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立憲民主党が参院選に向けて抱えた時限爆弾「政治資金規正法違反の疑い」〜CLP疑惑は終わらない(後編)

立憲民主党が政治資金1500万円をリベラル系ネットメディア「Choose Life Project」(CLP)に水面化で提供していた問題は、泉健太代表や西村智奈美幹事長が「調査終了」を宣言して幕引きを図っても、今年夏の参院選前に再び火を噴くことだろう。政治資金規正法違反の疑いを払拭できないからである。これは立憲民主党が抱え込んだ危険な時限爆弾だ。

まずはサメタイが実施した投票アンケートの結果をみてみよう。立憲民主党支持層を含めて大多数が泉代表と西村幹事長の説明に「納得できない」と考えていることがわかる。

立憲民主党を応援していますか?「CLP問題の説明は終了した」に納得できますか?

立憲民主党を擁護する立場からサメタイへ届いた意見で目立ったのは「CLPの理念に共感して資金提供したのだから問題はない」というものだった。この「理念に共感して提供した」というのは、幹事長として資金提供を決めた福山哲郎氏が説明した内容である。

これを受けて「理不尽を許さない」をモットーとする西村幹事長が党として経緯を調査した。西村幹事長は福山氏の経緯説明をそのまま受け入れたうえで、①特定メディアに資金提供したことを伏せていた、②特定メディアへの資金提供そのものについて議論がある、③特定メディアへの資金提供について党内で検討・議論した形跡がないーーことを理由に、資金提供自体は「不適切だった」と認定した。一方で「違法性はない」と結論づけ、福山氏を処分しない考えを表明した。泉代表も西村幹事長の調査発表を受けて「党としての説明は終了した」と宣言したのである。

さて、福山氏の経緯説明が仮に事実だとして、ほんとうに「違法性はない」のか。立憲民主党はこの問題に蓋をしたまま参院選で政権与党と対決できるのか。

CLP疑惑を「メディアと政治の癒着」の視点から解説した『ジャーナリズムは「客観中立」の幻想を捨て、立ち位置を鮮明にして「データと論理」で競い合え!〜CLP疑惑は終わらない(前編)』に続いて、本日の後編では「政治資金規正法違反の疑い」の視点から深掘りし、立憲民主党のとるべき道を考察する。

まずは福山氏の主張を確認しよう。福山氏はこの問題で記者会見を開いていない。コメントを発表しただけである。そのコメントを再掲する。

・Choose Life Projectという、フェイクニュースに対抗するメディアの理念に共感したため、広告代理店と制作会社を通じて番組制作を支援した。

・自立できるまでの期間だけ番組制作を支援することとし、その後自立でき支援の必要がなくなったとして先方から申し出を受け、支援は終了した。

・なお、理念に共感して、自立までの間の番組制作一般を支援したもので、番組内容などについて関与したものでない。

福山氏の説明に沿って深掘りしていこう。ここで重要なのは、立憲民主党はCLPの「理念に共感して、自立までの間の番組制作一般を支援した」という部分である。

立憲民主党は具体的に広報番組やPR動画を制作する事業を発注し、その成果物を受け取って対価を支払ったのではない。CLPという新しいメディアが自立できるまで支援するという趣旨で「番組制作一般」を制作する費用を提供したというのである。

福山氏の言葉通りに理解すれば、これは立憲民主党からCLPに対する「寄付」である。広報番組やPR動画などの成果物を求めずに「番組制作一般」について自由に使える資金を提供したのだから、一切の対価を求めず提供した資金ーーつまり寄付ーーと考えるのが自然だ。

だとするならば、政治資金収支報告書には「寄付」として1500万円を記載し、寄付の相手として「CLP」を明記しなければならない。政治資金規正法は政治資金を透明化することで政治資金の使途に対する疑念を防ぐことを目的としている。事実に反する記載をすれば「虚偽記載」として政治資金規正法違反に問われるのである。

ところが、立憲民主党はCLPへの理念に共感して提供した1500万円について、政治資金収支報告書に「動画制作費」や「企画広報費」の名目で、大手広告代理店の博報堂に支払ったと記載しているのだ。

なぜ「寄付」ではなく「動画制作費」や「企画広報費」なのか。

なぜ提供先が「CLP」ではなく「博報堂」なのか。

西村幹事長は「寄付にはあたらないという指摘を弁護士から受けた」と説明したが、寄付にはあたらないと判断した具体的根拠は示さなかった。博報堂に支払ったことについては「一般的に広告代理店にまとめて発注し、その先に振り分けるやり方をしている」と説明したが、「CLPの理念に共感」して支援することにした「番組制作一般」を博報堂に「まとめて発注」するとはどういうことなのか、まったく意味不明である。さらに博報堂から先の資金の流れ(博報堂→制作会社→CLP)は「民民契約の内容なので公表は控える」として説明を避けた。

説得力がまるでない。これでは「説明拒否」である。西村幹事長が忌み嫌う「理不尽」そのものだ。マネーロンダリングとの疑念を招いて当然だろう。

仮に収支報告書の記載通り、立憲民主党が博報堂を経由して「動画製作費」や「企画広報費」を提供したのなら、CLPは「立憲民主党から博報堂を経由して発注を受け報道番組を制作した」ことになる。つまり、CLPの報道番組は立憲民主党に「成果物」として「納品」されなければおかしい。報道番組の「納品」を求めずに「番組制作一般」を支援するために資金を提供したのなら、それは紛れもなく「寄付」である。

ここで政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いが浮上してくる。「CLPへの寄付」を記載すべきところ、「博報堂への動画制作費・企画広報費」と虚偽の記載をし、政治資金の流れを隠したという疑惑だ。

福山氏はInFact編集長の立岩陽一郎氏の取材に「統括を行う広告代理店を通じて制作会社に制作依頼を行うことは商慣習であり、かつ本件は取引実態がありますので、政治資金収支報告書への記載は正確なものです」と述べたという。西村幹事長の説明はこのような福山氏の主張を丸のみしたものであろう。

しかし、福山氏の主張はまったくナンセンスだ。なぜ「CLPの理念に共感した資金提供」の「統括」を広告代理店(博報堂)が行っているのか。福山氏は「取引実態がある」と主張しているが、「取引」というからには資金提供の引き換えとして立憲民主党が受け取る対価が存在しなければならない。立憲民主党の「制作依頼」に対してCLPから「報道番組」という成果物は「納品」されたのか。

こんな説明が通用するのなら、すべての「寄付」は博報堂を経由した「発注」に置き換えることが可能となり、ありとあらゆる「寄付」の相手を隠すことができてしまう。これでは政治資金の流れを透明化する政治資金規正法の意味がない。

立憲民主党→博報堂→制作会社→CLPという政治資金の流れはブラックボックスになっている。政治資金規正法によって担保されるべき「政治資金の透明化」が損なわれている。この資金提供の過程で政治資金が「中抜き」され、政治家の裏金としてプールされているかもしれない。そうした疑念を招かないために政治資金収支報告書に正しく記載することが法律で義務付けられているのである。

立憲民主党がCLPへの資金提供を「寄付」ではなく「番組制作の発注」と主張するのなら、その発注によってCLPが制作した報道番組や制作費用などを具体的に明らかにし、その発注額が適正であったことを立証しない限り、「CLPの理念に共感して提供した政治資金」の一部が「中抜き」されたり、政治家の裏金としてプールされた疑惑を払拭することはできない。「商習慣」というあいまいな言葉で政治資金の流れをうやむやにするのなら、電通を隠れ蓑にしている自民党と同じである。

ここで確認しておきたいことがある。民主政治における「説明責任」(アカウンタビリティー)の大原則についてだ。

刑事事件の「疑わしきは罰せず」(推定無罪)の原則は有名だ。これをもとに「桜を見る会」をめぐる安倍氏の疑惑が浮上した際も「エビデンス(証拠)を示せ」という声が安倍支持層から噴出した。だが、これは民主政治の「説明責任」という大原則からしておかしいのだ。

民主的プロセス(選挙)によって選ばれた為政者は、具体的な疑惑を突きつけられた際、身の潔白を自ら立証しない限り「推定有罪」と認定され、政治責任を免れないというのが「説明責任」の大原則である。刑事事件として「有罪」は立証されないとしても、為政者としての「政治責任」という意味では「疑惑を払拭できない限り有罪」と認定され、「辞職」や「処分」のかたちで政治責任を明確化しなければならないというのが、世界の民主政治の大原則なのだ。

安倍氏の「桜を見る会」疑惑もまさに政治資金規正法違反が指摘された事案だった。これに対し、安倍氏は領収書の開示などに応じず、国会でも明確な説明を避け続け、首相の座に居座ったのである。野党はそれを激しく批判した。内閣を監視する憲法上の責務を果たす当然の行為である。

CLP疑惑で立憲民主党が直面しているのはこの「説明責任」である。具体的な疑惑がいままさに指摘されているのだ。CLPへの資金提供は「寄付」ではないのか。それを政治資金収支報告書に記載しないのは政治資金規正法違反ではないのか。そして収支報告書に「事実に反した記載」をしたのは、立憲民主党→博報堂→制作会社→CLPの政治資金の流れのなかで「やましいこと」ーー中抜きによる裏金のプールーーがあるからではないのか。そのような疑惑を払拭し、身の潔白を立証する責任は立憲民主党にあり、その「説明責任」を放棄するのなら、「推定有罪」として断罪されるのである。

この疑惑は尾を引く。今後、国会審議やメディアを通じて、政権与党に攻撃される。政治資金規正法違反の疑いでいつ捜査機関が動いても不思議ではない。立憲民主党は疑惑追及が跳ね返ってくる「ブーメラン」に怯え、政権与党の不正や疑惑を追及するのに及び腰になるだろう。今夏の参院選にむけて大きな時限爆弾を背負い込んだのだ。立憲民主党は身動きがとれなくなるのではないか。そんなことで参院選を闘えるのか。

泉代表や西村幹事長が疑惑に蓋をしているのなら、まわりが動くべきだ。いちばんの責任は、立憲民主党をたったひとりで旗揚げし、最側近の福山氏を幹事長に起用した枝野幸男前代表にあるだろう。枝野氏は党代表としてCLPへの資金提供をどこまで把握していたのか。それにとどまらず、党運営や党資金の使途について福山氏に丸投げしていたのか。立憲民主党の旗揚げ以降4年続いた「枝野・福山独裁体制」下のガバナンスの実態について、枝野氏には明確に説明する責任がある。

そしてもうひとり「疑惑の蓋」を開けるべき立場にあるのは、小川淳也政調会長である。「正直で誠実」を極限まで追求する小川氏の政治家像は、立憲民主党支持層の大きな期待を集めている。今こそ泉代表に徹底調査を迫るべきだ。ここで泉代表や西村幹事長の「疑惑に蓋」に加担すれば、小川氏への期待は一挙に萎むのではないか。党執行部に入るということは、自らの身の回りを綺麗にするだけではすまない。党刷新の先頭に立つべきである。

立憲民主党は瀬戸際に立っている。政党支持率でも第三極の日本維新の会に追い抜かれている。CLP疑惑を引きずったまま参院選に突入すれば惨敗し、野党第一党から転落する可能性は十分にある。仮に参院選直前に「時限爆弾」が爆発すれば、野党は戦線崩壊だろう。その前に先手を打ってCLP疑惑を解明し、きっぱりとけじめをつけ、反転攻勢に打って出るしかない。

以上、CLP疑惑について前編・後編にわけて解説した。YouTubeでも解説したのでご覧いただきたい。

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