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公明党「参院選で相互推薦見送り」に二階・菅・古賀氏の影〜自公連立が揺らぎ、その先に政界再編はあるのか

自民党と公明党が今夏の参院選で候補者の相互推薦を見送る方向が強まっている。

これまで、公明が「1人区」で自民候補を推薦し、自民が「複数区」のうち埼玉、神奈川、愛知、兵庫、福岡の5選挙区で公明候補を推薦する協定を党本部同士で締結してきた。

今回は大阪を中心に躍進している日本維新の会が2議席をうかがう兵庫(改選数3)で自民が公明候補の推薦を渋ったことを皮切りに対立が勃発。公明支持団体の創価学会が今夏の参院選は「人物本位」で支援を決めるという発表に踏み切り、公明の山口那津男代表も相互推薦見送りを示唆した。

自民党の遠藤利明選挙対策委員長は兵庫など5県連を説得して公明との相互推薦をまとめる方向で調整を続けているが、公明はむしろ態度を硬化させており、『自公、参院選で相互推薦見送りで調整 自民の手続き遅れに公明反発』(毎日新聞)との報道も出始めた。

自民党内には当初、「所詮は公明党の駆け引き」という見方が広がっていた。1人区で自民候補推薦の見送りをほのめかせ、兵庫で公明候補の推薦を受け入れさせるという「条件闘争」に過ぎず、最後は兵庫で譲歩すれば折り合えるという楽観論に覆われていたのである。

しかし、公明党は態度をどんどん硬化させた。創価学会が「人物本位」を打ち出した1月下旬ごろになってようやく自民党内でも危機感が強まってきた。

公明は連立政権の一角に定着し、国土交通相をはじめ重要ポストを占め、公共事業をはじめとする国家利権を享受する側にすっかり溶け込んだようにみえる。一方で、平和を重んじる公明支持層には安倍政権が安保法制を推進したあたりから自民への不満が募ってきた。自公連立発足から20年を超え、当初ほど公明の立場が尊重されていないのも事実である。

今回の「相互推薦見送り」は公明側の不満が一挙に噴き出したもので、自公連立は大きな転換期を迎えているといえるかもしれない。

自公連立の軋みをどう読み解けばよいのか。きょうはこの背景を深掘りしてみる。

安倍政権下で積もりに積もった公明側の不満に対処し、自公連立の信頼関係を維持してきたのは、二階俊博幹事長と菅義偉官房長官だった。二階氏は公明の漆原良夫・元国対委員長ら党重鎮と、菅氏は創価学会副会長として政界対策を担った佐藤浩氏と強力なパイプがあり、選挙から政策まで幅広く自公連立の調整役を務めてきた。

最初に揺らぎ始めたのは、公明・創価学会側の権力構造だ。公明は世代交代が進み、二階氏の盟友である漆原氏は2017年に政界を引退。創価学会で自民との窓口を務めてきた佐藤氏は菅政権下で突如失脚し、政界に衝撃が広がった。創価学会内部の主導権争いが混迷を深めていることが自公連立の軋みの背景にある。

一方、自民側では菅政権退陣・岸田政権発足の過程で、二階氏と菅氏が失脚。安倍晋三、麻生太郎の両首相経験者が二大キングメーカーとして君臨することになった。幹事長には安倍・麻生両氏と親密な茂木敏充氏が就任し、今夏の参院選を指揮采配することになったのである。

しかし、世襲政治家の安倍・麻生両氏や東大→ハーバード大の茂木氏は公明・創価学会とのパイプは強くない。岸田文雄首相も幹事長の経験がなく、公明とは疎遠だ。そもそも連立政権内の根回し・調整という「汚れ仕事」は二階氏や菅氏のほか、麻生氏の長年の政敵である古賀誠元幹事長ら秘書上がりの「たたき上げ」がこなしてきたのが自民党の実像である。

岸田政権下で二階、菅両氏が失脚し、公明との調整が不在になったことが自公連立の軋みの直接的要因といえるだろう。

ここから先は政局を読むプロ筋としての分析である。これは単なる「調整役の不在」というだけの話なのだろうか。私はそうは思わない。

私は幹事長や国対委員長を歴任した古賀氏の番記者を務め、古賀氏が自民党内で劣勢に立った時、主導権回復を狙って連立相手の公明党に水面下で働きかけ、自民党の外から党執行部を揺さぶる「政局の仕掛け方」を取材してきた。いざという時に公明党の力を借りるために、日頃の選挙調整や国会対策では公明党の顔を立てて貸しを作り、信頼関係を醸成しておくのだ。

古賀氏は二階氏とは自自公連立でともに国対委員長を務めて以来の盟友関係にあり、二人で連携して公明党を巻き込んで共同戦線を張ることもしばしばだった。古賀氏や二階氏の政治手法は、数の力で強行する安倍政治とはかなり様相を異にし、連立政権の力学をテコにして政局を動かすのである。菅氏はかつて宏池会に所属し、古賀氏の政治手法を間近で学んできた。

その立場からいえば、今回の公明党による「相互推薦見送り」の背景に、岸田政権下で非主流派に転じた二階氏や菅氏、さらには麻生氏が後見人として君臨する岸田政権に不満を抱く古賀氏の意向を感じずにはいられない。安倍・麻生・茂木ラインが牛耳る岸田政権が今夏の参院選で圧勝すれば、二階氏や菅氏、古賀氏の影響力はますます低下するだろう。それを防ぐためには今夏の参院選で岸田自民党が圧勝することは避けねばならず、そのために効果的なのは自公の選挙協力に楔を打ち込むことである。

つまり、岸田政権が二階氏、菅氏、古賀氏を干しあげたことが、公明党が「相互推薦見送り」に動いた大きな要因であるというのが私の見立てだ。

公明党にとっても、自分たちへの配慮がみられない安倍・麻生・茂木ラインの自民党支配が続くよりも、自分たちを大切にしてくれる二階氏や菅氏が復権する方が望ましい。だから自民党が兵庫で公明推薦を決めるくらいではすっきりした手打ちはしないだろう。最大の目的は、二階氏や菅氏の復権なのである。参院選に向けて茂木幹事長を徹底的に揺さぶるに違いない。

勘の良い読者はここで維新を思い起こすだろう。菅政権では完全なる「自公補完勢力」と化していた維新が岸田政権になって政権批判を強めているのはなぜだろう、と。

岸田政権が規制緩和に代表される新自由主義を修正する「新しい資本主義」を掲げていることを維新が気に食わないのは事実である。昨年の衆院選で躍進し、立憲民主党が凋落するなかで野党第一党に取って代わる現実味が増し、今夏の参院選に向けて自民党批判を強めるのが得策であるという政局判断もあるだろう。

そのうえで、もうひとつ見逃せない要素は、自民党と維新の調整窓口を一手に背負ってきた菅氏が失脚したことだ。

維新が誕生する前、橋下徹氏を大阪府知事選に担ぎ出した2008年から、当時は自民党の選対副委員長だった菅氏と、自民党府議だった松井一郎・維新代表は盟友関係にある。菅氏は自らの派閥がなく、自民党内での権力基盤は決して強くはない。だが、松井氏と連携し、維新の台頭をつねに側面支援し、自公政権の補完勢力として活用し、ときには自民党の外から維新を使って党執行部を揺さぶり、そのうえで維新との調整役を買って出ることで、自らの自民党内の影響力を増してきたのだ。

この「維新の使い方」は二階氏や古賀氏の「公明の使い方」とそっくりだ。維新にとって「菅氏の復権」は優先順位の高い政治目標であり、そのためにも参院選に向けて茂木幹事長ら自民党の現執行部との対決姿勢を強めていくだろう。

以上、いかにも永田町臭い話を展開してしまったが、この「コップの中の争い」をもうすこし俯瞰してみてみよう。往々にして単なる「仲間割れ」や「内輪揉め」が政治を大きく動かす発火点になるのが政治の面白いところなのだ。

強力な団結力を誇る創価学会に支えられてきた公明党の組織力も近年は大きく陰っている。創価学会内で主導権争いが激化しているのもその反映であろう。かつてのように「上意下達」だけでは支持層は動かなくなりつつある。この組織にも多様化の波は押し寄せている。

そもそも動機が茂木幹事長をはじめとする自民党執行部への「揺さぶり」だとしても、いったん「相互推薦」を見送れば、自民政治への違和感を封印しながら長年自公連立に従ってきた公明支持層の不満が溢れ出し、指導者たちが抑えきれなくなる可能性は十分にある。創価学会が改めて掲げた「人物本位」の大原則に照らして「自民候補はダメだ!」と正々堂々と発信できるようになるのは、大きな地殻変動を引き起こすのではないか。

組織の統治にたけた創価学会や公明党の指導者層がそれを考慮していないはずはない。もしかすると彼らのなかにも「これを機に支持層が自民離れの声をあげるのなら、それを抑え込むのではなく、その流れに乗って自公連立を見直す機会にしてもよい」という考えが芽生えつつあるのではないかと私はみている。

さらに気になるのは、東京都の小池百合子知事と国民民主党の接近である。この背景に国民民主党を支える連合が動いているのは間違いない。連合幹部はいまなお小池氏に大きな期待を抱いているのだ。

連合が共産党を含む野党共闘に激しく反発し、立憲民主党と露骨に距離を置き始めたのも、非自民・反共産の旧新進党の枠組み〜現代的には「小池+連合+公明」〜の復活を目論んでいるといえるだろう(連合にとってネックとなるのは新自由主義を掲げる維新と折り合いが悪いことである)。

小池氏は「都民ファースト」に加え、連合と公明の支援を頼みに都政を運営してきた。この「旧自民+連合+公明」の枠組みは旧新進党そのものである。小池氏は旧新進党時代から親しい二階氏を後ろ盾に自民党との連携を探ってきた。だが、二階氏の失脚で自民党復帰は難しい情勢にある。それに代わる活路として国民民主党や連合への接近を強めているのだが、それだけでは自民党に対抗できない。小池氏にとっても公明党が必要なのだ。

二階氏にとっては「小池+連合+公明」の旧新進党の枠組み復活を水面下で支援することで安倍・麻生・茂木ラインが牛耳る自民党に圧力をかければ、自らの自民党内での復権の足掛かりとすることができる。「自民党の外からの力」を利用して「自民党内の権力闘争」を優位に進めようというわけだ。

こうしてみると、公明党には今後、自公政権にとどまる選択肢に加え、二階氏や連合との連携を通じて旧新進党の枠組みに立ち戻るという選択肢が現実的に浮上してくる。それが安倍政権下で積もりに積もった不満とあいまって、一挙に「自民離れ」が加速する可能性も否定できない。

とはいえ、自公連立の20余年の積み重ねは重い。この間に公明支持層もすっかり「与党」の味を占めている。旧新進党の枠組みが自民党を倒して政権を奪うリアリズムが高まればともかく、「単なる野党」に転落する覚悟で自民党と手を切るかというと疑問が残る。結局は連合を含む野党陣営が「政権交代のリアリズム」をどこまで高めることができるかどうかで、公明党の今後の出方は大きくかわってくるだろう。

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