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リベラル直撃!“CLPショック”〜この新興メディアをこのまま消滅させて良いのか? サメタイ読者からの真摯な問いかけ

立憲民主党から「番組制作費」名目で立ち上げ資金約1500万円の提供を受けていたことが明らかとなり、インターネットメディア「Choose Life Project」(CLP)の佐治洋・共同代表が陳謝して辞任を表明した。リベラル言論界で存在感を増していたCLPは一転して「存亡の危機」に立っている。

SAMEJIMA TIMESでは津田大介氏ら出演者有志がこの問題を告発したことを受けて『津田大介氏らCLP出演者有志からCLPへの抗議文を読み解く〜テレビ局や新聞社とどこが違うのか?』、佐治氏が経緯を公表したことを受けて『「CLPの生みの親は立憲民主党だった」という衝撃の事実』を公開した。

二つの記事を踏まえ、私の見解を改めて要約すれば以下のようになる。

①テレビ局や新聞社も報道とは別に政府や政党から様々な事業や広告掲載を受注し対価を得ている。しかも受注額など取引詳細を公表していない。大手マスコミはほんとうに政府や政党から影響を受けずに報道しているのか。「政治とメディア」の関係には不透明な部分が多く、課題が山積している。

②CLPが報道番組とは別に立憲民主党から「広報動画」制作などを受注して資金提供を受けていたとすれば、全国紙が横並びで東京五輪スポンサーになり、自民党の選挙広告を国政選挙の投開票日に掲載し、読売新聞が大阪府と包括連携協定を結んだことなどと比較して、CLPだけがとりたてて批判されるのはバランスを欠く。「政治とメディア」の癒着構造全体のなかでこの問題をとらえるべきだ。

③しかしCLPの佐治氏や立憲民主党幹事長だった福山哲郎氏の経緯説明により、CLPが自立的に経営できるまでの間、立憲民主党から広告代理店や制作会社を経由し、番組制作一般に対して約1500万円を提供されたことが判明した。これは単に「報道とは別の事業を受注していた」というレベルを超え、立憲民主党から立ち上げ資金の大部分を供与されていたことになる。CLPの「生みの親」は立憲民主党であったというほかない。突出した大口の資金提供者である立憲民主党の意向を無視し、主体的に報道番組を制作することができたのか、大いに疑問である。

④CLPの報道内容が結果として立憲民主党を利するものであったか否かによらず、立憲民主党の資金で立ち上げた事実を伏せながら「公共メディア」を標榜して「中立的な報道機関」であると出演者やサポーターを信じ込ませていたとすれば背信行為と言わざるを得ない。CLPは立憲民主党から大口の立ち上げ資金を得たことを少なくとも出演者やサポーターに説明したうえで協力を得る必要があった。

これに対し、賛否両論がたくさん寄せられた。そのなかでもCLPを一方的に批判することへの違和感を記したコメントは、とくに考えさせられる内容であった。

きょうはそのなかから二つのコメントを紹介したい。

まずはCLPマンスリーサポーターとして月1000円を提供しているosarusanのコメント(要旨)である。CLPは「公共メディア」を標榜していたものの、当初から編集方針が「不偏不党」でないことは明白で、立憲民主党から資金提供を受けていたとしても「背信行為」とまで言えるのか。番組内容は極めてまっとうであり、CLPのようなメディアが消滅していいとは思えないーーという真摯な戸惑いが率直に吐露されている。ジャーナリズム精神を失って国家権力にすり寄るテレビ新聞など既存メディアに代わって登場した新興メディアの芽を摘んで良いのかという疑問であろう。

この話を最初に耳にしてからどうも腑に落ちません。これを批判する人々が一方的に正しく、CLPが一方的に間違っているのか。CLPは「公共メディア」を標榜していましたが、発信内容が不偏不党でないことは、当初から番組を見てきた者として確信を持って証言できます。CLPは最初から自民党に批判的であることを隠していませんでした。

資金の出し手が政党だったから良くないのか。仮に個人の大金持ちが資金を出していたら良かったのか。その個人の大金持ちが顕著な政治的傾向を持っていたとしたら、なおさら明示すべきなのか。

もう1つ、資金の出どころが政党だったにせよ、番組はいかがわしいものだったのか。抗議をした人々も司会者などとして何十回もかかわってきたわけで、私が気づいた限りでは、事実を捻じ曲げることは皆無でした。その点は右翼系メディアとは大きく異なると思います。カネの出どころがすべての問題とは思えません。

何をどう考えたらよいかがわかりません。CLPのようなメディアがきれいさっぱりなくなってほしいとは決して思えません。

次は京都大学名誉教授の谷誠さんからのコメント(要旨)である。リベラル勢力は現実社会が「渡世上の常識」で動いていることに目をつむって「正論」を論じることに終始し、敗北を重ねてきた。その結果、既得権を握る支配階層が国家権力を握り続け、社会の不平等や貧富の格差は拡大するばかりである。新しいリベラル系メディアとして挑戦してきたCLPを解散に追い込むだけで良いのか。タフな「渡世上の常識」を持って権力と対峙することを期待するーーという提言であろう。

テレビを所有していることを根拠に受信料を徴収しているNHKと異なり、ネットメディアはアクセスしなければよく、有料か無料かにかかわらず、公平中立である必要はありません。例えば選挙の際、すべての政党に対して質問する義務はなく、メディアの主体的な考え方に基づいて取材した結果をネットで流せばよいと思います。

CLPの問題は、立憲民主党から設立経費を得ていたことを隠していたことにあります。しかし、その間違いを公表して謝罪した後、これからどうするべきかは、柔軟に多角的に議論すべきです。

現実社会は「汚れ仕事で世の中が回っている。正論を言っちゃあ何も進まない」という渡世上の常識の中で動いています。その結果、苦境に陥る人が生じ、将来世代の負担が増幅しています。それが現実です。批判勢力は渡世上の常識を嫌い、正論を論じやすい傾向があります。こうなると結局、渡世上の常識が勝ち、批判勢力は何の成果も得られないーーこれは先の戦争でも、大学紛争でも経験したことです。

私はこれをきっかけに、批判勢力がタフな渡世上の常識を持って、権力と向き合うことを期待しています。 

どちらも胸に響く真摯な「反論」でした。お二人をはじめ、コメントを寄せていただいた多くの方々に御礼もうしあげます。お二人のコメントを紹介し、それに答えるユーチューブ動画を制作し、近く公開する予定です。


私も小さなメディアを立ち上げた身として、CLP問題は他人事とは思えません。

SAMEJIMA TIMESは、くらし向きに余裕のない方を含めできるだけ多くの人々に記事を読んでもらうことを願って、全文を無料公開しています。特定の政党や企業、個人に依存するような大口の資金提供はありません。規模拡大を目指して資金集めに追われるとジャーナリズムのあるべき姿から離れる恐れがあると考え、私一人で立ち上げ、私一人で運営しています。筆者同盟の皆さまには手弁当で参加いただいています。

そのぶん資金力に乏しく、発信力はまだまだ力弱く、運営上も至らない面があるかと思いますが、私自身が誰からの制約も受けずに完全フリーの立場で自由に主体的に日々の執筆や編集に集中するためには「たった一人で運営するメディア」として、私自身が執筆する記事や編集方針に共感いただける読者ひとりひとりの自発的なご厚意に支えられる仕組みが現時点において現実的な選択肢であると考えています。

メディアを取り巻く状況は急速な技術革新や経済社会の変化で激動しています。これからも時代の変革に対応しつつ、自立した個人やメディアと緩やかなネットワークで連携した新しいジャーナリズムのかたちを追求していく覚悟です。

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