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週刊文春がフジテレビ疑惑の第一報を訂正〜それでもフジテレビが免責されるわけではない!疑惑の中心は中居氏の性加害や編成局幹部A氏の関与から、フジの組織的なもみ消しや女子アナを接待要員として扱う人権軽視の企業風土へ移っている!

フジテレビの女性アナに対する中居正広さんの性加害問題に端を発したフジ疑惑をめぐり、週刊文春が第一報の重要部分を訂正したことに批判が強まっている。たしかに文春の第一報の詰めが甘く、訂正の経緯にも疑問が残る。けれども、フジテレビがこれで免責されるわけではない。文春訂正問題を整理しておこう。

週刊文春は昨年末の第一報で、フジの女性社員X子さんが2023年6月、番組出演の決定権を握るフジの編成局幹部A氏に誘われて中居氏との飲み会に参加したが、A氏をのぞく全員がドタキャンし、ふたりだけの飲み会となって性被害にあったと報じた。これに対し、フジは「社員の関与は一切ない」とする全面否定するコメントを公式サイトで表明し、真っ向から対立していた。

週刊文春の年明けの続報で、フジは港浩一社長が性被害の報告を受けながら中居氏への聞き取り調査もせず、中居氏が出演する番組を何事もなかったように継続していた「もみ消し疑惑」が浮上。さらには港社長が自らの誕生会に女子アナを参加させるなど女子アナを接待要員として扱ってきたことも発覚。中居氏の性加害疑惑はA氏の女子アナ上納接待疑惑へ、さらにはフジテレビによる組織的なもみ消し疑惑、女子アナ接待の常態化問題への拡大したのである。

世論の批判の高まりを受けてフジテレビは1月17日に港社長の記者会見を行ったが、記者クラブ加盟社以外を締め出し、映像の撮影も禁止する「閉鎖的会見」に世論の怒りが沸騰。大株主やスポンサーが強く反発し、CM引き上げの動きが相次いだ。

フジテレビは1月27日に記者会見をやり直し、この場で港社長が辞任を表明。この記者会見は映像の撮影を許可し、フリーにも広く開放して質問が途切れるまで行った結果、10時間半に及ぶ前代未聞の会見になった。

週刊文春が訂正記事を公表したのはこの翌日だったのである。その内容は「X子さんを問題の飲み会に誘ったのはA氏ではなく中居氏自身だった」というものだった。一方で、前月に中居氏の自宅で行われたバーベキューパーティーにA氏がX子さんを引き連れて参加したのは事実であり、問題の飲み会はその延長にあるとして、「A氏が関与したのは間違いない」とも主張した。

これに対し、フジテレビは強く反発し、法的手段を含めて対応を検討すると表明。フジvs文春のたたかいは泥沼化する様相もみせている。

文春は年明けの第二報の前に間違いに気づき、第二報からは「X子さんは中居氏に誘われた」という前提で記事をつくったとしている。けれども明確な訂正記事を出したわけではなかった。その後、橋下徹氏に間違いを指摘されたことを受けて訂正に踏み切ったという。当初は「しれっと訂正した」ことにまずは批判が集まった。

さらに訂正記事の発表がフジテレビの二回目の記者会見の翌日だったことが波紋を広げた。記者会見の前に訂正していれば、「X子さんはA氏に誘われた」という前提で質問が飛び交うことが避けられたからだ。記者会見前に訂正記事を出せば、フジテレビへの批判がやわらぎ、逆に文春に向かうことを恐れたのではないかとの指摘も相次いだ。

文春が好調に展開してきたフジ疑惑追及キャンペーンがつまずいたのは間違いない。

一方で、文春の失敗がフジを免責させるわけではない。A氏が問題の飲み会に直接関与していなかったとしても、それに先立って中居氏の自宅でのバーベキューに被害女性を引き連れて参加し、中居氏が後日に被害女性を自宅へ直接誘い出すお膳立てをしたという外形的事実は間違いないからだ。

そのような経緯を伏せたまま、フジが昨年末に「社員の関与は一切ない」という全面否定コメントを発したのは、疑惑の火消しを最優先する不誠実な対応というほかなく、フジへの信頼喪失に拍車をかけた。その点を棚上げして文春に対する法的手段の検討を強調する姿勢には首を傾げざるを得ない。

しかもフジ疑惑の核心はいまや「A氏の関与」から「港社長以下による組織的な性被害もみ消し」や「女子アナを接待要員として扱う人権軽視の企業風土」に移っている。A氏の関与の有無に事態を矮小化させることは許されない。

文春の訂正の過程に問題はあるにせよ、それによってフジが免責されるわけではない。近年、疑惑を追及される側が、追及する側の落ち度を探し出して反撃し、どっちもどっちの泥仕合に持ち込んで批判をかわすケースが相次いでいる。このような企業防衛策には厳しい目を向けていかなければならない。

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