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樹木伐採の事前周知が不足していたと港区は認めた!私は住民説明会をやり直し、それまで工事を凍結するよう求めた〜連載『有栖川宮記念公園の伐採を追う』(3)

東京の明治神宮外苑再開発に伴う大量の樹木伐採に抗議運動が広がっている。

私も東京都の意見募集(パブリックコメント)に対して、①都民の文化遺産である樹木の伐採に反対、②伐採の是非について来年夏の都知事選で都民の民意を問うべき、③都知事選まで伐採は1年凍結ーーという主張を送ったことはすでに当欄で紹介した。

明治神宮外苑の樹木伐採を1年凍結し、来夏の都知事選で再開発の可否を決めよう!私もパブリックコメントに意見を寄せました

私は一方で、散歩コースである有栖川宮記念公園(東京・港区)の樹木伐採も取材し、その進展を当欄で同時進行的に紹介してきた。今回はその3回目(過去2回は以下)。5月18日に港区まちづくり課に二度目の対面取材をした結果報告だ。

坂本龍一の遺志を継げ!百年以上かけて守り続けた貴重な樹々を切らないで〜最後の訴えを黙殺した伐採女帝小池百合子はあなたの身近でも樹木を切り倒している!新連載『有栖川宮記念公園の伐採を追う』(1)

昭和21年(77年前)の都市計画のままに樹木を切り倒していく東京都と港区の時代錯誤〜『有栖川宮記念公園の伐採を追う』(2)

まずはこれまでの経緯を振り返ろう。

東京都港区の有栖川宮記念公園をわきを通る道路の拡幅計画(9m→15m)は、都心が焼け野原になった終戦直後の1946年に戦災復興院が策定した都市計画に盛り込まれた。この計画はその後、1998年にわずかに修正されただけで、現在までの77年間、ほぼそのままの形で踏襲されてきた。

東京都も港区も終戦直後につくられた都内の都市計画のレールにそのまま乗って都市開発を進め、毎年着実に予算を獲得して各所の工事を発注してきた。道路・都市開発予算が既得権益化して延々と工事が続いてきたといえるだろう。役所の前例踏襲主義の典型である。

今回の工事(有栖川宮記念公園のわきの道路280メートル区間の道幅を15メートルに拡幅する工事)は2016年に東京都が事業認可し、施行期間は2022年3月までとされた。ところが、無電柱化工事などに想定以上の時間がかかることが判明し、港区は2022年1月、東京都に「事業計画変更認可申請書」を提出。「認可期間内に整備を完了することが困難な状況」として、施行期間を2029年3月まで延長することを求めた。

東京都は22年3月、この事業変更を認可。これを受けて有栖川宮記念公園内の樹木伐採を含む道路拡幅工事が動き出したのである。

22年8月には公園近くの区立施設で説明会が2回開かれた。22年12月には施工業者が決定。これを受けて23年2月1日には改めて同じ施設で説明会が開かれた。港区はこれで必要な事前手続きを終えたとして23年2月20日から樹木の大量伐採に踏み切ったのである。

私は前回取材で港区と交渉し、情報公開請求をすることなく、有栖川宮記念公園の樹木伐採に至る経緯を記した行政文書を大量に入手した。このプロセスは前回記事を参照してほしい。それら文書を精査し、二度目の取材では以下の点を問題視して港区の見解を問うた。

① 3度の説明会開催にあたり、港区は公園に隣接する周囲1500戸にチラシを配布して事前周知しただけで、区広報やホームページで事前に案内しなかった。その結果、3度の説明会への出席者はいずれも20人程度にとどまり、多くの区民や公園を憩いの場として利用してきた人々が気づかないまま、自分たちの意見を主張する機会もないまま、大量の樹木が伐採されてしまったことは、行政の進め方として欠陥があったというほかない。

② 3度の説明会で話し合われた内容の大半は、工事に伴う渋滞や騒音の対策など、近隣住民に与える工事の影響に関するものだった。そもそも「区民共有の文化遺産・環境遺産である樹木の伐採」について区民の幅広い意見を聞くという姿勢が港区には欠けていた。

③ 2月1日の説明会で出席者から「工事が始まったら樹木の伐採について反響がありそうだ」という意見が出たことが行政文書の記録に残っている。港区は、事前に樹木伐採計画が広く知られれば反対運動が起きることを予測しながら、説明会開催を十分に周知せず、近隣の20人程度の声を聞いただけで樹木伐採を強行したことになる。これは極めて悪質というほかない。

これに対し、港区麻布地区総合支所の傳法谷大樹・まちづくり課長は「工事の影響を受ける住民へ周知という視点で説明会案内チラシの配布範囲を決めてしまった。振り返ると、もうすこし丁寧に広く説明すべきだった。周知の仕方には改善点がある」と答えた。

住民説明会当時に課長を務めていた大久保光正前課長は、説明会を幅広く周知しなかった理由について「工事をスケジュール通りに進めなければならないという認識があった」と述べ、事前周知や説明会のあり方に問題があったことを認めた。

そこで、私は以下の提案をした。

① 区広報やホームページで広く周知して住民説明会をやり直す。ほとんどの区民が知らないうちに大量の樹木が伐採されてしまったことは残念だが、これから伐採される予定の樹木もある。住民説明会を開いて港区がこれまでの進め方が不適切だったことを認めて謝罪したうえ、今後の進め方について改めて丁寧に説明する。

② 意見募集(バブリックコメント)を実施する。有栖川宮記念公園内には都立中央図書館があり、区民以外の利用者も多いので、区民に限らず意見を募る。さらに区内の公園整備、樹木伐採、再開発などについて幅広く意見を募る。

③ 上記の住民説明会やパブリックコメントが終了するまで樹木伐採は凍結する。

この提案の狙いは、多くの区民や公園利用者が知らないまま樹木伐採を断行したことについて、まずは港区が直接謝罪し、そのうえで区民の意見に十分に耳を傾けたうえで今後の進め方を決めるよう求めることにある。そのプレセスを経るまで工事の凍結を迫っていることが、この提案の核心だ。なし崩し的に事業を進めることは許さない。いったん事業を止め、立ち止まって再検討させることが、政策を転換させるには効果的である。

港区の傳法谷課長は区役所内で十分に検討した上、6月中に回答すると約束した。

私の取材経験では、いったん動き出した工事を凍結するには副区長レベルの判断が必要だ。明治神宮外苑の再開発に伴う樹木伐採に世論の関心が高まり、政治問題化しつつある今、区長も無関心ではいられまい。

最終的には選挙で区民に選ばれた武井雅昭区長に政治判断を迫らなければならない。まちづくり課への取材はいわば前哨戦である。

まずは6月の回答を待とう。次回はその報告を予定している。

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