ジャニーズ問題で日本社会が大揺れの一週間だった。
私はBBC取材班が来日してジャニーズ事務所の性加害疑惑を取材する前から、BBC社会部でディレクターを務めたインマン恵さんより内々に相談を受け、取材先などを紹介するなどして協力してきた。
BBC取材班は当初から、ジャニーズ事務所の性加害問題そのものに加えて、その疑惑が週刊誌に報じられ、裁判沙汰になっても、大手メディアがまったく報じてこなかったことを問題視し、日本マスコミ界の実像に迫るため私に取材を依頼してきたのである。最初は鮫島タイムスのお問い合わせ欄にいきなりインマンさんからメールが届いたのだった。取材班は来日後も私の自宅を訪れ、私はモビーン・アザー記者のインタビューも受けた。
その後、取材の進捗状況を折に触れて聞いてきたが、インマンさんは「日本のマスコミ界は閉鎖的で、取材拒否が相次いでいる」と愚痴っていた。朝日新聞社長やNHK幹部らマスコミ要人にも取材を申し入れたが、いずれも断られたととこぼしていた。
1年半にわたる取材が結実し、多くの苦難を突破して、マスコミ界とジャニーズの閉鎖体質に風穴を開けた仕事は見事だった。ジャーナリスト仲間として敬意を表したい。
一方で、BBCの力を借りなければ、日本のマスコミ界・芸能界を救う病理を暴けなかった日本のジャーナリズムの脆弱さを痛感させられた。
私はBBCとの間で報道までは取材経緯を明かさないという約束をしていたが、そのなかでディレクターのインマンさんは私のインタビューに応じてくれ、取材を通じた日本社会や日本マスコミの印象を語ってもらった。以下のユーチューブ動画にまとめているのでご覧いただきたい。
今後の焦点は、①ジャニーズが東山紀之新社長のもとで抑圧体質・閉鎖体質から脱却できるのか、②マスコミが性加害問題に蓋をしてきた過去を自己検証するのかーーである。いずれも見通しは悲観的だ。
東山新社長については記者会見で自らも過去に性加害行為をしたのではないかという追及が続いた。最初は否定しつつも、追及されるうちに答弁が二転三転し、最後は「したかもしれないし、していないかもしれない」と半ば認めるような発言まで飛び出した。
仮に東山新社長が過去に性加害を行なっていたとすれば、性加害問題を反省して出直す新体制を率いる資格はない。
ジャニーズは同族経営からの脱却を掲げているものの、東山新社長は創業家と最も密接だったタレントであるとの指摘が相次いでいる。この点からも新社長として相応しいのか疑義が強まることは避けられない。創業家の傀儡になる可能性は極めて高い。
当面は東山新体制が確立するのか、世論の反発で早々に崩壊するのかが焦点となろう。
一方、マスコミ各社は、調査報告書で指摘された「マスメディアの沈黙」について反省を口にしているものの、なぜこれまで性加害疑惑に蓋をしてきたのか、自ら社内調査して検証する姿勢はまったくみせていない。
ジャニーズと密接な関係を築いてドラマやCMにスターを起用し、大きな利益を上げて社内で出世してきたマスコミ幹部は数知れない。彼らが「過去の検証」を阻止しているのは想像に難くない。
マスコミは過去を検証し、疑惑に蓋をしてきた関係者を処分すべきである。口先だけの謝罪では視聴者や読者の信頼は取り戻せない。
ジャニーズ問題はマスコミの問題である。疑惑に蓋をしてきた関係者の処分なしに、この問題は終わらない。
ユーチューブ動画でもジャニーズ問題を解説しました。ぜひご覧ください。