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こちらアイスランド(213)ゴールデンサークルからの寄り道可能、グルメも期待できる高級温泉施設ロイガルアゥスを早速レポート〜小倉悠加

2025年10月15日、アイスランドにまたひとつ高級温泉施設がオープンした。名前はロイガラゥス・ラグーン(Laugarás Lagoon)。この温泉施設がある街の名前がロイガラゥスだ。温泉面積千平方メートル。

このラグーンの名前をどうカタカナ表記すべきかには少し迷いがある。言葉の切れ目は「ロイガル」と「アゥス」だからだ。ロイガルアゥスと表記しても構わないと思う。けれど、口語として発声すると結局「ロイガラゥス」になるので、まぁこれでいいかな、と。

日本人には意味のない音の連続になるので、いっそのことブルーラグーンのように、英語名があると便利なのだが。

ちなみに、世界に名高いブルーラグーンは英語名で、アイスランド語の正式名称はブラアゥア・ロゥニッヅ(Bláa Lónið)という。知ってるとアイスランド通っぽい物事かも。

この新たにオープンしたこの温泉施設へ、オープン4日後の10月19日(日)に訪れた。私は特に新し物好きではなく、オペレーションが安定した頃にでも行こうかと思っていたら、彼が速攻で予約を入れていた。

アイスランドの場合、幸か不幸か最初はよくても時間が経つと質が落ちる率が高い。こういった温泉施設に関してはそのような印象を受けた場所はないけれど、レストランは分からない。なのでとりあえず覗いておきたいという心理が働いたようだ。

温泉施設のレストランは、それ自体も目玉と捉えて運営しているところもあれば、小腹を満たせればいいんでしょというところもある。もちろんブルーラグーンのレストランは別格で、カフェ、ブラッスリー、レストランと3店あるうちの、一店はミシュランの星付きだ。お値段もそれなり。

このロイガラゥスのレストランは、ヘイマエイ島の自営レストランでまず頭角を現し、続いてレイキャビク市内に出店を出して全て成功に導いている話題のシェフ、ギスリ・マットが関わっている。

言わずもがな私自身もこのシェフのファンで、彼のレストランへ行きたいがために幾度ヘイマエイ等まで足を運んだやら。

彼のレストランのことは、以前ヘイマエイ島の訪問記を書いた時に言及している。

ここまで書けば感のいい読者は気づくと思うが、オープン直後に訪れたのは温泉施設の興味もあるけれど、レストランを覗いておきたいということも大きい。

このロイガラゥスも他の温泉施設と同じように、いくつか入湯ランク(?)がある。

1)入浴のみ

2)タオル、温泉内ワンドリンク付き

3)タオル、温泉内ワンドリンク、レストランでの2コース昼食付き

日本円とアイスランド・クローナの交換レートが日本円側には不利なので、1)で8千円強、2)で1万2千円程度、3)は2万円。恐ろしや・・・・。

せっかく行くのだから、そこらへんは気にせずに楽しんできたけど、改めて日本円に計算してギョっとしている。

まだオープンしたてということもあり、駐車場は舗装されていない更地のまま。上手に作り過ぎて(?)どこが温泉への入り口なのか最初は見つけられなかった。駐車場から入り口までそれほどの距離はないんだけど。

オープン初の週末だけあり、いい感じの時間帯は売り切れていたらしい。私たちの前に受付にいたカップルは17時まで空きがないと言われていた。もちろん我々はいい感じの時間帯に予約を入れていたので問題なし。

受付でタオルとリストバンドを受け取った。アイスランドのこういった温泉施設はどこもICチップを埋め込んだリストバンドで館内の支払いや出入りが管理されている。ここもこのリストバンドがロッカーの鍵であり、ドリンクの支払い等が記録された。

ロッカーはすべて同じ大きさで、真ん中に化粧台がまとめて置かれていた。アイスランドの温泉施設に入る前の作法は全身きちんとシャワーを浴びることだ。公共プールではそのことがデカデカと図入りで表示されているけれど、こういった場所では何も書かれていない。

シャワー室はミエミエのオープンな場所もあったけれど、真ん中にいくつか個室のシャワーがあった。個室シャワー多めだと見た。

着替えが終わると、男女同じ場所から温泉へと繰り出す。

室内に温泉への階段があり、入り口は開けっぱなしではなく自動ドアになっていた。とはいえ、下半身はすでにお湯の中なので、自動ドアは上半身の部分のみで、湯とドアの間には数センチの隙間があるだけだった。

目の前にクヴィータ川が流れており、1車線の吊り橋がいい雰囲気。交通量は多くないし、通好みの落ち着いたロケーションだと言える。

ワンドリンクがついてきたので、私は迷わずアルコール入りをオーダー。彼は運転をする人なので、アルコール抜きのものに。どちらも近隣で摘まれたハーブで作ったものだという。たぶんこのドリンク・クリエーションにもギスリが関わっていると思う。爽やかで甘すぎず、レイキャビクで売ってくれたら時々飲みに行きたいと思わせてくれる美味しさだった。

ちなみに、アルコール入りドリンク一杯で3千円以上。

アイスランドにはこういった温泉施設がいくつかある。ブルーラグーンを筆頭に、レイキャビクから数時間でリーチできる範囲内ではクヴァムスヴィーク、フォンタナ、クロイマ、スカイラグーン、シークレット・ラグーンがあり、東北部にジオシー、ヴーク、ネイチャー・バス、フォーレスト・バスで網羅しているはずだ。私自身この全てに浸かってきた。

そんな中でもこの温泉はピカイチ居心地がいい!一番ゆっくりと長湯できると見た。

見た目それほど大きくはないが、温泉が二段構えで広がっているからだ。以下の2枚の写真は下段の温泉になる。

なぜ居心地がいいのかを考えて見た。

たぶん、温泉が平面でだだっ広いのではなく、二段構えになっているので視界に入ってくる人の数が思ったよりも分散されてゆったりして見えること。

テーブルの周囲には必ず腰をかけられるスペースがあり、この腰掛けスペースの目印がお湯の下に隠れるか隠れないかのギリギリのところにあり、背もたれがあるのにそれが目につきにくいことにより、温泉部分が広々と見える。

あちこちにちょこっと座れる場所が本当に多い!ドリンクを持ちながらあっちに座り、こっちに座り、ドリンクをおける場所も思いのほか多く、とっても便利。小島になっている場所は湯がかからないので、スマホを持って入っても、そこに置いておけば大丈夫。

ドリンクが思いの他おいしかったこともあり(個人的な味覚に合っていたという意味にすぎないが)、私たちはあちこちに座りながら美味しいドリンクをチビチビと飲み、「ここ最高!」となった。

もちろんこれは天候に恵まれ、青空こそなかったけれど、雨は降らなかったし、風もなかった。そういった気象条件が揃ってこその居心地の良さであることも言及しておきたい。

この施設の面白いところは、滝をくぐれることだろう。上階から下階へ行く際、濡れることなく階段を利用することもできるが、このように滝の下をくぐり抜けて行くこともできる。滝の内側には座る場所まであった(写真はないけど)。

これが結構楽しくて、キャーキャーいいながらくぐり抜けていく人が多い(私も!)。打たせ湯のような感じにも使えるし、とてもいいアイデアだと思う。

ちなみに滝の上の部分で寝っ転がることもできる(って、これだけ書いてもわんないよね・・・)。

他に、クワイエット・ゾーンと書かれた雑踏と離れた場所もあった。

この温泉に関してものすごく私たちが印象に強く残ったのが、「自然」へのこだわりだった。

というのも、レイキャビクからほど近い場所に(我が家から徒歩40分!)スカイラグーンという温泉施設がある。

悪くはないし、行けば楽しいけれど、ものすごく気になったのがハリボテだった。何がハリボテかといえば岩石なのだ。スカイラグーンはアイスランドのあちこちに見られる柱状節理の玄武岩を思わせるものを多用している。けれど、あれってもうどう見てもハリボテで、それに気づいてしまってからは、どうも心落ち着かずになってしまった。

ディズニーランドも、ユニバーサル・スタジオも、どこだって作りものなんだからいいじゃないか。温泉施設も所詮はエンタメ。そう言ってしまえばそれまでだ。けれど私はそれに違和感を覚えてしまった。

アイスランドのレンタカーは地元の会社で

新しくできたこの温泉はそうではない。石は本物だった。柱状節理の石も本物。本物に似せて色を塗った人工物ではなく、本物の岩石だ。見た目の落ち着きが違う。堂々としている。いい!

サウナもあった。別口に陸の上にもホットポットもあった。

でもこの温泉は、上下に別れた大きな温泉の場所が一番いい。温水は36〜39度との記載があり、上階の方が暖かかった。

楽しくて心地よくて2時間近く温泉に浸かっていた。オープンしたてだけあり、聞こえてくるのは大半がアイスランド語だった。きっとほどなく、ゴールデン・サークル・ツアーの最後に組み込まれてくるのではと思う。

ちなみに、この施設の至近距離に公共バスのバスストップもあったから、バスを使えば自力で来られそうな気配だった。

さてさて、我々は遅いランチもブッキングしてあった。16時だ。17時からはディナー予約になるため、超遅めのランチというか、実際は早い夕食とした。

ここまでですでに長い文章なので、レストランに関してはサクっと。さすがギスリが考えただけあり、地産地消を楽しく美味しく作ってあった。手間を削る意図もありスープ(二種)はセルフサービスなのもよかった。スープは手前に具があり、自分で適当に具を入れて、その上からスープを注ぐ方式。

パンにつけるハーブペーストとスイートパプリカのスプレッドもとてもフレッシュでよかった。

ベーシックな味でカジュアルな雰囲気ながら料理は本格的だ。

料理が本格的であるための功罪もある。アイスランド人の熟年夫婦がメニューを見せてほしいと入ってきた。メニューを眺めた後、奥様らしき人が「食べられるものがない」と男性に告げた。

なる・・・。たぶん彼らはハンバーガーやピザが欲しかったのだろう。我々夫婦は真逆で、ハンバーガーとピザだけは勘弁してほしい派なのだ。平くはグルメ。

グルメであればちょっといい感じのものを出してくれている。けれど、「普通」のものが食べたい人には辛いメニューであるとも言えるのかもしれない。

スープセット(二種類のスープとパン)で5千円近い。私たちがいただいたラム肉は単品で7千円以上だ。金額的にも結構な額になる。

食べきれなかったので肉は持ち帰り、翌日の夕食になったので、二食分だと思えば悪くなかったけれど、たぶん普通の人はそうはいかないかと。

このレストランのメニューを気に入ることができるかでも、温泉施設の評価は分かれそうな気がしないでもない。

ケチケチ生活を送る我々としては結構な散財だったけど、楽しかったし美味しかったのでよしとした。本来ならニコイチとか、割引を待ちたいところだった。けれど、ここはゴールデン・サークルのツアー・ルートにも近いため、たぶんそんな甘い考えではいつ行けるやら分からない。思い切ってオープン直後に行って正解だったと思ってる。このコラムのネタにもなったしね(笑)。

ちなみに、この温泉を組み込んだゴールデン・サークル・ツアーがすでに売り出されている。これとかこれ。はや!

小倉悠加(おぐらゆうか)
東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド在住。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。高校生の時から音楽業界に身を置き、音楽サイト制作を縁に2003年からアイスランドに関わる。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、社会の自由な空気に魅了され、子育て後に拠点を移す。休日は夫との秘境ドライブが楽しみ。愛車はジムニー。趣味は音楽(ピアノ)、食べ歩き、編み物。