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渋谷区「枯れた樹木189本伐採」→地元住民の依頼で調査した専門家「枯れて伐採が必要なのは2本」→区は伐採計画見直しへ〜連載『有栖川宮記念公園の伐採を追う』(4)

東京都渋谷区が玉川上水の緑道にある樹木189本の伐採計画を地元住民の反対で見直すことになった。

渋谷区は当初「枯れている樹木を伐採する」としていたが、地元住民たちが環境植栽学の専門家である藤井英二郎・千葉大名誉教授に相談して調査してもらったところ、枯れて伐採が必要なのは2本しかないことが判明。長谷部健区長は9月7日の住民向け説明会で「倒伏などの危険性があるかをしっかり見て、残せる木は残したい」と方針展開を表明したという。

樹木が枯れていると判定した渋谷区の調査は、いったい何だったのか。

緑道の再整備で「邪魔」となる樹木を伐採するために「倒木の恐れがある」という調査結果をでっちあげたのかーーそんな疑念が浮かんでくる事態だ。

そうだとすれば、店舗前の街路樹に除草剤を巻いて枯らした疑いがもたれているビッグモーターとさして変わらないではないか。

東京新聞記事によると、渋谷区は2019年9〜10月と翌年9月に樹木医3人に緑道沿いの全樹木1235本の調査を依頼し、189本に根が土の中で絡まるように伸びる「巻き根」や木の腐食を招く可能性があるキノコなどがあるため不健全との報告を受けた。

渋谷区はこれを受けて倒木の危険があると判断し、これまでに30本を伐採。緑道の遊具や縁石は老朽化が進んでおり、農園や遊び場、広場などを再整備する計画だという。

周辺住民たちは「子どもや高齢者らの憩いの場で木陰が必要」と反対し、文京区の文化財保護審議会委員などを務める千葉大の藤井名誉教授に相談。藤井氏が今年6月に現場を視察すると、枯れて伐採が必要とみられるのは何と2本のサクラだけだったのだ。

藤井名誉教授は東京新聞の取材に「巻き根による倒伏(木が倒れること)はまずない」「切られたケヤキの切り株も健康で、伐採は不要だった可能性が高い」と指摘し、「緑道は地域住民を支えてきた天然のクーラーで生物の回廊。温暖化が進む今、次世代に残す必要がある」とコメントしている。

渋谷区公園課は「区の調査から数年経過しており、住民からも『サクラを残して』などと要望がある」といて再調査の実施を決めた。

東京新聞は、伐採に反対してきた「玉川上水緑道利用者の会」の高尾典子さんが、健康とみられる樹木を伐採しようとしていたことを疑問視し、「住民の多くは伐採計画を知らなかった。再調査には住民が納得できる専門家を呼んでほしい」と求めていることを伝えている。

これぞ地域社会に根ざした記事といえるだろう。

渋谷区は、189本の伐採を決めた経緯を再検証し、公表しなければならない。行政への信頼が崩壊する事態である。責任者を処分するなどして明確なケジメをつけない限り、信頼回復は不可能だ。

私も散歩コースである東京都港区の有栖川宮記念公園の樹木が地元住民に十分な説明がないまま伐採されたことに疑問を感じ、港区を取材して住民説明会の開催を求めている。この経緯についてはこれまで3回の連載記事で紹介してきた。

港区は当初は腰が重かったが、明治神宮外苑の再開発問題で樹木伐採に反対する世論が広がり、危機感を強めたのだろう。有栖川宮記念公園の伐採も中断し、11月に住民説明会を開催すると私に約束した。日程が決まり次第、港区広報とホームページで事前に公表するとしている。

樹木伐採の事前周知が不足していたと港区は認めた!私は住民説明会をやり直し、それまで工事を凍結するよう求めた〜連載『有栖川宮記念公園の伐採を追う』(3)

渋谷区の方針転換も、明治神宮外苑の樹木伐採に反対する運動が広がりをみせていることが影響しているに違いない。ユネスコの諮問機関・イコモスが「世界の公園の歴史においても例のない文化的資産」だとして再開発の中止を求める警告の文書を、東京都や三井不動産などの開発事業者に送り、反対運動は勢いづいている。

当初は反対運動に冷淡だった東京都の小池百合子知事も、樹木伐採に慎重な姿勢を見せ始めた。来年夏に予定される東京都知事選を意識しているに違いない。

玉川上水の樹木伐採に待ったをかけた渋谷区の住民の皆さんも、それを伝えた東京新聞も「good job」だ。

私も港区で樹木伐採に反対していく。読者の皆さんもそれぞれの地域で声をあげてほしい。明治神宮外苑の反対運動が全国に広がれば、私たちの社会はもっと過ごしやすくなるはずだ。

東京都港区「伐採隠し」の住民説明会!有栖川宮公園の道路整備で開催告知したが「樹木伐採」に触れず 11/21と11/23に区民以外の皆様もぜひ参加を!〜連載『有栖川宮記念公園の伐採を追う』(5)

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