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東京五輪目前、朝日新聞が購読料を月4400円に値上げへ〜サメタイは無料で頑張ります!

朝日新聞が7月から月額購読料を4037円から4400円へ引き上げる。朝日がスポンサーとして推進する東京オリンピックを目前にした今の時期の値上げは「読者離れ」を防ぐために仕込まれた戦略なのかーー。さっそくこの「値上げ」について、皆さんの意見を聞いてみよう!

 
鮫島
どなたでも投票できます!
朝日新聞の値上げに、あなたは納得できますか?

読売新聞が2019年1月に4037円から4400円へ値上げした後も朝日新聞は購読料を据え置いてきたが、人々がコロナ禍に苦しむなかで追従することになった。値上げの是非はのちほど詳しく考察するが、それ以前の問題として、私はこの「横並び」の価格設定に新聞業界の談合体質を感じずにはいられない。全国紙がそろって東京五輪スポンサーになることと同様、新聞業界の「横並び意識」こそ、新聞凋落の最大の原因ではないかと思う。

消費税を除く朝日新聞本体価格の値上げは1993年12月以来、27年7ヶ月ぶり。私が入社したのが1994年4月だから、私の入社目前に値上げし、私の退社直後に値上げすることになる。

サメタイの連載「新聞記者やめます」で、朝日新聞社員の自宅にはタダで新聞が届くことに加え、2020年度の赤字が440億円を超える経営危機に直面し、会社が「社員の無料購読」廃止を提案したことを紹介したが、それも社内の反発で撤回され、社員はタダで購読を続けることになった。

朝日新聞は「値上げ」をどう説明しているのか。まずは6月10日朝刊一面の告知記事を詳しくみてみよう。

 朝日新聞社は7月1日から、本紙の朝夕刊月ぎめ購読料を、現在の4037円(消費税込み)から4400円(同)に改定いたします。ご負担をお願いするのは誠に心苦しい限りですが、一層みなさまのお役に立てるよう、紙面づくりに全力を尽くします。引き続きのご愛読をお願い申し上げます。

 消費税を除く本体価格の改定は1993年12月以来、27年7カ月ぶりです。

記事冒頭は値上げの告知である。読者に負担増をお願いする「いちばん肝心な部分」だ。そこで「一層みなさまのお役に立てるよう」と述べている。「読者の役に立つ新聞」をめざすのはいいのだが、私としてはこの「いちばん肝心な部分」に「ジャーナリズムの責務を果たすため」という報道機関としての決意が掲げられていないところに、新聞ジャーナリズム凋落の核心をみる思いがした。

続いて、値上げについて読者の理解を求めている。

 当社は、記者が一つひとつ事実を確認しながら、くらしや仕事に役立ち、日々を豊かにする情報をお伝えしようと努めています。隠れた事実を掘り起こす調査報道に力を入れるとともに、週末別刷り「be」や「GLOBE」を発行するなど紙面の拡充にも取り組んでまいりました。質の高い新聞づくりのためにシステムへの投資も続けています。

記者が一つひとつの事実を確認しながら〜というのは当たり前のことである。見逃せないのは「隠れた事実を掘り起こす調査報道に力を入れるとともに」の部分だ。朝日新聞が今年3月末、「隠れた事実を掘り起こす」調査報道に専従して新聞協会賞受賞を重ねた「特別報道部」を廃止したことは連載「新聞記者やめます」で紹介した。「言っていることとやっていることが違う」のは、東京五輪中止の社説を掲げながら東京五輪スポンサーは続けるという二面性とまさに同じだ。

値上げ告知の冒頭に「隠れた事実を掘り起こす調査報道に力を入れる」というくだりを持ってこれなかったのは、やはり後ろめたいのだろう。先月まで朝日新聞社内に身を置いた者として(かつて特別報道部デスクを務めた者として)、近年は会社内に「隠れた事実を掘り起こす」機運をほとんど感じることができなかった。社内はいま「責任回避」「事なかれ」「管理統制」に覆われている。風通しが悪くて活気がなくギスギスした空気のなかで、人事やノルマに怯えて思い詰める社員も少なくない。

続いて、値上げするしかない会社側の事情を説明している。

 購読料を据え置きつつ、良質な紙面を変わらずお届けできるよう、新聞製作の合理化、人件費や経費の節減を進めてきました。しかし、インターネットの普及で新聞事業を取り巻く環境が厳しさを増し、販売・広告収入が減る一方、製作コストは高くなっています。深刻な人手不足などで戸別配達を維持することも難しくなってきました。

 新聞業界全体が同じような状況で、全国の多くの新聞社が購読料をすでに見直しています。当社も長年の経営努力が限界に達し、ご負担をお願いせざるを得ないと判断しました。

ここに掲げられた「インターネットの普及」や「(戸別配達を維持するための)深刻な人手不足」は、何年も前からの課題である。それを放置してきた渡辺雅隆社長ら経営首脳がこの春、大赤字の責任をとるかたちで辞任したのは周知の通りだ。「新聞製作の合理化」や「人件費や経費の節減」が不十分なうえ、新たなビジネスモデルを打ち出せなかったからこそ「新聞購読料の値上げ」が必要になったわけで、そうした「経営の失敗」を率直に認めて「やり直す」決意を伝えなければ、「値上げ」への理解は得られないだろう。決して「政策の失敗」を認めない菅政権と同じである。

さらに、この「7月1日」まで値上げを見送ってきた理由が気になるところだ。7月開幕の東京五輪にあわせて「値上げ」すれば、五輪報道を待ち望む読者が値上げを契機に購読をやめることを避けられると踏んで、かなり以前から「7月1日・値上げ断行」の準備を水面下で進めてきたのではないか。だからこそ「五輪中止」を求める世論が高まり、社説で「五輪中止」を掲げても、五輪スポンサーを降りることができなかったのではないか。

朝日新聞社が東京五輪スポンサーに加わった問題の根はどこまでも深い。

もうひとつ指摘したい。デジタル時代が到来して新聞配達網の維持が限界というなら、紙媒体の値上げと同時にデジタル購読料は大幅に値下げし、できるだけ多くの人にニュースを届けるというジャーナリズムの使命を追求するという発想はなかったのだろうか。「会社の生き残り」ばかりが前面に出て「ジャーナリズムの責務」が後景に退くようでは、新聞社が存在する社会的意義は薄れて当然だろう。

値上げの告知は、以下のように締めくくられている。

ネット上にフェイクニュースが飛び交う今、新聞の役割は増していると考えています。事実を正確に報じるという報道機関の使命を肝に銘じ、新聞を広げるのを楽しみにお待ちいただけるよう、内容とサービスを一層充実させてまいります。ご理解をお願いいたします。

なお、朝刊の1部売りは160円(現行150円)、夕刊の1部売りは60円(現行50円)といたします。

朝日新聞社

私は新聞社が新聞の生き残りを狙って「ネット上にフェイクニュースが飛び交う」と強調することに大きな違和感がある。たしかにネット上にはフェイクニュースが飛び交うが、新聞記事にも「政府発表の垂れ流し」が溢れている。政府が虚偽答弁や公文書改竄を繰り返すなかで「大本営発表」を垂れ流す報道姿勢は一向に改善しないのだ。個人がネットで発信するフェイクニュースよりも、大手新聞社が垂れ流す「大本営発表」のほうが、はるかに罪が大きいのではないか。

さらに、ネットにはいまや新聞以上に、速く、深く、幅広い情報が、しかも無料で溢れている。検索が上手にできて自分で情報の真偽を見極めることができる人にとっては、もはや新聞記事に頼らなくてもネットで十分だ。そうした時代認識を持たずに「フェイクニュース」を理由に「新聞の役割は増している」と言っても、説得力があるだろうか。

そして、最後の「締め」の「事実を正確に報じるという報道機関の使命を肝に銘じ」という部分にこそ、朝日新聞凋落の根幹を見る思いである。朝日の読者が求めているのは「事実を正確に報じる」ことだけなのか。政治が腐敗し、社会の公正さが失われるなかで「客観中立」を装った「両論併記」の無難な記事を量産する報道姿勢に、読者は苛立っているのではないか。もっと社会に責任を負う当事者として、新聞が主体的に権力を監視・追及し、主体的に問題提起することを読者は望んでいるのではないのか。国家権力の主張とそれに反対する人々の声を「正確に伝える」だけなら、情報量も発信力も圧倒的に強い国家権力に加担するのと同じである。

興味深いことに「マスコミは事実を正確に報じるだけでいい」という主張は、政権与党やネトウヨと重なるのである。私がツイッターなどで「新聞の責務は権力監視だ」と主張すると、決まってネトウヨから「新聞は事実を正確に伝えればいい」という反応が返ってくる。「新聞の責務」について、政府やネトウヨと、「リベラル」を標榜する朝日新聞の主張が重なるのは皮肉としかいいようがない。「リベラル」の仮面をかぶりながらその内実は「国家権力」に寄り添っていることに「朝日離れ」が加速する大きな理由があると私は思う。

さいごに、この「値上げ告知」を「朝日新聞社」の名で社告として掲載したことにも異議を申し立てたい。この手法は古い。誰が書いたのか顔が見えない「社説」と同じだ。これでは読者に真剣さが伝わらない。ここは社長が自ら「値上げのお願い」を執筆し、自らの名前で読者に直接語りかける必要があったのではないか。

以上、古巣の朝日新聞の値上げについて、私見を述べさせていただいた。ここに冒頭の投票をいまいちど掲載する。ぜひ参加していただきたい。この記事を読んで考えが変わった人は「再投票」も可能だ。

朝日新聞の値上げに、あなたは納得できますか?

二者択一の投票で満足できない方は、政治倶楽部に会員登録し、以下のコメント欄から投稿していただければ幸いです。

 
鮫島
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