政治を斬る!

女帝・小池百合子に挑む立憲民主党・蓮舫の都知事選出馬会見を読み解く〜学歴詐称疑惑の追及は深入りせず、「裏金自民との一体化」と「政治的変節」を標的とした正攻法

立憲民主党の蓮舫参院議員が5月27日、東京都知事選への出馬を表明した。学歴詐称疑惑が再燃している小池百合子知事が29日に都議会で出馬表明すると報じられたことを受け、先手を打った格好だ。

7月7日投開票の都知事選は、東京だけではなく日本の政治の行方を左右する大物女性政治家同士の大一番となる。

蓮舫氏の出馬会見は戦略を綿密に練り上げられたものだった。私なりに対小池戦略の三本柱を整理してみよう。

①小池は自民党の裏金政治の延命に手を貸している!

蓮舫氏は4月の衆院3補選(東京15区、長崎3区、島根1区)で自民が全敗し、立憲が全勝したこと、さらには5月26日投開票の静岡県知事選でも自民候補が敗れ、立憲候補が勝利したことに触れ、「国民の声ははっきりしている。裏金議員、自民党政治の延命に手を貸す小池都政をリセットしてほしい。その先頭に立つのが私の使命だ」と宣言した。

さらには小池知事が自民党の裏金議員筆頭格である萩生田光一都連会長と親しいことを踏まえ、萩生田氏の地元・八王子市長選で自民候補を応援したことを強調。小池知事と裏金自民が一体化していると印象付けた。

これは上手な選挙戦略といっていい。まさに世論は裏金自民党にNO!を突きつけている。その裏金自民党と小池知事を紐づける戦略は、ど真ん中の正攻法だろう。

立憲は衆院3補選と静岡県知事選に4連勝し、解散総選挙に向けて勢いづいている。しかし7月の都知事選で自公与党の支援を受ける小池知事に敗れれば、裏金事件以降の勢いが止まりかねない。

都知事選は立憲にとっても絶対に負けられない選挙だ。蓮舫氏を擁立したのも、小池知事に対抗するには知名度の高い蓮舫氏しかなかったということだ。

立憲は次の総選挙を見据えて蓮舫カードを切ったといえるだろう。まさに総力戦となりそうだ。

②小池知事の変節に照準

小池知事は最初に都知事選に出馬した8年前は自民党の支援を受けず、逆に自民党都議会を「伏魔殿」と批判して当選した。蓮舫氏は当時の小池知事を「眩しくてカッコよかった」と持ち上げた。

ところがその後、小池知事は自民党との連携を強めていく。介護離職や残業、電柱、満員電車などをなくす「7つのゼロ」公約はまったく実現せず、小池都政は都民の暮らしから離れ、東京五輪や都心再開発などの巨大利権を自民党政権と連携して進めていった。坂本龍一さんが大量の樹木を伐採したとして激しく批判した明治神宮外苑の再開発はその典型だ。

蓮舫氏は小池知事が当初の輝きを失い、この8年間の実績はあるのかと厳しく批判。自民党の接近してきたその歩みを「発信力、存在感、選挙の強さ、どれをとっても圧巻している人。ただ、変わり身の速さに私はついていけない」と皮肉った。

③公金を使った事前選挙活動を批判!

蓮舫氏は知事選の5ヶ月ほど前から小池知事の露出度が高まっていると指摘。その例として、東京防災マップを8年ぶりに都内全戸770万個に配布し、そのひとつひとつに小池知事の顔写真入りのメッセージが添えてあると迫り、事実上の事前選挙活動だと批判した。

この防災マップの予算は8年前より11億円増えているという。蓮舫氏は行政改革を政治家としてのライフワークとしてきたとし、「こうした予算を見直して格差で光が当たらず困っている人々に政策を届けたい」と強調した。

以上の3本柱は非常によく練られた追及だと私は思った。自民党と対立して都知事になりながら、東京五輪や都心再開発を通じて徐々に自民党に歩み寄り、最後は萩生田氏ら裏金議員とも親密になり、当初掲げた暮らし重視の政策は見る影もないことがよくわかる会見だった。

これに対し、文春砲が指摘した学歴詐称疑惑については深入りを避けた。文春の記事などは読んで信憑性が高いと感じているとしながらも、あくまでも小池知事が説明責任を果たす問題だとして、蓮舫氏が積極的に追及する姿勢は示さなかった。

これも選挙戦略しては巧妙だ。

学歴詐称疑惑を深追いすると、「裏金自民党と小池知事の一体化」や「小池知事の変節」という本質的な政治イシューがぼけてしまう。学歴詐称疑惑の追及はジャーナリズムに委ね、政治家同士の論戦では、小池知事の「裏金自民との一体化」と「政治的変節」を突くのは、正攻法といえるだろう。

蓮舫氏が小池知事を打ち負かせば、政権交代へ大きな弾みがつくのは間違いない。

一方、小池知事に敗れれば自民党が息を吹き返す可能性もある。

7月の都知事選は東京だけではなく日本の政治の行方を左右する一大決戦となりそうだ。

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