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立憲民主党は議席を増やしても政権交代が実現しなければ「敗北」である〜マスコミは衆院選結果を正しく判定して報道しよう!

衆院選は「政権をかけた戦い」である。それが二大政党政治だ。

今回は、与党のリーダーである自民党の岸田文雄総裁と、野党のリーダーである立憲民主党の枝野幸男代表のどちらを「内閣総理大臣」に選ぶかという選挙である。

与党が過半数をとれば「岸田政権」が続く。野党が過半数を取れば「枝野政権」が誕生する。

衆院選の大原則は「過半数を取ったほうが勝ち」「過半数を取れなかったほうが負け」だ。

マスコミはそのように報道しない。「自民党は何議席減らすか」「立憲民主党は何議席増やすか」という視点で報じる。

自民党の公示前勢力(276議席)が立憲民主党(110議席)よりはるかに大きいからだろう。

けれども、公示前より増えたか減ったかを中心に報道されると、「自民党は議席を減らしたから負け」「立憲民主党は議席を増やしたから勝ち」と勘違いしてしまう。

これは間違いだ。報道のミスリードである。

公明党、共産党、維新、国民民主党、社民党、れいわ新選組などの少数政党は「議席を増やしたら勝ち」と認定してもいいだろう。しかし、与党第一党(自民党)と野党第一党(立憲民主党)は別だ。政権をかけて戦うのだから、何はともあれ政権を取ったほうが「勝ち」だ。

岸田首相が「自公与党で過半数」が勝敗ラインと言っているのは正しい。

自公与党で過半数を維持しても、自民党が議席を大きく減らせば、岸田首相の求心力は落ちる。自民党内の非主流派が勢力を盛り返す可能性がある。その意味で、岸田首相は「自民党内の反岸田勢力との戦い」には負けたといえるのかもしれない。

それでも自公与党で過半数を維持すれば「岸田首相退陣へ」とはならない。「自公政権を守った」という意味ではやはり「野党には勝った」のだ。

枝野代表は本来、「野党で過半数」を勝敗ラインに掲げなければおかしい。与野党どちらかあいまいな候補もいるので、少なくとも「与党過半数割れ」を勝敗ラインに掲げるべきだ。

ところが、枝野代表はそう言わない。勝敗ラインをあいまいにしている。「野党が過半数を取らなくても、立憲民主党が議席を増やしたら勝ち」と総括して、衆院選後も立憲民主党代表の座にとどまるためだ。

立憲民主党が「議席は伸ばしたものの、政権交代は実現できなかった」という選挙結果をどう総括するかは立憲民主党自身の判断である。しかし、マスコミが国民の視点で衆院選の勝敗を報道する場合、やはり「過半数を取れなければ負け」と判定すべきだ。

野党第一党が「過半数を取れなくても議席を伸ばせば勝ち」と主張するのを許したら、岸田首相も枝野代表も衆院選に「勝利」したことになってしまう。いったい「本当の勝者」はどっちなのか。有権者はわけがわからなくなる。「政権をかけた戦い」に二人とも勝利するという、意味不明の結果で終わってしまうのだ。

これはおかしい。「政権をかけた戦い」の勝者はひとりであるはず。それは衆院選後に「内閣総理大臣」の座に就く人だ。「どっちも勝ち」という選挙総括は、政治の緊張感を奪う。

マスコミは二大政党政治の大原則を明確にして報道しなければいけない。野党第一党はどんなに議席を伸ばしても政権交代が実現しなければ敗北だ。野党第一党の党首に対して不退転の覚悟を迫ってこそ、野党は全国各地の小選挙区の接戦を制して競り勝つことができるのだ。

マスコミは衆院選のたびに「野党は議席増」「野党は躍進」などと選挙結果を報じてきた。私は朝日新聞で長く政治記者をして、そのおかしさをずっと主張してきた。

けれども、野党第一党の勝敗を「過半数」ではなく「議席の増減」で判断する社内の空気はいっこうに改善されていない。このような報道姿勢が野党を甘やかし、「万年野党」を作り出している。

読売新聞も同じである。10月20日夜に配信された「読売衆院選序盤情勢」の記事をみてみよう。記事全体を総括する「前文」は以下のとおりである。

読売新聞社は31日投開票の衆院選について、19、20の両日、全国の有権者を対象に世論調査を行い、全国の総支局などの取材を加味して序盤の情勢を探った。自民党は議席を減らし、単独で衆院定数の過半数(233)を維持できるかどうかの攻防となっている。立憲民主党は公示前の110議席から着実に上積みし、日本維新の会も大阪を中心に躍進する公算が大きい。

自民党は「議席を減らし、単独で過半数(233)を維持できるかどうかの攻防」としている。自民党は公明党とあわせて過半数を維持すれば政権を維持できる。その場合でも、単独過半数を割れば岸田首相の自民党内の求心力は落ち、非主流派が盛り返すだろう。「単独過半数の維持」に焦点をあてた報道は「与野党の対決」よりも「自民党内の権力闘争」に軸足を置いた選挙報道だ。

立憲民主党については「公示前の110議席から着実に上積みし」と報じている。最初から政権交代は起きないとみて「議席の増減」で選挙結果を評価しようとしているのだ。

本文では立憲民主党についてさらに詳しく記している。以下の通りだ。

立民は小選挙区の候補214人のうち、優位に立つのは30人程度で、そのほとんどが共産、国民民主、れいわ新選組、社民4党と候補者を一本化した選挙区だった。60人近くが議席獲得へ接戦を演じている。比例選では40議席台に乗せる情勢で、公示前の110議席から20議席ほど伸ばす可能性がある。

立憲民主党は「公示前の110議席から20議席ほど伸ばす可能性がある」という。衆院の過半数233議席におよそ100議席も足りない130議席程度にとどまるのに、「議席を着実に上積み」と「評価」しているのだ。これも「政権をかけた与野党の対決」に軸足を置いた選挙報道とは言えない。

読売報道は立憲民主党に「優しい」というより、最初から「政権交代なんて無理だよ」と見くびっているといえるのではないか。

マスコミが「政権交代の可否」ではなく「議席の増減」で衆院選結果を評価するから、枝野氏は「議席を上積みしたから勝利だ」と自己正当化して、政権交代が実現しなくても代表の座に居座るのである。

これでは野党第一党のリーダーの政治責任はあいまいとなり、政治の緊張感は失われるばかりだ。枝野氏は退路を断って、政権交代を勝ち取らなければならない。リーダーが不退転の決意を示してこそ、道は開ける。それでこそ、いま全国各地で接戦を繰り広げている小選挙区で競り勝つことができるのだ。

一方、日経新聞は序盤情勢を「与党、過半数を視野」というタイトルで伝えた。 「与党の自民、公明両党あわせて衆院定数465のうち過半数の233議席以上を視野に入れる」としている。

衆院選は与野党の「過半数」をめぐる戦いであり、今のところ与党が過半数を制して政権を維持する可能性が高いという情勢分析に力点を置いた選挙報道である。二大政党政治における衆院選を読売よりも正しく位置づけた報道のあり方といえるだろう。

マスコミが「過半数」を勝敗ラインに設定せず、「議席の増減」で選挙結果を評価する限り、野党はいつまでも強くならない。野党が政権交代に届かない範囲で「勝利」し、「弱い野党党首」が続投してくれるのが、政権維持を最優先目的とする自民党にとっては最も都合が良いのである。

二大政党政治の衆院選において、マスコミは、野党のリーダーである枝野代表に「政権交代が実現しなければ辞任するのか」と覚悟を問わなければならない。選挙報道でも「与野党のどちらが過半数を取るのか」を勝敗ラインとして明確に設定しなければならない。

そして、立憲民主党が議席を伸ばしながらも過半数に達しなかった場合、開票結果を伝える紙面では、間違っても「立憲民主党は議席増」とか「立憲民主党は躍進」というタイトルで報じてはいけない。過半数に届かなければ「野党敗北」と判定するのが二大政党政治のあるべき姿だ。

いまいちど確認しよう。衆院選は与野党による「政権をかけた戦い」である。

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