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統一教会報道への及び腰で購読停止が続出!朝日新聞の優等生幹部がSNSで炎上するのを極度に恐れる理由

朝日新聞が自民党と統一教会の歪んだ関係をまともに報じないことにリベラル層から批判が噴出し、ツイッターでは「#さよなら朝日新聞」のハッシュタグまで登場して購読をやめる動きが広がった。発行部数は400万部の大台を近く切るのではないかという観測も出ている。

私が入社した1994年は約800万部だったから、30年近くで半減することになる。いや、私が特別報道部デスクとして担当した「吉田調書」報道を当時の木村伊量社長(政治部出身)が安倍政権や安倍支持勢力を中心とするネット上の批判に屈服して取り消した2014年当時は約700万部だったから、木村社長の後を受け継いだ渡辺雅隆社長(大阪社会部出身)、現在の中村史郎社長(政治部出身)の2代8年間で一挙に300万部近くを減らした計算だ。

無能な経営者が実権を握り、自己保身と組織防衛から内向きな管理統制を強めると、会社は一気に傾く。このあたりの経緯は新刊『朝日新聞政治部』で克明に描いている。

私が退社してから1年が過ぎたが、権力監視の責務を放棄した朝日新聞の劣化はさらに進んでいるようだ。統一教会問題は朝日新聞にとってトドメとなるかもしれない。

私より8年早く入社し、私より18年早く朝日新聞を見切って独立したジャーナリストの烏賀陽弘道さんが今の朝日新聞の状況を長い連続ツイートで的確に指摘している。

きょうはそれを紹介しよう。

烏賀陽さんは朝日新聞の現役社員と面談し、内部事情を聞いた。そして思わず連続ツイートを投稿したくなったようである。次のように始まる。

朝日新聞の現役社員らと面談。今の編集幹部たちはSNSはじめネットでの炎上や抗議を過敏に恐れ、少しでも物議、異論を醸しそうな記事は「社内検閲担当」みたいな役職者が事前に原稿を目を皿にして調べ上げ、潰してしまうか無難に修正する、との由。

私も同感だ。補足すると「今の編集幹部たち」の上に君臨するのは、社会部出身の角田克常務(編集担当)だ。朝日新聞を創業以来最悪の赤字に転落させた大阪社会部出身の渡辺前社長や、その側近だった東京社会部出身で司法記者歴の長い梅田正行元常務の推しで取締役に引き立てられた。

角田氏も司法記者が長く、編集局長などとして国家プロジェクトである東京五輪を盛り上げる報道を主導した。現在は朝日新聞社員の半数(2000人余)を占める編集局を率い、人事権を振りかざして管理統制を強化しながらリストラの旗を振っている。次期社長の最有力候補だ。

角田氏は権力批判に及び腰で、政権側からの批判に敏感なタイプである。編集局長や局長補佐、各部部長ら「編集幹部」は角田氏が握る人事権に怯え、角田氏の顔色ばかりうかがっている。その結果、今の編集幹部は角田氏のお気に入りで占められているーーと多くの朝日記者が感じている。昨年退社した私もそう感じていた。統一教会問題に切り込まない朝日新聞の編集方針は「角田氏の子飼いたち」によって決められている。

角田氏が牛耳る朝日新聞編集局の現況はサメジマタイムスの以下の記事で詳しく解説したので、ぜひご覧いただきたい。

自民党と統一教会の歪んだ関係を報じない朝日新聞の闇〜追い出し部屋行き人事に怯える朝日記者たち

烏賀陽さんの連続ツイートに戻ろう。

編集幹部たちの「社内検閲」に対して現場の記者たちはどう向き合っているのかに話は続く。

若い世代の記者はそうした上層部がつくる「社風」を日ごろ先読みする習慣がついていて、そもそも議論が起きない、無難な記事しか書こうとしない。すると問題発見能力が育たないので、現実から問題を見つけ、発問する思考ができない記者が大量に出来上がる。

この指摘も私の肌感覚とぴたり一致する。編集幹部が露骨に「この記事はボツだ」と命じるのではない。最初に統一教会の原稿が上がってきた時点で、やんわりと「もう少し脇を固める必要があるんじゃないか」「もう少しウラをとることにしよう」と先送りするのだ。

朝日新聞の優等生として育ったデスクや記者たちは「この原稿は上層部が望んでいない」と忖度し、自主規制を強め、以後は統一教会関連の取材・執筆を避ける。それが朝日新聞の優等生としての立ち居振る舞いであり、それが何よりもトラブルを避けて無難な紙面をつくることを優先する社風をつくりあげていく。

烏賀陽さんのツイートは続く。

現役社員によると、朝日新聞社の編集幹部、経営者たちは、ネットでの炎上や抗議を本気で怖がっているのだそうだ。体面が悪いとかそう言う心理的な理由ではなく、あたかも業務上の失敗であるかのように怖いのだと言う。(中略)

実は、新聞記者をずっとやっていた編集幹部たちは、読者の反応などキャリアの中でほとんど触れたことがない。取材先の官僚や政治家、会社内の同僚や上司の反応がその受け取る「読者の反応」の大半である。(中略)

そこにネット、特にTwitterはじめSNSは読者のリアルな反応を、読者とは無縁の生活を送っていた新聞記者たちにダイレクトに流し始めた。これはぬるま湯育ちの彼らには劇薬だった。あたかもエアコン付きの部屋でずっとぬくぬくと過ごしていたおぼっちゃまをいきなりシベリアにぶち込むようなもの。(中略)

私が朝日新聞社内外で気づいたのは、そうした記者上がりの編集幹部たちのメンタルが弱いこと。東大京大早稲田慶応と言った偏差値上位校から来たガリ勉上がりばかりなので、褒められてばかりの人生である。自分を褒めてくれない、それどころか罵倒する他者の群れをどうして良いのかわからない。(後略)

私も2014年の「吉田調書」問題でデスクを解任されるまで、SNSで発信したことがなく、烏賀陽さんが指摘するような朝日記者のひとりだった。会社からの独立、記者としての自立を目指してツイッターをはじめたときは、襲いかかってくる罵詈雑言にたじろいだものだ。それを恐れ、朝日記者(特に編集幹部)はSNSの世界に足を踏み入れず、ますます世間から遠ざかっていく。そして内向きの会社、内向きの新聞が出来上がっていく。

烏賀陽さんの連続ツイートはさらに続く。関心を持った読者の方はアカウントをのぞいてみてほしい。

統一教会問題を機にジャーナリズム精神を失った朝日新聞の醜悪な実態に世の中の注目が集まったのは良かった。私が『朝日新聞政治部』で告発したことへの理解も進んだように思う。

ひとつ世論に期待したいのは、単に「朝日新聞が悪い」ということにとどまらず、「朝日新聞の誰が悪いのか」という視点でもっと発信してほしいということである。

国政に置き換えればわかりやすいが、単に「政府が悪い」というのでは、権力者たちは直接に批判にさらされない。やはり「岸田首相が悪い」「林外相はごまかしている」「麻生副総裁が横柄だ」というように、責任あるポストについている個人を明示し、責任の所在を明らかにして追及することが相手にはこたえる(「主語」をぼかして責任の所在をあいまいにする新聞記事は本気で権力と戦う気がないと思って間違いない)。

その意味で今の朝日新聞の体たらく全体に責任を負っているのは、政治部出身の中村史郎社長である(私は彼が政治部記者時代から知っている)。だが、中村社長は凡庸な調整型で、社内全体に強力なリーダーシップを発揮するタイプではない(良くも悪くも木村元社長は強権型だった)。社会部出身の渡辺雅隆前社長はそれを見越して政治部出身の中村社長にバトンタッチしたのだ。いわば「傀儡社長」の感が強い。

今の朝日新聞の編集方針を牛耳っているのは、社会部出身の角田克常務(編集担当)である。角田氏は人事権をフル活用して強権を発動するタイプだ。統一教会問題に尻込みする朝日新聞報道の最終責任を負っているのは角田常務であり、報道へのクレームは角田常務を名指しして送るのがもっとも効果的である。

私の新刊『朝日新聞政治部』が社内の出来事を原則実名で克明に描いたのも、責任の所在を明確にするためである。本書には中村社長も角田常務も実名で登場している。実名報道はやはりジャーナリズムの基本中の基本だ。