週刊文春や女性セブンの報道で昨年末に発覚した元SMAP・中居正広さんの性加害疑惑は、フジテレビによる女子アナを使った性接待疑惑、さらにはフジ幹部によるもみ消し疑惑へと発展し、拡大の一途をたどっている。
当初は模様眺だったテレビ各社も年明け、中居さんが出演する番組の放送中止を一斉に決断した。
当事者のフジテレビは中居さんがMCを務める「だれかTOなかい」について「状況を総合的に検討した結果、1月12日の放送から当面の間休止とする判断に至りました」とのコメントを発表した。
日本テレビは収録を終えていた「ザ!世界仰天ニュース 4時間SP」を中居さんの出演シーンをすべてカットして放送した。TBSは「中居正弘の金曜日のスマイルたちへ 新春SP」を差し替え、「THE MC3」は放送中止に。テレビ朝日も「中居正広の土曜日な会」を差し替えた。
世論やスポンサーの中居批判が強まるなかで番組放送は困難と判断したのだろう。
一方で、テレビ各社は中居さんやフジテレビの疑惑そのものをニュースとしては報道していない(TBS系「THE TIME」は1月9日に中居さんの出演番組の休止が相次いでいることは報じた。1月9日夜に中居さんがコメントを発表したことをうけて、テレビ各社がようやく報道をはじめる可能性もあるが、疑惑の中身には詳しく触れないだろう)。
番組の放送を中止しなければならないほどの大事件なのに、ニュースとして報じないのは、視聴者を馬鹿にしているとしかいいようがない。これでは報道機関を名乗る資格はない。
ジャニーズ事務所の性加害事件を長年にわたって見て見ぬふりをし、BBCが報道して世界的な問題になってはじめて報道し、世論から激しく批判され反省したはずなのに、また同じ過ちを繰り返している。
ジャニーズ問題についても心底反省したわけではなく、世論やスポンサーの反発を受け、その場しのぎで謝罪しただけだったのだろう。
マスコミ業界に長く身を置いた私の経験からいえば、テレビ各社が中居・フジ疑惑を報じないのは以下の理由である。
①各局とも女子アナを使う接待文化がある
テレビ各社が政治家や経営者(スポンサー)、芸能人、スポーツ選手らの接待に女子アナを使っているのは業界では広く知られている。性接待かどうかはともかく、公共の電波で知名度を上げた女子アナを自社の利益のための接待に利用しているのは同じ構図だ。
フジテレビを批判すれば、各社にもブーメランが跳ね返ってくるかもしれない。それを警戒して報道を控えている点は否めない。
②各局とも中居さんを自社の番組に起用してきた身内意識がある
テレビ東京をのぞく民放各社は中居さんをレギュラー番組に起用してきた。中居さんと親密なプロデューサーや過去に中居さんの番組を手がけた幹部も少なくない。彼らの身内意識が疑惑報道をためらわせているのは間違いない。
さらに自社でも同様の問題がないとは限らない。やはり疑惑を報じてブーメランが跳ね返ってくることを恐れているのだろう。
③性加害そのものを問題視しているのではなく、世論やスポンサーの批判を回避したいだけ
テレビ各社が中居番組の中止を決断したのは、とりあえず今の世論やスポンサーの反発を抑えるためだ。
疑惑を報道しなくても中居さんの番組さえ放送しなければ、自社に批判が向いてこないと考えているのだろう。
④マスコミ業界の横並び意識
テレビ各社の報道現場には横並び意識も強い。他社が報じれば自分たちも報道する。他社が報じなければ自分たちも報道しない。自社だけがリスクをとってでも報道するという気骨がそもそも少ない。
まさに記者クラブ体質が浸透しているのだ。
視聴者が知りたいことではなく、自分たちが伝えたいことだけ報じれないよい。そのような意識が浸透していることが、テレビがユーチューブなどSNSに敗北している最大の要因だろう。
テレビ局は公共の電波を優先的に割り当てられ、記者クラブに所属していない一般人は立ち入れないエリアの映像も多数所持し、その著作権も主張して稼いでいる。単なる民間企業ではなく、放送事業者としての特権を享受し、大稼ぎしているのだ。
それなのに報道すべきことを報道せず、社員は高給と潤沢な経費で贅沢に暮らし、しかも上から目線で威張ってきた。
これではネット上で「フジテレビを国会に招致して追及せよ」「放送事業者の免許を取り消せ」との意見が噴出するのも無理はない。
政界やマスコミ界ではネット規制の議論ばかりが先行しているが、まずはテレビなどオールドメディアの特権を見直すべき時ではないか。
中居・フジ疑惑はマスコミ業界のありようそのものを変質させる可能性がある。