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高齢化時代の少数派「若い世代」の声を政治に届けるための秘策〜二大政党ではなく少数政党に投票を!

政治に声が届かない。若い世代でそう感じている人は多いだろう。

とくに日本は世界有数のスピードで高齢化が進んでいる。高齢世代が増え続ける中で若い世代は「少数派」だ。

政党は「多数派」の高齢世代に耳を傾けるばかり。医療、介護、年金といった社会保障は選挙の大きな争点になっても、教育格差や非正規労働といった若い世代にとって切実な問題はいつも後回し。ワクチン接種をはじめとするコロナ対策にしても、政治家から聞こえてくるのは高齢者の視点が圧倒的に多い。

投票に行っても何も変わらないーー若い世代にはそうあきらめている人が少なくないだろう。

それは的を得た心配だ。与党も野党も「多数派」を味方につけなければ、選挙で過半数を獲得して政権を取ることはできない。どうしても「多数派」の高齢世代の支持を引き寄せるための政策に偏りがちになる。これは動かしがたい事実である。

けれども、あきらめてはいけない。「少数派」である若い世代の声を政治に反映させる「秘策」がある。きょうはそれを提案しよう。

本稿は世代間対立をあおることを目的としたものではない。ただし「少数派」である若い世代の声が政治に反映されにくいのは事実である。

その現実を誤魔化さず、真正面から受け止め、若い世代に「突破口」を提示することで、政治に参加し、投票所へ足を運ぶメリットを知ってもらいたいという思いを込めて書き進める。

政治に「少数派」の声を届ける秘策を考えるにあたって、まずは選挙のしくみを理解することが必要だ。

今回の衆院選は全国289選挙区でそれぞれ一人が当選する「小選挙区」(289議席)と、全国11ブロックごとに政党が得票数に応じて議席を得る「比例代表」(176議席)がある。計465議席を争う選挙だ。

有権者からみれば、候補者の個人名を投票する「選挙区」と、政党名を投票する「比例代表」の2票を持っている。この「2票」をうまく使い分けて投票することが大切である。

小選挙区は一人しか当選できないため、基本的には現在の政権を担う自民・公明の「与党」と、現在の政権を支持しない「野党」の一騎打ちとなる。

今回は野党第一党の立憲民主党をはじめ共産党、社民党、れいわ新選組の野党4党が小選挙区の7割以上で統一候補を擁立し、「与野党対決」の構図が強まった。465議席のうち、過半数を取った方が勝ちだ(与党の小選挙区候補の大多数は自民党、野党の小選挙区候補の大多数は立憲民主党である)。

与党が過半数を取れば、岸田文雄・自民党総裁が率いる「岸田政権」が続行し、野党が過半数をとれば枝野幸男・立憲民主党代表が率いる「枝野政権」が誕生する。

与党第一党(自民党)と野党第一党(立憲民主党)が政権をかけて戦うしくみを「二大政党制」という。二大政党はそれぞれ単独で過半数を制して「単独政権」を誕生させるのが理想だ。圧倒的な支持を国民から受ければ単独政権は可能である。実際、自民党は1955年に結成されて以降、1993年の衆院選で敗北して野党に転落するまで「単独政権」をほぼ続けてきた。

しかし、その後の日本政界は「連立政権」時代に突入する。単独で過半数を制するほど強力な政党が存在しなくなり、複数の政党が選挙で協力し、政権をともに担う政治が始まったのだ。

自民党は1999年以降、公明党と連立政権をつくってきた(2009年〜2012年の民主党政権時代をのぞく)。自公両党は国政選挙で協力し、過半数を維持してきたのである。

その自公連立政権に野党4党が協力して挑むのが今回の衆院選である。

以上、選挙のしくみを確認したうえで、いよいよ「秘策」に移ろう。

はじめに注意しなければならないのは、与党のリーダーである自民党も、野党のリーダーである立憲民主党も、過半数を制するため「多数派」の支持を得ることに必死であるということだ。

冒頭に記したとおり、いまの日本の「多数派」は高齢世代である。なにしろ人口が多い。しかも高齢世代ほど投票率も高い。二大政党は「多数派」である高齢世代の支持を引き寄せるために競い合う。その結果、重点公約はどうしても高齢世代に関心の高い医療・介護・年金などの社会保障に偏る。

もちろん、若い世代の声を無視しているわけではない。だが、若い世代と高齢世代の利害が対立した場合、やはり「多数派」である高齢世代の声は無視できないのだ。

例えば、大学までの教育無償化と、医療費の自己負担軽減という二つの政策について、限られた財源のなかでどちらを優先して行うかという問題に直面したとしよう。二大政党はどちらも高齢世代が望む「医療費の自己負担軽減」を優先しがちだ。多数派を軽視したら選挙で過半数を得られないからである。

つまり、二大政党のどちらかを選ぶという「二者択一」を続けている限り、「少数派」である若い世代の声はつねに後回しにされてしまう宿命にあるのだ。

若い世代の声を政治に届けるための「秘策」として私が提案したいのは、二大政党のどちらにも投票しないという「第三の道」である。棄権をすすめているのではない。二大政党ではなく、第三党以下の少数政党を支持することをすすめているのだ。

日本の政治は連立時代に入っている。少数政党は自民党あるいは立憲民主党と「連立政権」を組むことで自らの政策を実現させることを目指す。連立政権を作るにあたって、あるいは、選挙協力を結ぶにあたって、少数政党は「これだけは!」という「こだわりの政策」を実現することを要求するのだ。自民党や立憲民主党はそれを受け入れない限り、過半数を得ることができないのであれば、譲歩するしかない。

ここでいう「こだわりの政策」とは、例えば、ジェンダー・LGBT問題、地球環境問題、原発問題、貧困問題、非正規労働問題、外国人の人権問題、障害者問題、待機児童問題…なんでもいい。ひとつひとつの政策を自民党や立憲民主党が「最優先課題」として掲げてくれる可能性は極めて低い。

しかし、少数政党ならば話は別だ。少数政党は「オリジナル」を重視し、その「こだわりの政策」を重点公約に掲げてくれる可能性が二大政党よりもはるかに高い。そして、その少数政党が「連立政権」に加われば、二大政党が連立協議を通じて「少数派の声」を受け入れる可能性が出てくるのである。

そう、「秘策」とは、自民党や立憲民主党ではなく「少数政党」にアプローチすることだ。

これが連立政権というものである。この連立政権のしくみを利用すればいい。「少数派」の声を政治に届けるための強力なツールが、連立政権の鍵を握る「少数政党」なのだ。

世界各地でこのような連立政治はすでに実現している。わかりやすいのが、9月26日に総選挙があったドイツである。

得票結果は ①社会民主党(SPD)25.7% ② キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)24.1% ③ 緑の党 14.8% ④ 自由民主党 (FDP)11.5% ⑤ ドイツのための選択肢(AfD)10.3% ⑥ 左翼党 4.9% だった。今後の連立交渉で有力視されるのは「社会民主党、緑の党、自由民主党」か「キリスト教民主・社会同盟、緑の党、自由民主党」の組み合わせである。

ドイツでは中道左派の社会民主党と中道右派のキリスト教民主・社会同盟が二大政党である。しかしどちらも単独で過半数を制する力はなく、これまではメルケル首相のもとで二大政党が手を結ぶ「大連立」政権が続いてきた。

しかし、今回は二大政党のうち第3党の緑の党や第4党の自由民主党との連立合意を成功させたほうが首相の座をつかむという「連立相手の争奪戦」が始まっている。二大政党が第3党、第4党を引っ張り合うというわけだ。

緑の党は地球温暖化対策を最優先にする政党である。逆に自由民主党は経済発展を最優先にする政党である。この連立交渉は極めて難しい「大人の協議」となろう。それを経て、緑の党や自由民主党の政策は採用され、実現するかもしれない。

ここで注目すべきは、今回のドイツ総選挙で、70歳以上の約7割は二大政党のどちらかに投票した一方で、若者の間では「第1党は緑の党、第2党は自由民主党」だったことだ。ドイツの若い世代は二大政党を敬遠し、緑の党や自由民主党という「少数政党」を支持することで、連立協議を通じて自分たちの声を政治に反映させようとしたといえる。

詳しくは以下の記事を参照してほしい。

若い世代は二大政党から離れる!ドイツ総選挙から学ぶ「多数党による連立政治」〜山本太郎の東京8区騒動を教訓に

これを今の日本にあてはめるとどうなるか。

少数政党のうち、全国的な組織を持つ老舗政党である公明党と共産党は、高齢世代の支持者が多い。若い世代の声を受け入れる余地はあるが、むしろ「こだわりの政策」を重点公約に掲げてくれるとしたら、新興勢力のほうが可能性が高いだろう。

私のオススメはれいわ新選組である。2019年参院選で結党してからまだ2年。現時点で国会議員は参院にふたりしかいない(難病患者の舩後靖彦氏と重度障害者の木村英子氏)。山本代表は「何があっても心配するな そんな国をあなたと作りたい」というシンプルなメッセージを掲げ、社会的弱者を徹底的に救うための大胆な財政政策を掲げている。

欧州各地で影響力を拡大している「緑の党」が中道左派の「社会民主党」より鮮明な主張を掲げているとすれば、れいわ新選組は立憲民主党より鮮明な主張を掲げているといえ、今後、日本政界における「緑の党」の位置を占める可能性がある。いまのうちに先買いして「こだわりの政策」を持ち込むには打って付けの政党だ。

社民党も狙い目である。前身の日本社会党はかつては野党第一党だった。しかし1990年代の政界再編を経て民主党に野党第一党の座を奪われ衰退。支持基盤であった労組もいまや立憲民主党の支持に流れ、衆院解散前の時点で国会議員ふたり(福島瑞穂参院議員と照屋寛徳衆院議員)にまで縮小した。福島党首を中心に「ジェンダー平等」をメインに売り出す少数政党として再起を目指している。

社民党は新興勢力ではないが、ここまで弱体化した以上、逆に「こだわりの政策」を持ち込むチャンスである。社民党が「こだわりの政策」を重点公約に掲げ、連立政権に入って実現させる確率は、自民党や立憲民主党がそれを重点政策として受け入れ実現させてくれる確率よりも高いかもしれない。

日本政界でドイツの自由民主党と重なるのは、維新だ。野党が自公政権が進めた規制緩和などの経済政策を「格差を拡大させた新自由主義」と批判するのに対し、維新は「規制緩和が足りなかった」としてさらに推進することを主張している。

立憲民主党の主張をより鮮明にしたのがれいわ新選組とすれば、維新は自民党の主張をより鮮明にした新興勢力といえるだろう。自公与党の岸田政権が「新自由主義からの転換」を掲げた結果、今回の衆院選では新自由主義を掲げる維新が自民党支持層の一部を取り込んで躍進することが予想されている。

以上、本日の本題をまとめると、「少数派」である若い世代の声を政治に反映させる秘策は、「多数派」に寄りがちな二大政党ではなく、「オリジナル」を追求する少数政党を支持し、自分たちの声を受け入れさせ、少数政党の連立政権入りを通じて政策を実現させることだ。

二者択一の二大政党制は本来、多様性と相容れない。二大政党は「多数派」の声を重視するため、ひとりひとりの声は埋もれてしまう。ひとりひとりの多様な声を反映させるには、多党制による連立政治が好ましい。多様性を重視する立場からいえば、二大政党いずれかの「単独政権」を阻止し、少数政党を躍進させ、「連立政権」を誕生させるほうがよい。

小選挙区には二大政党の候補者しか立候補していないケースが多い。しかし、比例代表はたくさんの政党から自由に選べる。2票のうち1票は少数政党へ。それが若い世代をはじめ「少数派」の声を政治に反映させる近道である。

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