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山本太郎、参院選出馬会見を読み解く〜「増税、改憲、戦争」の大政翼賛政治に抗うれいわ新選組の闘い

れいわ新選組の山本太郎代表が4月15日、衆院議員を辞職し、参院選(6月22日告示、7月10日投開票の予定)に出馬することを表明した(記者会見全文はこちら)。

当選確率が高い比例区ではなく、少数政党としては落選リスクの高い選挙区からあえて立候補し、他の与野党の「指定席」をもぎ取りに行くという。

山本氏が参院選に転じる狙いを率直に語った記者会見だった。私の印象に残った言葉を切り抜き、解説してみたい。

まずは山本氏の参院選に対する現状認識から。

この選挙は恐らく自民党は大きく票を減らす、議席を減らすという結果にはならないだろうという風に見込んでいます。一方で野党側ですけれども、大きく勝つということが難しい状況であるという風に見ています。つまり今の状態が継続するであろうと。自民党・公明党の多数と、そして与党側の顔を被った維新のような政党が伸びていく。そういう状況になったとしたら、その後の3年間の空白期間は非常に危険なものになり得る、そういう認識です。

野党第一党の立憲民主党は支持率低迷が続き、野党のリーダーとしての存在感がまったくない。泉健太代表の知名度もなかなか上がらないままだ。

日本維新の会は立憲の支持率を上回り、野党第一党を奪うことを参院選の目標に掲げている。「打倒・自公政権」よりも「打倒・立憲」を優先しているのだ。

国民民主党は新年度当初予算案に賛成し、与党入りへなりふり構わず邁進しているようにみえる。立憲と国民の双方を支持してきた連合も参院選ではどの政党も支持しない方針を打ち出し、自公政権へ急接近している。

共産党は昨年の衆院選で進めた立憲との野党共闘を続ける姿勢だが、立憲には「共産との共闘が失敗だった」との声が根強く、両党の関係はぎくしゃくしたままだ。

要するに、野党はバラバラで戦線が崩壊し、勝てそうにないのだ。このままでは投票率は上がらず、自民党は圧勝する。そのうえに自公の補完勢力の維新まで議席を伸ばせば、国会は一色に染まる。自公政権は安定し、次の国政選挙は衆参の任期満了を迎える2025年まで3年間はないだろう。この「空白の3年間」は与党のやりたい放題で、極めて危険であるーーと山本氏は言うのである。

では、この3年間に具体的に何が起きるのか。山本氏は次のように言う。

恐らく消費税の増税であったりとか、雇用の破壊が加速したりとか、そればかりでなくグローバル企業にしかプラスにならない貿易協定の拡大であったりとか。そればかりでなく、憲法の改悪はもちろんのこと他にも今の状況が続けば好戦的な外交は継続されると思います。その中でエスカレートしていくことも考えられます。最悪の事態としては戦争の当事者になり得るようなことも、当事国になり得るようなこともあり得るかもしれない

消費税増税、非正規雇用のさらなる拡大、貿易のさらなる自由化、そして自衛隊の明記や緊急事態条項の創設を柱とする改憲…。そればかりではない。ウクライナ戦争を機に自民党内では核兵器や敵基地攻撃能力の保有、防衛費の大幅増額など国防力強化の大合唱が起きている。それらが次々に実現し、中国、ロシア、韓国、北朝鮮などの近隣諸国への好戦的外交が強まり、東アジアの軍事的緊張が高まって、日本が戦争当事者になるという最悪の事態も起こりうると危機感を募らせているのだ。

山本氏の危機感はウクライナ戦争後の「ウクライナ=正義、ロシア=悪」の善悪二元論の高まりやロシアの立場を説明するだけで「ロシアの味方をするのか」というバッシングが吹き荒れる風潮からしてあながち過剰なものとはいえない。

山本氏の危機感は続く。

選挙が行われない3年間、黄金の期間というものの間に恐らく野党側も、国会全体も変質していくと考えます。(中略)そこで何かしら抗っても仕方がないので、自分たちの政策を一歩でも前に進めるとか、少し色をつけてもらおうということで、恐らく与党側にすり寄るという行為。最悪の場合には、大政翼賛状態になる可能性もある。(中略)国会の空気に飲まれずに、茶番に付き合わないという姿勢のややこしい人たちを最大化する必要がある。その中で私自身が衆議院議員としての身分を(わきに)置いてですね、次の(参議院)選挙でしっかりと議席を増やしていくことが必要なんだろうという思いで辞職をすることにしました。(中略)これから行われる危険性に対して大きく警鐘を鳴らせるような、暴走を少しでも止められるような、ブレーキになり得るような勢力を拡大する必要がある。

戦争当事国であるウクライナに一方的に加担する国会決議をれいわを除く与野党の全会一致で可決したことや、国民総動員令を出し国民に戦争への参加を強要するゼレンスキー大統領の国会演説をれいわを除く与野党がスタンディングオベーションで称賛した光景を目の当たりにすると、大日本帝国時代に国会が与党一色に染まった「大政翼賛政治」が復活するのではないかという山本氏の危機感は極めてリアルなものに思える。

そのなかで、国会決議に唯一反対し、ゼレンスキー氏の演説も唯一称賛しなかった「国会の空気に飲まれないややこしい人たち」であるれいわ新選組の仲間をできるだけ多く増やす必要がある。山本氏はそのために衆院議員を辞職して目前に迫る参院選に出馬し、れいわの大幅議席増を狙うと言うのである。

れいわは現在、衆院3人、参院2人の弱小政党だ。国会では与野党から相手にされていない。

15分の質問時間を野党第一党が私たちに譲るという行為さえも認められなかった。はっきり言えば意図的に私たちを干すという行動が衆議院の中で行われていたということです。(中略)次期参院選でれいわの議席が3つ増えて、もし5議席になった場合、本会議で代表質問の権利が手に入る。(中略)衆議院議員という身分で私たち3人の小さな会派は結局、干されてる状態。もちろんその中でも抗っているということはありますけれども。(中略)しっかりとした体制を参議院で作り、衆議院を援護射撃できるようにするという思いがあります。その中のひとつに今、法案提出があり、他にも予算委員会、そういった数々の権利をもぎ取りに行くんだ、もぎ取るしかないんです。

何よりも、何が必要かってことですけど、私たちが中規模の政党に一刻も早くなる必要がある。そうでなければ他党に対してしっかりと話をするってことにならないです。数が少な過ぎて舐められてますから。それしょうがない。弱肉強食ですから、そういう世界ですから、だからこそ、この選挙で私たちは議席を増やしていくってことが必要なんであろうと

山本氏のいら立ちは、自民圧勝が確実視される参院選が迫っているのに、一向に危機感が伝わってこない立憲民主党など野党にも向かっている。

危機感無さ過ぎないか」ってことなんですよ。「焦ってるか?」ってことなんですね。この状況、今、参議院選挙を目の前にして、岸田さんが総理になり、参院選を目の前にして、今、この国会、通常国会において審議されるものって、ほとんど対決法案がないじゃないですか。(中略)これは波静かなまま選挙に行きたい。マイナスの印象を与えずに次の選挙をしっかりと勝つためですよね。

 今、私たちが置かれている世界、この日本という国は、見た目には外で起こっている戦争などに目をやられてるけれども、もう国内大変なことなってるよって。内戦ですよ、とっくの昔に。持つ者と持たざる者と。この状態に対してしっかり危機感を持って次の3年でどれだけのことをやられるのかという想像力を政治が持ってるかってことですよ。ずいぶん波静かじゃないですか? 国会の中。政党が危機感を持ってるかってことですよ、「戦う気あんのか」って。「権力奪取する気あるか」ってことですよ

このあたりの発言には、野党第一党の立憲民主党をすっかり見限った山本氏の本音がにじむ。本来は格差を拡大させ、弱い立場の人々のくらしをますます苦しくさせた自公政権を倒し、政権を奪い取る先頭に立つべき立憲民主党から、その気迫や覚悟がさっぱり伝わってこないことにかなりのフラストレーションをためこんでいるのだろう。

それにしても、たった半年で衆院議員を辞職して参院選に挑むのは「捨て身」の戦法である。しかも知名度の高い山本氏なら当選確率が高い比例区ではなく、山本氏の地盤があり当選人数も多い東京選挙区でもなく、まだれいわが候補者擁立を発表していない選挙区(神奈川、兵庫、埼玉、北海道などが取り沙汰されている)から立候補するというのである。落選するリスクも十分にあるだろう。

山本氏はその動機を次のように説明している。これぞ、先頭に立って闘うリーダーという姿だ。

嫌ですよ。僕だって。議員バッジ、外すの。国会議員であることとないことで発言権、変わりますもん。居心地悪いわけじゃないですよ、忙しいけど。国会議員やり甲斐あるし。バッジ外さないままでいろんな発言をしていきながらってことも考えられるけど、それじゃもう間に合わないよって。もう目の前に3年、選挙が行われないという可能性が最大限にある

落選のリスク、もちろんあります。リスクを避け続けることによって、国会を停滞させた国会議員や政党は数多くあるんじゃないですか。自分の身だけ守れればいいわけでしょ。ポジションだけ守れればいいわけでしょ。捨て身の国会議員いる? この局面には「捨て身」になってもらわなきゃ困るんです。これは皆さんに議員辞職しろと促してるわけじゃない。国会の中の戦い方としては「捨て身」で言論で殴りにいく、戦いにいくってことを、言論だけで無理なんだったら、当然、体張ってでもってことですよね。

比例では出ません。比例で出ても、れいわ新選組に集まる票のうち100万票を私が食うだけでしょ。選挙区で出ますよ。選挙区で議席をもぎ取りにいく。で、どこの選挙区かって? 今は言いません。たぶんどこの選挙区に行っても迷惑がられますよ。このまま波静かに選挙終わって指定席が決まってるようなところを、私は崩しに行きたい。

れいわが旗揚げした3年前の参院選当時は「れいわ新選組」の知名度は低く、「山本太郎」の名前を投票用紙に書いてもらえるように比例区に立った。しかし衆参の国政選挙を通じて「れいわ」の名前がかなり浸透した以上、山本氏自身が比例区に出馬することによる比例票の押し上げ効果は限られている。ならば与野党が分け合ってきた複数区に殴り込んで、既存政党の「指定席」を一つでももぎ取りにいくというわけだ。

今回の選挙は「なんとか3議席を獲得しまして」みたいな小さな目標のためじゃない。3議席だったらバッジ外さずにやる方法を考えますよ。そうじゃない。やっぱり最大限やるしかない。(中略)大きく議席を動かせるだけの訴えを、この数ヶ月、いま何が必要かというような訴えを、しっかりとしていく必要があるということです。

すごい覚悟である。れいわの大幅議席増をめざして自分自身が激戦の選挙区に殴り込み、全国にれいわ旋風を波及させ、「国会で無視されない」中規模政党に一気に躍進することを狙うというのである。

記者会見では「衆院議員辞職は、衆院選で投票した有権者への裏切りではないか」との質問も出たが、それには以下のように答えた。

山本太郎を国会に入れたらひと安心」なんて考えてる人は、おそらく私たちの支持者の中にはなかなかいないと思いますね。そんなことで変わるわけないんだから。そんなことだったら、どっかの大きなグループ入って1人で議員を続けてますよ。「何のために旗揚げしたの?」ってことをご理解いただいた上で投票していただいてることを見れば、衆議院で比例で「れいわ」と書いてくださった方々への裏切りだという話にはならないと思います。

このままでも、当然、議員の任期を全うしながら声を上げることは可能ですよ。でもその声の大きさだけで、その3年間の空白期間、そこに抗うことが可能かといったら、私、そんな柔な話じゃないと思ってんですよ。だとするならば、全体的な力を拡大するしかない。声を大きくするしかない

山本氏は参院選の「野党共闘」には一線を画す姿勢も鮮明にした。昨年の衆院選で立憲民主党に梯子を外されて譲歩するしかなかった「失敗」は二度と繰り返さないという決意であろう。

複数人区は仁義なき戦いであるってのはもう皆さんご存じの通りだと思います。そんな綺麗事ではなく、もう全党がそれぞれの動きとして複数人区には手を挙げる権利、当然あるし、実際そういうような流れになってますね。なので、私自身ここだと決めたところには、もう立たせていただくしかない。衆議院選挙の時のような忖度はしません

参院選はあと3ヶ月に迫っている。

野党は自公政権に対する「争点」を失い、野党の戦線は崩壊し、日本社会には政治へのあきらめムードが広がり、このままでは参院選は低投票率で自民圧勝という毎度のパターンを繰り返すことが確実視されている。野党は絶望的な状況に陥っているのだ。

参院選の野党共闘は絶望的に。「改憲勢力の3分の2阻止」の旗印も怪しくなってきた

本来ならば、このような局面を打開する責任は野党第一党の立憲民主党にある。しかし立憲は無為無策で局面を動かす気迫も熱意も感じられない。

そこへ登場したのがれいわの山本代表だった。やはりこの政治家には日本社会の閉塞感を打ち破る圧倒的な突破力がある。今の日本政界には彼の破壊力に肩を並べる政治家はいない。現在の議席数に限らず、山本氏が野党のリーダーとしての存在感を増しつつあるのは動かし難い事実であろう。いまや自公政権が最も恐れる政治家ではないか。

立憲をはじめ野党議員たちはつまらないメンツを捨て、はやく山本氏のカリスマ性を認め、山本氏を軸とする政界再編に動いたらどうか。さもなくば自公与党にいつまでも互角に対抗できないのではないだろうか。

■以下は「山本太郎出馬会見の読み解き」のYouTubeバージョンです。ぜひご覧ください。

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