し」「維新へのすり寄り」に異議を唱えることなく傍観しているようにみえる。

ツイッターで維新との全面対決を打ち出して久しぶりに注目を集めた菅直人元首相も、国会対策をめぐる「維新へのすり寄り」には沈黙している。菅氏のヒットラー発言に対し、馬淵国対委員長が批判的な立場をとった経緯もあり、「現執行部への口出しは控えたい」と考えたのだろうか。このような「身内への遠慮」こそ、立憲凋落の最大の要因であろう。

菅氏は今こそ泉代表に対し「維新との対決」を迫るべきである。泉氏が拒絶するなら、立憲を飛び出して野党再編を仕掛ける覚悟を示してほしい。「維新との闘い」は不退転の決意で宣言したのではないのか。

今回の国会対応の混乱について、原口一博氏らごく一部を除き、その他の立憲議員たちも「静観」を決め込んでいたようだ。「執行部批判を口にすれば足を引っ張っていると批判される」ことを恐れているのだろうか。野党第一党がこのような内向きの姿勢では、政権与党の不正など追及できるはずがない。それが泉代表が掲げる「提案型野党」の実像なのか。

泉代表が勝利した昨年の立憲代表選は、泉、逢坂誠二、小川淳也、西村智奈美4氏が「政治家を志した動機」を語り合う学級会のような選挙戦に終始し、衆院選の敗因や野党共闘のあり方をめぐる論争はまったく深まらなかった。未熟な代表選で泉代表をリーダーに選出したツケがいま、なし崩し的に「共産外し・維新すり寄り」が進行するというかたちで回ってきていると私は思う。

議論されなかった「政権交代への道筋」〜書生論に終始し、想定通りに終わった立憲民主党代表選

泉代表は野党第一党のリーダーとして、今夏の参院選にむけてどのような枠組みで自民党と対決していくのか、明確なビジョンを示すべきである。それをあいまいにしたままでは、党内の「連合派」「維新派」「野党共闘派」がそれぞれ勝手にうごめき、野党第一党の遠心力は加速し、与党に対する野党の戦線は参院選を前に崩壊するだろう。

立憲民主党が最初に決断すべきは、自民党や経済界に接近している連合からの自立である。連合に選挙で依存している限り、政党としての基軸はいつまでも定まらない。

連合が「自民党・経済界」に対抗して「野党・労働界」の勢力を結集させた二大政党政治の枠組みは崩壊した。日本における連合と二大政党政治の歴史を振り返り、同じく二大政党政治が揺らぐ英米と比較しながら、今後の野党の行方を展望する論考をプレジデントオンラインに寄稿したので、ぜひご覧いただきたい。

立憲民主党の埋没と、維新・れいわの台頭による野党再編の行方については、以下のYouTube動画をどうぞ。

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