2023年もいよいよ大詰め。岸田内閣の支持率は乱高下し、政界は大揺れの1年でした。
サメタイ恒例の「今年読まれた記事ベスト10」で振り返りましょう。
前編では10位から6位まで発表します。
第10位 2月12日
志位委員長「朝日新聞に指図されるいわれはない」に続く田村智子氏の毎日新聞への「攻撃」〜次世代ホープの山添拓氏は踏みとどまれるか?
志位委員長「朝日新聞に指図されるいわれはない」に続く田村智子氏の毎日新聞への「攻撃」〜次世代ホープの山添拓氏は踏みとどまれるか?
共産党が執行部を批判する党員を除名したことは「党内統治のあり方と党員のと言論の自由」という古くて新しいテーマを浮かび上がらせた。
党員の除名を批判する朝日新聞の社説に対し、志位和夫委員長が「朝日に指図されるいわれはない」と猛然と反論したのは印象的な場面だった。
次世代のポープとされる田村智子氏が志位氏の姿勢を全面的に支持し、朝日新聞に続いて除名の判断を批判する毎日新聞を激しく批判したことに対する違和感を示したのが、この記事である。
田村氏は近く志位氏から委員長を受け継ぐとの観測も広がっている。
共産党の党勢低迷は、その画一性から無党派層への浸透が進んでいないことに大きな要因があろう。次世代のホープである田村氏が志位氏の見解を否定することまでしなくとも、やや距離を置いて柔軟な姿勢を見せるか、少なくとも沈黙を貫いたとしたら、「共産党の変化の兆し」を予感することができたのに…と私はがっかりしたのだった。
この様子では、仮に田村氏がトップに立ったところで、共産党の内向き姿勢は変わらないのではないか?
ピンチはチャンス。党員除名問題をめぐる混乱は、共産党のイメージ刷新の好機だったはずである。
志位氏氏から田村氏や山添拓氏への世代交代が近くあるならば、刷新感を演出するためにも、改めて「党内の言論の自由」について新見解を打ち出したらどうだろうか。
2024年に予想される解散総選挙で、共産党が勢いを取り戻すきっかけになるかもしれない。
第9位 1月10日
今井るる氏の立憲民主党→自民党への鞍替えに私は驚かなかった。26歳の彼女は立憲の「ゆ党」化、二大政党政治の崩壊を可視化したに過ぎない
今井るる氏の立憲民主党→自民党への鞍替えに私は驚かなかった。26歳の彼女は立憲の「ゆ党」化、二大政党政治の崩壊を可視化したに過ぎない
立憲民主党が2021年衆院選の岐阜5区に25歳の全国最年少候補として擁立した今井瑠々氏(落選)が離党し、自民党の推薦を得て岐阜県議選に出馬する意向を表明したのは、立憲を揺るがす大事件だった。
だが、私は今井氏の政治行動に驚かなかった。今井氏の世代にとって、自民党も立憲民主党も大差はなく、当選できるのならどちらから出馬しても変わりはないと感じている現実を、むしろ正面から受け止めるべきだというのが、この記事である。
今井氏の政治モラルの欠如を攻めるより先に、自民党との違いを失った(少なくとも自民党との違いを失っているように多くの有権者や支持者が感じている)立憲民主党のあり方を、見つめ直す機会としなければならないという主張である。
この一年の野党陣営を振り返っても、立憲と維新は手を握ったり、対立したり、その関係は目まぐるしく揺れ動いだ。維新と国民民主党は岸田内閣の補正予算案に賛成したかと思えば、自民党の裏金事件が勃発すると内閣不信任案には賛成し、与野党の境目が極めて見えにくくなった一年だった。
今井氏の振る舞いは、野党の迷走を象徴的に映し出す場面だったといえるだろう。
第8位 4月10日
維新と立憲、明暗分かれる〜統一地方選前半、高市・小西バッシングのなかで維新は笑い、立憲は沈んだ
維新と立憲、明暗分かれる〜統一地方選前半、高市・小西バッシングのなかで維新は笑い、立憲は沈んだ
立憲民主党の小西洋之参院議員が、安倍政権が放送法の解釈変更を推し進めたことを示す内部文書を入手して追及したのは、通常国会前半の最大の山場だった。
当時総務大臣だった高市早苗氏が「捏造文書」と断言し、捏造でなければ閣僚も議員も辞職する考えを表明。この後、岸田内閣はこの内部文書の存在を認めたことで、高市氏は窮地に立った。
ところが、小西氏が衆院憲法審査会の毎週開催を「サルがやること」と発言した別の問題で世論の批判を浴び、流れは急変。立憲執行部は小西氏を守りきれず、役職から更迭したことで、「高市vs小西」の論争はうやむやに終わり、高市氏が逃げ切る格好となった。
立憲の支持率が低迷し、立憲執行部の弱腰姿勢ばかりが目立つ結末は、立憲支持層を落胆させ、立憲は統一地方選で苦戦。立憲から野党第一党を奪う維新の躍進をもたらす結果となった。
この問題を通じて、低迷していた岸田内閣の支持率は徐々に盛り返し、この後の広島サミットでさらに跳ね上がって早期解散論が吹き荒れるに至ったのである。立憲の国会戦略の不甲斐なさが岸田政権の息を吹き返らせたのだった。
自民党は今、裏金事件で瀕死の状態である。しかし2024年の通常国会で野党が再び追及の甘さをみせれば、自民党が勢いを取り戻すかもしれない。立憲は同じ過ちを繰り返してはならない。
第7位 6月18日
小沢一郎や小川淳也が「立憲単独」に反旗を翻し「泉おろし」の狼煙!「野党一本化」を訴えるが…維新へ合流なら希望の党の二の舞に
小沢一郎や小川淳也が「立憲単独」に反旗を翻し「泉おろし」の狼煙!「野党一本化」を訴えるが…維新へ合流なら希望の党の二の舞に
立憲民主党の泉健太執行部が日本維新の会と国会共闘に乗り出したものの決裂する一方、共産党やれいわ新選組との野党共闘にも慎重な姿勢を示して「立憲単独」路線を志向していたのに対し、小沢一郎氏や小川淳也氏ら非主流派が次の衆院選での「野党一本化」を訴える有志の会を立ち上げた。
立憲の大半の衆院議員は野党一本化しない限り次の選挙で勝ち残れない。その死活的状況を踏まえ、百戦錬磨の小沢氏が、岡田克也幹事長や安住淳国対委員長ら反小沢色が強い立憲執行部を倒す党内政局を仕掛けたとして注目された。
泉代表は「泉おろし」が広がることを恐れて「野党一本化」をめざす姿勢を示しつつ、自民との連携を探る維新や国民と、野党共闘にこだわる共産と、独自路線を強めるれいわを「一本化」するのは難しく、その後も右往左往しているのが現状だ。
自民党安倍派の裏金事件で自民批判が高まるなか、現時点では立憲、維新、国民が政治改革で連携することを目指す動きもあるが、野党全体として衆院選にどう向かうのかという根本的な戦略は描けていない。
一方、小沢氏や小川氏も党内支持が広がっているとはいいがたく、立憲はこう着状態である。
第6位 5月26日
れいわ新選組・櫛渕万里議員の懲罰動議を野党第一党として主導した立憲民主党に、もはや「立憲」を名乗る資格はない
れいわ新選組・櫛渕万里議員の懲罰動議を野党第一党として主導した立憲民主党に、もはや「立憲」を名乗る資格はない
れいわ新選組の櫛渕万里衆院議員への懲罰動機が、自公与党に加え、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の野党3党も賛成し、衆院議席の95%以上の圧倒的多数の賛成によって可決されたことは、国会が少数意見を弾圧する大政翼賛体制へ向かっていることを危惧させる重大な場面だった。
櫛渕氏は鈴木俊一財務相に対する不信任決議案の採決の際に本会議場の壇上で「与党も野党も茶番!」と書かれた紙を掲げただけである。これまで国会で何度も見てきた光景だった。
これに対し、自公与党が野党への牽制で懲罰動機を提案することはこれまでもあったが、それに野党第一党が便乗し、可決してしまったことには驚いた。
野党第一党は全野党を代表し、国会の議事進行について与党と折衝する立場にある。他の野党と主張が違う場合でも、国会運営について野党各党の意見に耳を傾け、野党内の利害を調整して、与党と交渉するのが務めだ。その分、野党第一党には国会のポストも多く割り当てられ、国会運営上のメリットもたくさんある。
ところが、立憲はれいわの主張を黙殺し、自公与党とともに懲罰動機をあっさり可決してしまったのだから、野党第一党としての責任放棄としかいいようがない。「与党も野党も茶番!」と批判され、感情的に懲罰動議に賛成したとしか思えない稚拙な対応だった。
マスコミがこの懲罰動機が持つ民主主義の危機をほとんど報じなかったのも、非常に気になった。
少数意見を抑圧する風潮は危うい。主張の違いはあっても、さまざまな意見を尊重することに民主主義の基本があることを改めて確認したい。
2023年サメタイ読まれた記事の10位〜6位は、すべて野党関連の記事でした。自民党政治への不信が高まるなか、野党への潜在的な期待感は高まっていることがうかがえます。
けれども、野党はこの追い風を生かしきれておらず、無党派層を引き寄せられていません。
それに多くの有権者は苛立ち、野党低迷の原因を知りたがっているものの、それを深く分析するマスコミの記事は多くありません。
サメタイの野党分析記事が拡散している背景には、そうした事情があるとみられます。
明日は5位〜1位を発表します。お楽しみに!