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内閣改造前夜のYouTubeライブ配信に失敗…視聴者に励まされ、怯えながら改造当日、翌日の二夜連続でライブ配信した顛末記

鮫島タイムスがYouTubeに本格進出して1年半。登録者数は5万人を超え、それぞれの動画の再生回数も安定して数万回に達し、多い時は10万回を超えるようになった。

政治をわかりやすく伝える動画へのニーズが急速に広がっていると実感している。

今回の内閣改造・自民党役員人事は、いつものように収録動画を配信するのではなく、最新情報を織り交ぜながらリアルタイムで解説する「ライブ配信」を行うことにした。

内閣改造前夜の9月12日に人事の意味合いを先取りして解説し、内閣改造当夜の13日に解散・総選挙の時期など今後の政局を展望する「二夜連続のライブ配信」を予告していた。

YouTubeのライブ配信には「落とし穴」がいくつもあり、配信トラブルはしばしば起きる。

けれども私たちがライブ配信を行うのは初めてではなかった。昨年夏の参院選で挑戦し、成功していたのだ。今回は1年ぶりだったが、前回は問題なく終わっていたので、きっと大丈夫だろうとたかをくくっていた。

ところが、9月12日午後9時の配信予定時刻の直前になってシステムの異常に気づいた。原因不明の不具合に我が家は大混乱に陥った。

鮫島タイムスのYouTubeには早くも数百人が訪れ、配信開始を待っている。ああ、どうしよう…。

開始時刻になっても配信システムは作動しなかった。

創業以来の大失態である。(いや、鮫島タイムスのウェブサイトがサーバー切り替えに伴う不具合で丸一日ダウンし、「乗っ取られた」という情報がネット上を駆け巡ったこともあったか…通信技術は取材執筆よりはるかに難しい…)。

動画制作から配信まで、鮫島タイムスは一切の業務を外部発注せず、すべて自力で行っている。スタジオや事務所も借りず、撮影から配信まですべて自宅で行っている。

残念ながら動画制作や配信を外部発注する経営基盤を築くには程遠いし、それ以上にすべて自前で制作するほうが細部までこだわったコンテンツをつくれると考えているからだ。

おかげで都内にある手狭な自宅マンションには、撮影機材や照明器具、配信機器がひしめき合っている。住まいなのか、スタジオなのか、判然としない光景である。

完全なる「家内制手工業」だ。

本番開始前に我が家を襲った突然のシステム混乱に、私たちは為すすべがなかった。夜中の9時に専門家に助けを求めるわけにもいかない。

ああ、朝日新聞記者時代は楽だった。通信の専門家、編集の専門家、広報の専門家…巨大新聞社は縦割り分業制が徹底され、私は取材執筆に専念すれば良かった。それなりに波乱万丈の会社員人生を送ってきたが、それでも組織に守られ、ここまでの重圧を感じたことはなかった。独立して世の中の自営業者・個人事業主の皆様の奮闘ぶりが身にしみてわかった。(だからインボイス制度には絶対反対だ!)

チャットで配信開始の遅れを伝えても大勢の人々が離れず、待機し、励ましの言葉を投げ返してくれる。申し訳ない。そして、ありがたい。涙が出る思いだった。

私たちは9時半まで原因究明と復旧に努めたが、もはやこれ以上、大勢の方々をお待たせするわけにはいかないと判断し、12日の配信は中止すると発表した。

私たちはしばし呆然としていた。それから夜を徹して原因を探った。

一年前は成功したのに、なぜ今回は失敗したのか。この一年で変わったことは何か…。そうだ!我が家はWi-Fi環境を強化するために新しい設備を導入していたのだ!

どうやらWi-Fiの新設備に対応してライブ配信システムの設定を変えていなかったことが原因のようだ。新しい設定にしたところ、ライブ配信が始まったではないか。すでに予告時間から数時間が流れていた。

これで明日は配信できるに違いない。しかし本当に大丈夫か。また失敗したら目も当てられない。せっかく集まってくれた人々に申し訳ない。もう誰も集まってくれなくなるかもしれない…。

我が家は異常な緊張感のなかで内閣改造の1日を過ごした。午後9時の配信予告時間が迫るにつれ、緊張感はピークに達した。あらゆる事態を想定し、何が起きても今夜は絶対に配信する覚悟だった。

27年間の朝日新聞記者生活でも修羅場はたくさんあったが、そのときは大勢の仲間が周りにいた。やはり会社という組織は心強い。今は私たち二人でこの事態を乗り切らなければならない。

13日午後9時。前夜を超える人々が配信前から駆けつけてくれた。これほどうれしいことはないのだが、緊張感が高まっていく。

ライブ配信が無事に始まった時、私はこれから何を語るかよりも、とにかく無事に開始できた安堵感に包まれていた。

あとは「内閣改造」について頭に浮かんだ解説をひたすら1時間しゃべった。いつもの講演や動画に比べて余裕のない語り口だったかもしれない。あまりに私が一方的に語るので、終了後にチャットを確認すると「これ、本当にライブなの?」という疑問の声も書き込まれていた。「お水、飲んで!」と繰り返すチャットには、胸が熱くなった。(ごめんなさい、この夜はライブ中にチャットを見る余裕がありませんでした…)

それでも「面白かった」「よくわかった」とのお声をたくさんいただいた。日本経済新聞の英文メディアNIKKEI Asiaは、上川陽子外相起用の裏側について私が解説した内容を記事で紹介した。それなりに充実した解説をお届けできたと思う。

翌日13日夜は少し冷静さを取り戻して「衆院解散」をテーマに解説できた。

初回の大失態にもかかわらず、大勢の人々がライブ配信に二夜連続で駆けつけてくれ、強く励まされた。ジャーナリストにとって、小さなメディアにとって、やはり記事を読み、動画を見てくれる皆様の存在こそ、最大の応援団であると実感したのだった。

テレビ局や新聞社でこのような大失態を演じたら始末書ものだし、処分も免れない。鮫島タイムスはそれがないかわりに全責任を一身に背負う。だからこそ、失敗を恐れず攻め続けられる。これが小さなメディアの強みだ。

失敗を恐れて守りに入るのではなく、失敗を恐れず攻めに出る。そうでなければ新しい領域を切り拓くことはできない。今の日本社会に最も欠けている部分だと思う。

失敗は成功のはじまりである。そう思えるのも、視聴者の皆様の励ましがあってこそ。

ほんとうにありがとうございました。これからもくじけずに挑戦していきます!

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